【ゲーム攻略&創作日記】青い空のカミュ感想_非実在女子大生、空清水紗織の美少女ゲーム攻略&創作日記Vol.0004
Qui a tue fille
誰が美少女(ゲーム)を殺したの?
Tu m’aimes?
私(美少女ゲーム)の事を愛してる?
「青い空のカミュ」はKAIというブランド、そして〆鯖コハダ氏により作られた美少女ゲームだ。
本ゲームがユーザーに投げかけたメッセージはいくつもあるが、方式HPにもある上記文言がかなりの比重を占めているのではないだろうか。
普段から〆鯖コハダ氏の発言を追っているわけではないため定かではないが、おそらく氏の中では、昨今の美少女ゲームが過去のような芸術性やメッセージ性を持っていないことへの不満や、あるいはそれをただ消費するだけの市場に危機感があったのではと推測する。
同じく公式HPに記載がある氏の文面からも、明確な意図を持って本ゲームが作られていることが良く分かる。
伝記的な要素は作品を構成するフレームの一部分にはなりえますが、より重要なのは座敷童やそれに類するものの、存在そのものを形而上学的に捉え、
その構成要素は何を意味し、何故そのように解釈されたのかという所が重要になります。
形而上学的に美少女ゲームとは何かと突き詰め、そもそも美少女と言うものはなんなのか?
コハダ自身美少女ゲームが大好きで様々なゲームをプレイしてきました。
結果、コハダにとっての美少女は"儚く切なく美しいもの"がシンプルながら一つの答えでした。
決して他作品が、ただ何となく作られているわけではないが、こうやって制作者が明確な意図を記載し、それが伝わりやすいように導線が引かれている作品は珍しいなと感じる。
「青い空のカミュ」で描かれている内容は決して分かりやすいものではない。
だが、「この作品はプレイしたユーザー一人ひとりにとって、考えるきっかけになってほしい」という意図は容易に汲み取れる。
なぜ、それが容易に汲み取れるようになっているのか。
その答えは、おそらく一番上で引用したメッセージに繋がるのだろうなと思う。
というわけで、随分と長くなってしまったが、美少女ゲームがこれからも生きていけるよう、そしてこれからも愛されるよう、一ユーザーとして感想を書いていこうと思う。
"人は何故、自分の大切なものを大切なままにしておけないのか?"
本作のテーマの一つだ。
「大切なもの」が人であろうと、物であろうと、あるいは概念であろうと、この世のものは等しく時の流れの中にあり、常に変化していくものだ。
その瞬間のその状態のものを、そのまま「大切なもの」と捉える場合、「常に変化する」というこの世の時の流れは、ある意味「理不尽」な仕打ちに感じるだろう。
逆に言うと「常に変化する」ことを「そういうものだよね」と受け入れられれば、「理不尽」だと感じないのではないだろうか。
本作の主人公、燐と蛍は仲が良いが、本質は対称的だ。
燐は、ある一瞬の「完璧な世界」を求め、蛍は自分が置かれている、移り行く世界を受け入れ、良しとする。
作中では、燐は蛍に対し綺麗なままでいてほしいと願う。つまり燐にとっての「綺麗」を、蛍にある意味押し付けているようにも見える。
家庭環境においても、両親には一緒にいてほしいと思い、従弟の聡とは一線を越えないよう自分の感情を抑えていた。「社会の常識」を「完璧な世界」として、自分の周りに、あるいは自分自身に求めていたわけだ。
これは、座敷童を町にとどめておこうとした町民たちと同様の構図だ。
一方で蛍は、燐や世界に対して、その状態を保持し続けるような拘りを見せることはない。
燐との家庭環境で比較すれば、蛍は母親がいないことを悲しいとは思わず、そういうものかと受け入れている。
お出かけの約束が部活のミーティングでダメになりそうなシーンでも、燐は時間通りに行けないこと、「不条理」なことを不満に感じている。
だが蛍はその状況を受け入れ、約束の本質である「燐と出かけること」が達成できればそれでいいと、燐を待ち続けていた。
オオモト様の青い家では、二人の行動に明らかな違いがある。
燐は、家の水や桃を口にすることにためらいがない。味だってしっかりと分かる。
反面、蛍は手を出そうとはしなかった。
オオモト様という「そのままであれ」と願われた対象が存在する「完璧な世界」において、燐は同様の信念を持つためにすぐに馴染んだが、蛍はそうではなかった。
物語のラスト、青い家の世界から電車に乗ったのが蛍のみだったのも、「完璧な世界」を求めていなかったからと考えれば納得がいく。
「完璧な世界」を求めた過去の町民たちが生んだ歪みは、同じく「完璧な世界」を求めた燐によって収束し、そして移りゆくものを良しとする蛍だけが元の世界に戻った。
燐と蛍、どちらが正しいというわけではなく、対称的な考えを持つ二人の少女がただそこにいただけ。
物語としては"ただ""だけ"だが、やはり考えさせられる内容であったし、プレイしていてとても楽しかった。
燐と蛍には、二人一緒に元の世界に戻って仲良く過ごしてほしかったと思う私は、まだ青い家の中にいる。