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106万円の壁を壊したら就労継続支援A型事業所が経営に行き詰まる?
厚生労働省が2024年12月、年収要件のいわゆる「106万円の壁」を撤廃する方針を固めたことで、社会保険料の企業負担の増加が見込まれる中、山形県の障害者福祉サービス会社が年間6800万円余りの人件費の増加が避けられないとして7つのA型事業所を2026年3月いっぱいで全て閉鎖し、障害者217人を解雇する方針との報道が2/13にありました。
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現在の日本は、物価高にもかかわらず賃金が比例して上がらないことで、ゆとりある生活が遠のくことが社会問題となり、企業側も深刻な人手不足に悩んでいます。しかし、長時間働いて収入を増やしたい、人手不足を解消したいと考えても、年収の壁の存在によって税金や社会保険料の負担が増えるため、パートやアルバイトの人が労働時間を抑えてしまう問題があります。
そこで日本政府は2023年10月から、パートやアルバイトの人でも年収の壁を意識せずに働ける施策として「106万円の壁」と「130万円の壁」に対応した「年収の壁・支援強化パッケージ」を打ち出しました。
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https://www.gov-online.go.jp/article/202312/entry-5288.html#secondSection
手取が減るから「働き控え」をするパート・アルバイトの方が年収106万円の壁を気にせず、もっと長い時間働き易くするだけでなく、企業側の負担も助成金などを出すことで企業負担の軽減も「年収の壁・支援強化パッケージ」にはあるとされていますが、冒頭の報道にある山形県の障害者福祉サービスの会社は社会保険料の企業負担増加を理由にA型施設を閉鎖=障害者200名以上を解雇します。
この山形県の会社がA型事業所を閉鎖することは、例外的な動きとなるのか、それとも全国的にA型事業所の閉鎖が多くなるのか分かりませんが、「年収の壁・支援強化パッケージ」にある企業負担の軽減策が障害福祉サービス事業には効果が無い?乏しい?のかもですね。税金や社会保険料を、以前は支払って無かった短時間労働者・低賃金労働者から広く徴収する策なのに、集めたお金を個人や企業に適切に還元できて無いのでしょうか…
いずれにしても、人手不足・労働力不足を解消する政策「年収の壁・支援強化パッケージ」が企業負担増加を理由に障害者を解雇する事例となる以上、この政策は誰のための策なのか?考えさせられます。
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