TikTokについて
中華人民共和国のByteDance社が提供している、主にスマートフォン向けの短編動画のプラットフォームである、TikTokを使ってみた。TikTokに関しては、これまで個人情報等コンプライアンス上の不安があったのだが、増加し続けるユーザー数と知名度に伴い、試しに使ってみようかと思い立った。なお、コンプライアンス上の不安、とは中華人民共和国の国家情報法という法律によるものである。つまり、中国共産党が要請すれば、中華人民共和国内にある企業や個人は、あらゆる情報を党へ差し出さなくてはならないという内容である。TikTokも中華人民共和国の企業であることから、中国共産党の要請があれば、おそらく登録されている個人情報や収集したデータ等は党へ渡ってしまうだろう。ただ、現在のところはこうした情報漏洩が行われているという証拠はなく、世界的にも使用の判断については意見が分かれている状況である。こうした状況を鑑み、私はある程度の情報漏洩のリスクは理解した上で、TikTokを使用してみることにした。
まず、 TikTokの特徴的な点としては、コンテンツがある程度受動的に共有されるという点である。すなわち、自分の意図しない内容のコンテンツであっても、ユーザーのスマートフォンへ表示されるということだ。例えばYouTubeでは、自分がよくみている内容の関連動画がおすすめ動画欄へ表示されることはあっても、動画が勝手に流れるということはない。(動画を視聴し終わったとき、勝手におすすめの動画が流れることはあるが、カウントダウンが表示されており、かつキャンセルもできることからシステム上異なっている)また、表示された動画に対して興味がなければ、下方向へスワイプすることで次の動画へすぐにジャンプすることができる。
私も、2本の動画を試しに投稿してみた。すると、投稿後わずか30分で900回再生を超え、いいねが2つもついた。投稿した動画は、あるあるネタを顔出しで言う、というだけのよくある内容であった。つまり、このことから視聴者が多いことがわかる。(ユーザー数はわからないが、ユーザーに表示された回数は確実に多いだろう)アジアを中心に特に若年層のユーザーが多いことが原因であると考察した。
また、投稿するだけでなく2時間程度に渡り延々と流れてくるコンテンツを眺めてみた。面白いと思った動画にいいねを押したり、投稿者を数人フォローしていくと、流れてくる動画の内容も自分の好みのものへと変化していった。次第に興味のある動画が多くなるようにアルゴリズムが組まれているようであった。私は、TikTokで活躍している個人は基本的に美男・美女であるか、ティーンエイジャー向けの動画が多いものだと決めつけていたが、こうした認識が誤っていたことにすぐに気付いた。確かに、YouTubeの広告でよく見るような乳房を晒している美しい女性も多く見かけられる。しかしその反面で、現役のお笑い芸人や30代風の男性、あるいは極端なブサメンについても散見された。しかも、そのコンテンツの内容が実におもしろい。例えば、Pornh●bの動画再生時に必ず流れるビート(女性の方は気にしないでいただきたい)をボイパする、という動画では不覚ながらも爆笑してしまった。これ以外にも、言語化すると面白さが伝わらないような微妙なニュアンスをもつ笑いについても投稿されていた。TikTok内では、コメディや動画のクオリティがかなり成熟していることがみてとれる。
TikTokでは、短い動画のなかでいかに視聴者の興味を惹き続けられるか、ということが非常に洗練されている。特に若年層にとっては、自己顕示欲が満たされるように様々な画像加工フィルターが完備されている。これを使うことで、そこまで自分の容姿に自信の無い人でも気軽にかっこよく/かわいく動画を撮ることができる。一昔前に流行った、Snowをはじめとする画像加工アプリに近いものである。若い人へ向けた効果的なマーケティングが行われていることがTikTokの強みだろう。
また、短編動画の内容についても、より刺激的で飽きさせないような「テンポのいい動画」の評価が高い傾向にあることがわかった。女性が胸を露出したり、イケメンの男性が笑っている動画が多いのはこれを反映しているのではないだろうか。また、クリエーターとしては次から次へと動画が流れてくる、という一定のリズム感のなかで表現していかなくてはならないため、独特のセンスが重要になると思われる。弾き語りや歌の投稿をする人であるならば、倍速再生機能や字幕機能を駆使して、わかりやすくて伝わりやすいものを投稿するように意識する必要があるはずだ。
これからも一定のユーザー数を抱えることが予想されるTikTokを、我々がどう活用していくか考えることは重要である。
中華人民共和国内の国家情報法が改正されるまでは、特に個人情報に関しての大きなリスクが潜んでいることは認識しなくてはならない。しかし、エンターテイメントとしてはかなり発展していることは事実である。
この話を総括すると、あなたがもしエチチなのであればTikTokに投稿してみるのはどうだろうか、ということである。しかし、その際は是非私に教えて欲しい。