AlphaGo(デミス・ハサビス) vs イ・セドル「神の一手」が示すAIと人間の可能性
ドキュメンタリー映画『AlphaGo』を見て、AIと人間の可能性について考えたことを書き留めておきます。
映画の概要
映画『AlphaGo』は、Google DeepMindが開発した人工知能「AlphaGo」と、世界的な囲碁棋士イ・セドル9段との歴史的な対局を描いたドキュメンタリー作品です。
物語はAlphaGoのAI開発過程から始まり、ヨーロッパ囲碁チャンピオンのファン・フイとの初の公式戦、そしてイ・セドル9段との5番勝負までを追います。「人間 vs AI」の対決を通じて、技術の進歩、人間の適応力、そして両者の協調の可能性が浮き彫りになります。開発者たちの熱意、棋士たちの葛藤、そして予想外の展開が織りなす物語は、AIと人間の関係性について深い洞察を促し、私たちの未来を考えさせる作品となっています。
主な登場人物紹介
イ・セドル(Lee Sedol):
韓国のプロ囲碁棋士。プロ9段の最高位を持ち、世界タイトルを18回獲得したトップクラスの棋士。2016年3月にAlphaGoと対局し、1勝4敗で敗れたが、世界が注目する場でAlphaGoに唯一勝利した人物として知られている。2019年11月にプロ引退を発表。「たとえ自分がナンバーワンになっても、倒すことのできない存在がある」ことを理由に挙げた。
ファン・フイ(Fan Hui):
中国出身のフランスのプロ囲碁棋士(プロ2段)。2013~2015年の3度、ヨーロッパ囲碁チャンピオンに輝いた人物。2015年にAlphaGoと対局し、5戦全敗。AIがハンディキャップなしでプロ棋士に勝利した最初の例となった。DeepMindでAlphaGoのトレーナーとして開発にも協力。
デミス・ハサビス(Demis Hassabis):
DeepMindの共同創設者兼CEOで、AlphaGoの開発を主導。幼少期からチェスの天才として知られる。ゲーム開発者としてのキャリアを経て、ケンブリッジ大学でコンピューターサイエンスを学ぶ(2年飛び級で卒業)。その後、ゲーム会社を設立し一定の成功を収める。2005年に脳神経科学、人工知能研究の取り組みを始め、2010年にDeepMind Technologiesを共同設立。2014年1月、Googleに約6億2500万ドルで買収される。生命科学に多大な貢献をもたらすタンパク質構造予測AI「AlphaFold」を開発し、2024年にノーベル化学賞を受賞。
アジャ・ファン(Aja Huang):
DeepMindの研究者で、AlphaGoの共同開発者の一人。台湾の大学で学位を取得し、2012年にDeepMindに加入。囲碁アマ6段の腕前を持ち、AlphaGoのアルゴリズムを記述した論文の共著者でもある。
デイビッド・シルバー(David Silver):
DeepMindの主任研究員で、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの教授。AlphaGoプロジェクトのリーダーとして知られている。強化学習の分野で重要な研究を行い、AlphaGo、AlphaZero、AlphaStarなどの画期的なAIプロジェクトに携わる。
AIに対する懐疑
これまで多くの囲碁棋士やAI研究者は、コンピューターが囲碁で人間のトッププレイヤーに勝つことは不可能だと考えていました。この考えは、囲碁が直感と創造性を必要とする複雑なゲームであるという認識に基づいています。
囲碁は、チェスなどの他のボードゲームと比較して、可能な手の数が膨大であり、単純な計算力だけでは対応できない複雑さを持っています。そのため、多くの専門家は、AIが囲碁で人間に勝つには、まだ何十年もかかるだろうと予想していました。
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