ペケとジマの複素解析 #2 複素関数の微分と積分
登場人物
ペケ (聞き手)
理系,学部2年.
ガリ.
ジマ (話し手)
文系,ペケの先輩.
デブ.
ペケ:ジマさん.コーシー・リーマンの方程式がよくわかりません.なんで「複素関数がある点で正則」なことと「その点でコーシー・リーマンの方程式が成り立つ」ことが同値なんですかね?
ジマ:n~~.平行じゃない2方向から微分した値が一致していたら正則って言えるね.
ペケ:なんでですか?
ジマ:実数のときと一緒で,ある$${z}$$における微分$${\mathrm df/\mathrm dz}$$が複数の値持ってたらマズくねー?
ペケ:なるほど.$${f(x)=|x|}$$という関数が$${x=0}$$の左右で微分係数が違うから滑らかじゃないみたいな感じですか.
ジマ:そォー.じゃ,一番ラクな$${\partial/\partial x}$$と$${\partial/\partial(iy)}$$で$${w=f(z)}$$を偏微分してもらえる?
ペケ:念のため丁寧に言うと,$${\eta=iy}$$として,
$$
\frac{\partial }{\partial (iy)}
=\frac{\partial }{\partial \eta}
=\frac{\partial y}{\partial \eta}\frac{\partial }{\partial y}
=\frac{\partial (-i\eta)}{\partial \eta}\frac{\partial }{\partial y}
=-i\frac{\partial }{\partial y}
$$
だから,
$$
\frac{\partial w}{\partial x}
=\frac{\partial u}{\partial x}+\frac{\partial (iv)}{\partial x}
=\frac{\partial u}{\partial x}+i\frac{\partial v}{\partial x}
$$
$$
\frac{\partial w}{\partial (iy)}
=\frac{\partial u}{\partial (iy)}+\frac{\partial (iv)}{\partial (iy)}
=-i\frac{\partial u}{\partial y}+\frac{\partial v}{\partial y}
$$
で,$${\partial w/\partial x=\partial w/\partial(iy)}$$だから,
$$
\begin{aligned}
&\frac{\partial u}{\partial x}-\frac{\partial v}{\partial y}=0,\frac{\partial u}{\partial y}+\frac{\partial v}{\partial x}=0\\
\\
&\therefore
\frac{\partial u}{\partial x}=\frac{\partial v}{\partial y},\frac{\partial u}{\partial y}=-\frac{\partial v}{\partial x}
\end{aligned}
$$
で,逆にコレが成り立つとき,
$$
\begin{aligned}
\frac{\partial w}{\partial x}
&=\frac{\partial u}{\partial x}+i\frac{\partial v}{\partial x}\\
&=\frac{\partial v}{\partial y}+i\left(-\frac{\partial u}{\partial y}\right)\\
&=-i\frac{\partial u}{\partial y}+\frac{\partial v}{\partial y}\\
&=\frac{\partial w}{\partial (iy)}
\end{aligned}
$$
で$${\partial w/\partial x=\partial w/\partial(iy)}$$がなりたつという感じですか.
ジマ:Soー.
次に,複素積分の話だ.$${C:(\alphaから\beta)}$$という積分路に沿った積分をつぎとするよォー.
$$
\int_C f(z)\mathrm dz:=\lim_{n\rightarrow\infty}\sum_{k=1}^nf(z_k)(z_k-z_{k-1})
$$
ペケ:複素積分の定義は,実積分と一緒で差分の和の極限なんですね.$${z_k}$$が実数のとき普段の積分と一致しないといけないからそりゃそうか.
ジマ:時にペケくん.$${-C:(\betaから\alpha)}$$という積分路に沿った積分はどうなると思う?
ペケ:えーと,
$$
\begin{aligned}
\int_{-C} f(z)\mathrm dz
&=\lim_{n\rightarrow\infty}\sum_{k=1}^nf(z_{k-1})(z_{k-1}-z_k)\\
&=\lim_{n\rightarrow\infty}\left[\sum_{k=1}^nf(z_{k})(z_{k-1}-z_k)+\cancel{\sum_{k=1}^n\left(f(z_{k-1})-f(z_{k})\right)(z_{k-1}-z_k)}\right]\\
&=-\lim_{n\rightarrow\infty}\sum_{k=1}^nf(z_{k})(z_k-z_{k-1})\\
&=-\int_C f(z)\mathrm dz
\end{aligned}
$$
ガバいけど,何となく実積分のときと同じく,区間を逆にたどればマイナスになることがわかりました.
というか気づいたんですが,$${f(z)}$$の原始関数を$${F(z)}$$として,
$$
f(z_k)\approx\frac{F(z_k)-F(z_{k-1})}{z_k-z_{k-1}}
$$
となるから,
$$
\begin{aligned}
&\lim_{n\rightarrow\infty}\sum_{k=1}^nf(z_k)(z_k-z_{k-1})\\
&=\lim_{n\rightarrow\infty}\sum_{k=1}^n\frac{F(z_k)-F(z_{k-1})}{z_k-z_{k-1}}(z_k-z_{k-1})\\
&=\lim_{n\rightarrow\infty}\sum_{k=1}^n\Big(F(z_k)-F(z_{k-1})\Big)\\
&=\lim_{n\rightarrow\infty}F(z_n)-F(z_{0})\\
&=F(\beta)-F(\alpha)
\end{aligned}
$$
だから,差分の和の結果が頭とケツしか残らないから複素積分の値は途中の経路によらないんですね!
ジマ:やるやん.$${C}$$と$${f(z)}$$の取り方によるがな.
ペケ:取り方によっては話変わってくるんすね.今度教えてください.
ジマ:おうよ.じゃ最後に$${\Gamma:(\alphaから\alphaに戻ってくるような輪)}$$で積分してみろ.
ペケ:複素積分は途中の経路によらないから,$${\Gamma}$$を途中で$${\beta}$$に寄ってから$${\alpha}$$に戻るという風に解釈すると,
$$
\begin{aligned}
\oint_{\Gamma} f(z)\mathrm dz
&=\int_{C} f(z)\mathrm dz+\int_{-C} f(z)\mathrm dz\\
&=\int_{C} f(z)\mathrm dz-\int_{C} f(z)\mathrm dz\\
&\Big(\mathrm{or}=F(\alpha)-F(\alpha)\Big)\\
&=0
\end{aligned}
$$
やっぱり,頭とケツが一緒だから打ち消しあってゼロになった.
ジマ:ペケくぅん.証明は美しいけど,君は大きな勘違いをしているようだね.複素関数においては,正則じゃないとき,同じ$${z_0}$$でも辿ってきた経路によって$${f(z_0)\neq f(z_0)}$$となるんだよォー.まぁそれは長くなるから今度だな.ちなみにこの結果「$${f(z)}$$が閉曲線$${\Gamma}$$の内部で正則なら$${\int_{\Gamma} f(z)\mathrm dz=0}$$になる」ということを,コーシーの定理という.
ペケ:へー.そうなんですね.
#2のまとめ
コーシー・リーマンの方程式
コーシーの定理
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