厚生労働省いわく~障害者の就職件数が、コロナ禍以前の水準に向けさらに改善~
5月31日に厚生労働省から昨年度(令和4年度・2022年度)の障害者・職業紹介状況が発表されました。
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001101527.pdf
⚫ 新規求職申込件数・就職件数
新規求職申込件数は 233,434 件(対前年度比 4.2%増)、就職件数は 102,537 件(対前年度比 6.6% 増)となり、いずれも前年度を上回った。 コロナ禍以前の令和元年度と比較すると、新規求職申込件数は、前年度に引き続き令和元年度 (223,229 件)を上回り、就職件数は令和元年度(103,163 件)に近い水準まで改善した。
厚生労働省のデータが本当であれば、昨年度の時点で求職者の新規申し込みはコロナ以前の好景気の時以上に増えて、就職できた人の数もコロナ以前と同じ程度に回復している訳ですが、実際の感覚と大きく違っている気がするのは私だけでしょうか?
障害種類別の就職決定した件数を、求職者の新規申し込み件数で割り算した就職率ですが、身体障害者は知的・精神の障害者よりも低い就職率であることが、ちょっと意外です。そして就職件数の約53%が精神障害者であることから勝手な推測をするならば、そもそも身体障害者の新規求職申込が少ない可能性と共に、身体障害者が新規に求職申込をしても応募したい求人が無い・少ない可能性が高そうなことと、身体障害者が内定を得ても辞退した人が他の障害者よりも多かった可能性がありそうです。いずれにしても、身体障害の方々にとってハローワークの求人はマッチし難いこと、逆にいうと知的障害の方々は求職申込した人の約6割は就職決定する状態になっていると言えますね。
⚫ 就職件数の増加要因
前年度に引き続き新規求職申込件数が増加するとともに、障害者の就職先として比較的高い割合 を占める「医療,福祉」、「製造業」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「卸売業,小売業」 において引き続き求人数が増加し、特に「卸売業,小売業」において令和4年度に求人数の増加 幅が拡大したことによるものと考えられる。
障害者求人が多数ある業界のTOPは、「医療、福祉」がずば抜けており、おそらく医療よりも福祉の求人が圧倒的に多いと思われます。別の言い方をするならば、病院の求人よりも就労継続支援事業所など福祉関連の求人が多いと思われます。そして次に多いのは「サービス業」、「卸売業、小売業」で、4番目に「製造業」となっており、いずれの業界も軽作業もしくは接客・販売が求人の大半を占めると思われるので、事務系の求人が全体的に少ないことは仕方ないのかもしれません。
知的障害者や精神障害者の就職が増えていることは良いことであり、それを厚生労働省が「~障害者の就職件数が、コロナ禍以前の水準に向けさらに改善~」と発表することに異議を唱えることはしませんが、福祉業界が最低賃金で週20時間の雇用を増やしていることが目立つ日本の障害者雇用は、障害を持つ人が働くことで得る報酬や、障害者の労働そのものの価値を、障害者では無い人と比べて低くしている現実を示しているように思えます。
もっとも障害者専用求人という求人の区別が公にある現在は、更に言うなら障害者だけ法律で雇用義務が定められているからこそ障害者と健常者が公的に区別されており、健常者と比較すれば障害者の雇用条件は低いことが当たり前であると多くの人々が思っており、常識にもなっている現在の状況は、果たして正常なのでしょうか?正直なところ、何が正しい状況であるのか未だ大畑には分かりませんが、今の状況は良い方向に向かって進んでいるのか?と考えることは大事だと思います。