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『アングスト/不安』撮影 ズビグニェフ・リプチンスキQ&A

『アングスト/不安』を観た者であれば、誰しもが「このシーンはどうやって撮ったのか?」と思うであろう。
時に、独房の天井から、刑務所の屋根から、屋敷の上空から、まるで神の視点かのように。規則正しく歩く刑務官たち、出所する主人公K.の足取りを下から。K.の表情を接写し、彼の動きに合わせて。ほとんどセリフらしいセリフはなく、彼のモノローグと、驚くべきカメラワークが激しく冷たく雄弁に心情や状況を物語ってくれる。
撮影・編集を行ったズビグニェフ・リプチンスキは、『タンゴ』で第55回アカデミー賞・短編アニメーション賞を受賞し、ジョン・レノンの「イマジン」のMVほか、オノ・ヨーコ、ミック・ジャガー、ジミー・クリフなど数多くのアーティストたちの映像を手掛けてきた、言わば映像の魔術師的存在である。2006年には女子美術大学客員教授を務めるなど、日本での人気も高い。
『アングスト/不安』の日本での反応に加え、本編で特別な存在感を放つ犬のクバについても、飼い主であるリプチンスキに伝えるべくコンタクトを敢行。なにしろ、公式グッズとしてクバのTシャツを作るほどの事態である。
そうしたところ、彼のプロダクションの公式Facebookにこのような投稿がなされた。
「私の犬はスターだ」

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https://www.facebook.com/zbig.rybczynski/posts/3541635425870660

ぜひ、この貴重な機会にリプチンスキに質問をしてみようと思ったところ、とても丁寧な返信があった。以下に、Q&Aの日本語翻訳と原文を掲載する。
新作の撮影がある忙しい中、対応してくれたリプチンスキに感謝しかない。

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◆『アングスト/不安』の撮影で一番苦労したことは何ですか?

非常に少ない予算でありながら、非常に要求の厳しい作品だったので、十分なスタッフはおらず、期間も限られていました。それに加えて、殺人者のねじれた心を探求して見せる目的で、彼の顔を近くで撮るために、私は逆さまに取り付けられたカメラで撮影し、鏡に映った映像を撮影するというクレイジーなアイデアを取り入れました。
したがって、カメラの動き(パンまたはチルト:左右と上下の動き)を制御するのに大きな障害がありました。
何故なら、すべてが反対方向に進んでいたからです。現場ではデイリー(編集用の下見フィルム)はありませんでしたし、ビデオアシストもなかったので、まったく、すべてのテイクの最終結果を見ることができませんでした。撮影終了の翌日、レンタルしていたセットで洪水もありました。

◆日本の観客に向けてメッセージはありますか?

喜びをもたらさない事に囚われている暇はないほど人生は短すぎるので、強くあり続け、あなたが好きなことを何でも情熱的に実行して下さい。
大胆に実験をして、他人と同じことを繰り返さないように、常に自分の声に気を配りましょう。
新しい技術のすべてを自分自身で取り入れ、新しい発明の創造の一部になることができればなおいいです。『アングスト/不安』は、フィルムネガを使った私の最後の作品の一つです。
日本の技術であるHDTVは私の人生を変えました。私はこの技術を映画制作に利用したパイオニアでした。他の映画製作者がHDTVを使って映画を作ることについて耳を傾けようとすらしなかった1985年から、私はHDを使って仕事をしてきました。日本には多くの友人がいますし、NHKは私の他の作品の共同製作者でもあります。うまくいけば、私の新しい長編映画で、またあなたの国を訪れることができるでしょう。妻のドロタと今取り組んでいるところです。

◆あなたの愛犬クバは日本で人気です。クバの思い出を教えて下さい。

そう、彼は素晴らしい個性的な犬で、天然の映画スターでした。私は彼を訓練したことはありません。日常生活では誰の言うことも聞かず、例えば、家の中では常にオシッコをし、恋をすると数日間消えてしまい、ガールフレンドもたくさんいました。彼は俳優のバッグから食べ物を盗んでいました。彼の好きなスナックはチョコレートで、嫌いな唯一の食べ物はオリーブでした。オリーブだけが大嫌いで、玉ねぎも食べていました。
彼は映画の中で働くのが大好きで、私たちがセットにいるとき、彼は魔法のように良い聞き手に変わりました。
ブロッキング(場面ごとのリハーサルや調整)の間、私は彼に何をすべきかを伝え、示しました。アリフレックスカメラが回る音(かなりうるさい)を聞いた瞬間、彼はスタンバイすることを知っていました。それから私は「マーロン・ブランド!アクション!」と言いました。それが、彼が演技を始める合図でした。撮影中、彼はやるべきことを完璧にこなしました。カメラが静かになると、彼は私のところに戻ってきて、幸せそうに次の撮影を待っていました。
『アングスト/不安』以外にも、クバは私の他の多くの映画やミュージックビデオに出演しており、常に仕事の準備はできていましたが、盗んだソーセージやチョコレートを共演者と共有することはありませんでした。

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(以下、原文)
◆What did you most struggled with when shooting Angst? How did you make it possible to take a bird's-eye view shot from above?

It was a very demanding production with a very small budget, therefore no complete crew and very limited time. Besides that, to explore and show the killer's twisted mind (to be closer to his face) I had this crazy idea to shoot with a camera mounted upside down and observing the image in the mirrors.
Therefore, I had a huge obstacle controlling my camera movements (pans or tilts), because everything was going the opposite directions. We couldn't see any dailies, we also had no video assist on the set at all, so I couldn't see the final result of every take. The next day after the wrap, we even had a flood on the rented set.

◆Would you give a message to Japanese audience?

Stay strong, do what you love, whatever you are passionate about, because life is too short, to be stuck with something which is not bringing you joy. Be bold and experiment, don't repeat what others do, be on the constant lookout of Your Voice. Teach yourself all about the new technologies, better yet be a part of creating new inventions. Angst was one of my last production using film negative.
Japanese technology HDTV changed my life. I was a pioneer of using this technology in movie production. I've been working with HD since 1985 when no other filmmaker wanted to even listen about using HDTV to create a film. I have many friends in Japan, and NHK is a co-producer of my other works as well. Hopefully, I'll be able to visit your country again, with my new feature film, I am working on right now with my wife Dorota .

◆Your KUBA is very popular in Japan. Please tell us your memories of KUBA.

Yes, he was a great unique dog, a natural movie star. I never trained him. He never listened to anybody when it came to everyday living, for example, he peed in the house constantly, when he fell in love he vanished for a few days, he had many girlfriends. He was stealing food from the actor's bags, his favorite snack was any chocolate he could find, the only food he hated was olives. He could even snack on onions.
He loved working in the movies, when we were on the set, he magically turned to a good listener.
During blocking, I told and showed him what he should do. The minute he heard the sound of Ariflex camera rolling (quite noisy) he knew to stand by. Then I said “Marlon Brando! Action!” that was a cue for him to start acting. During shooting he did exactly what he was supposed to. When the camera went silent, he came back to me all happy, waiting for the next take.
Besides Angst, Kuba starred in many of my other movies and music videos, always ready to work but never sharing his stolen sausage or chocolate with his co-stars.
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非常に限られた状況下で、素晴らしい映像《発明》を果たしたリプチンスキ。彼の言葉からは、常に興味のあるもの、新しいものに前進して追求していく事の大切さが学び取れる。
そして、クバがいかに様々な場所で愛されチャーミングな性格だったかという大切な情報にも触れる事ができた。
なお、彼の出演したMVの一部は以下の通り。

また、最近、ズビグニェフ・リプチンスキのプロダクションである、Zbig VisonはTwitterも開始したので、それぞれ併せてチェックして頂きたい。

公式HP
https://www.zbigvision.com/

公式Twiter
https://twitter.com/RybczynskiZbig

公式Facebook
https://www.facebook.com/zbig.rybczynski

公式Instagram
https://www.instagram.com/zbig_rybczynski/

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