偶然作ったマフィンが好評。地元・玉野で“やりたい”を叶える「片岡里奈さん」(マフィン専門店mogmog)
宇野港メディア部では、岡山県の港町・宇野港エリアから玉野市の良さを「人」を通じて紹介していきます。
今回取材したのは、「マフィン専門店mogmog」のオーナー、片岡里奈(かたおか りな)さんです。
玉野市出身の片岡さんは、就職と同時に岡山市へ移り、様々な飲食業界で働いてきました。2021年10月に、宇野駅から徒歩3分に位置するシェアショップUZ(以下、UZ)にて「マフィン専門店mogmog」を始め、UZほか岡山県内のイベントに出店しています。
片岡さんがお店を始めた経緯や、その背景にある思い、地元・玉野での活動についてなど話を聞きました。
ご縁が重なり、マフィン専門店をUZで始める
―現在はどのような活動をしていますか?
「マフィン専門店mogmog」(以下、mogmog)のオーナーをしています。実店舗はなく、UZにて月に数回間借り営業をしていたり、マルシェなどのイベントに出店したりしながら活動中です。
おやつとして食べる甘いマフィンはもちろん、軽食にもなるお惣菜のマフィンも販売しています。もともと私は甘いものが苦手なので、私のような人でも楽しめるようなマフィンを出したいと思いながら作っています。
普段はカフェで働いていて、それ以外の日にできる範囲でmogmogを営業しています。不定期での出店ですが、お客様が来てくださるのがありがたいです。
―mogmogを始めたきっかけを教えてください。
私が作ったマフィンを、友達が「めっちゃおいしい!これは売れるよ!」と言ってくれたことと、UZとのご縁が重なり始めることになりました。2021年10月にUZに出店してから、UZだけでなく他のイベントにも参加するようになりました。
私は料理がしたくて、19歳のときから料理の世界で働いていました。入社した会社にたまたまケーキ工房があって、「ケーキ工房に入ってほしい」と言われて作るようになりました。正直甘いものが苦手だったのですが、作ったら味見をするようになって、私も少しずつ甘いものを食べるようになったり、家でも作って友達にあげたりするようになりました。
そのうちシフォンケーキづくりをしたくなって、家で焼いていたのですが、スランプに入ってうまく焼けないときがあったんです。「なんか気分転換したいな」と思って、偶然作ったのがマフィンでした。料理やお菓子の本を見漁ったのかな?マフィンの本をたまたま持っていたのかな?……うる覚えですが(笑)
そのとき、ランチに行く約束をしていた友達2人にあげたらすごく好評で。「売れる!お店出そう!」と言われました。でも当時は売るつもりはなかったから「まぁ、また焼くわ」で終わっていました。
ただ、マフィンをあげたうちの1人が玉野にある犬猫トリミングサロン「Cotton Dog&Cat」のオーナーさんと友達で、私のマフィンのことを話したようで。オーナーさんが、UZを運営しているハルさんに話を繋げてくれて、一度お話しすることになったんです。
先ほど「友達2人にマフィンをあげた」と言ったのですが、あげたタイミングが実はUZでランチをした帰りでした。「え!この前行ったところだ!」と思って、びっくりしたのを覚えています。
その後、友達と一緒にハルさんと玲美さんに話をしにいったら、その場で出店が決まって、あれよあれよと初日を迎えていました。きっかけって、本当にちょっとしたことなんだなと思いましたね。
その友達2人というのが、mogmogを始めた頃から手伝い、支えてくれている2人です。
周囲の後押しが、諦めていた夢を叶えるきっかけ
―ずっと飲食業界で働いていたそうですが、自分のお店を持ちたいと思ったことはなかったのですか?
思ったことはありましたが、マフィンのお店をするとは思っていませんでした。
ずっと料理をしていたので、お惣菜店やカフェをやってみたい気持ちはありました。でも、飲食業界にいるからこそ厳しさも知って、今の自分には店を持つのは現実的じゃないなと思っていたんです。いつのまにか、夢を諦めていました。
―夢を諦めていたなかで急にお店をやることになり、不安はなかったのですか?
不安はめっちゃありました。でも、ハルさんと玲美さんと話した日からあまりにもトントン拍子で話が進んだので、立ち止まる間もなく出店初日が来ていました。
ありがたいことに初日から多くのお客様に来ていただけて、めっちゃ忙しくて……。ハルさんや玲美さん、店を開くきっかけになった2人の友達が手伝いに来てくれたことで、何とか営業を終えられました。初日を終えて、私以上にみんなが手応えを感じてくれたので、「またやったらいいが!」の後押しで続けることにしました。
続けようと決めたときも不安はあったけど、こんなに長く続けられるとは思っていなかったので、当時は「とりあえずやってみよう」くらいの気持ちでしたね。
出店のたびに、やりたいことを形にしてみる
―UZに出店してよかったことを教えてください。
お店を持っているわけではないので、場所を貸してくださったこと自体がありがたかったです。初めからお店をやろうとすると多くの自己投資をしないといけませんが、貸していただけたことで「まずはやってみよう!」という気持ちになれました。
あとは、もともとUZの常連さんが買いに来てくれたのがありがたかったです。一人で始めていたら、初日から行列ができるほどのお客様は来なかったと思います。
ハルさんと玲美さんと波長が合ったのも嬉しかったです。話のテンポが似ていたのかな?初めからお話ししやすくて。だからトントン拍子で出店することが決まっても、流れに身を任せられたんだと思います。
また2人が私のやりたいことをサポートしてくれるのも心強かったです。マフィンづくりの腕試しや、新商品を試しに販売するなど、出店するたびに色々と挑戦させてもらえています。
―mogmogのマフィンは、どのようなこだわりがありますか?
人気がある甘いマフィンと、甘いものが苦手だった私が食べたいお惣菜のマフィンを、両方出しています。
“マフィンといえば甘いもの”と思っている方が多いので、初めは甘いマフィンばかり売れていました。でも2年以上やってきて、やっぱり甘いマフィンの方が人気ではあるけど、「お惣菜もおいしかった!」と手に取ってくれる方が増えてきて嬉しいんです。
甘いマフィンとお惣菜のマフィンは生地を変えています。マフィンとしては同じですが、別の食べ物としてそれぞれ楽しんでいただけると思いますよ。
―mogmogのマフィンは種類が豊富ですよね。ファンの一人としては、選ぶ楽しさがあります。
お店を始めた当時は、5種類をBOX売りしていました。それが今では、1回の出店で10種類以上のマフィンを作るようになっています。
2021年10月頃って、ちょうどマフィンなどの焼き菓子ブームが来ているときで、その波に乗れた気がしていました。でもブームは続かないと思っていたし、イベント出店のときはどんなお客様が来るかわからないから、新作メニューを考えたり、「プチ」という小さいサイズのマフィンを出したりと、毎回工夫をするようになりました。
大変ではあるけど、「マフィンは作り方に幅があるんだな」と気がついてからは、試すのが楽しくなっています。
地元・玉野の良さを、お客様から教えてもらった
―出身は玉野市だと聞きました。地元で店を開くことについては、どのような思いがありますか?
結果的に玉野でお店を始めたけど、地元でできるのは嬉しいなと思います。地元の友達や家族が、気軽に遊びに来てくれるのが嬉しいです。
でも正直、出身地としての思い入れはありますが、もう戻ってこないような気がしていました。子どもの頃は「玉野には何もない」と思っていたので……。
UZでmogmogとして出店するようになってからは、玉野にも素敵なお店や移住者が増えていることを知ったんです。逆に移住した方やお客様のほうから玉野の良さを教えてもらうことが増えましたね。
たしかに、海も山もあって、魅力的な人が集まってるなと。玉野っていいまちだったんだなと、今さらながら思います。大人になったからというのもあるかもしれませんが、mogmogを始めて地元を改めて好きになりました。
―イベント出店も多いそうですが、『うのマル』出店のきっかけを教えてください。
ハルさんが実行委員長ということで、以前からUZに出店していたご縁で『うのマル』にも呼んでもらっています。2023年は2回開催されましたが、2回とも参加させてもらいました。
1回目はどのような雰囲気か分からなかったけど、すぐに売り切れてびっくり。地元かつUZを通して出店回数が多い玉野でイベントに出られることは、やはり特別嬉しいです。
―様々な地域のイベントに参加するなかで、『うのマル』の魅力は何だと思いますか?
いいロケーションで出店できること。瀬戸内海が見える、開放的な場所で出店できるのは、出店者側としても楽しいです。個人的には、生まれ育った環境の良さをより感じられて、今まで以上に地元に思い入れができているなと思います。
あと、玉野にゆかりがあるお店がよく出店している印象があります。『うのマル』を通して、玉野の素敵な店を知れるのも楽しいです。
―UZでの出店と、『うのマル』の出店との違いはありますか?
最初から最後まで、すべて自分が接客できるところがいいなと思います。
UZでの出店時は厨房にいて、追加のマフィンを焼いていることが多いから、接客は玲美さんや友達に助けてもらっているんです。多くのお客様が来てくれて嬉しい反面、背中を向けて作っているし、奥で焼いているので……。手を振ったり、「ありがとうございます!」と言ったりはしていますが、直接話す機会が少ないのがもどかしくもあります。
でも『うのマル』などのマルシェでは、販売する分のマフィンを全て焼いてから持っていくので、必ずお客様とお話しできるんです。それが嬉しくて。岡山は岡山、倉敷は倉敷のお客様もいらっしゃって、毎回来てくださるお客様もいます。瀬戸内市のお客様などもいて、わざわざ足を運んでくださってるんだなって思うと、本当に嬉しいです。
お子様がいて大変な中きてくださるお客様も……。色んな出会いがあるから、イベント出店もやめられません。
私はずっと飲食業界にいたからか、どのお客様が何を買ってくださったか結構覚えているんですよ。だから「これ食べたことないですよね」と、お客様に合わせてマフィンをオススメすることもあります。そういう会話が、とても楽しいんです。
私もですが、一緒にスタッフとして来てくれる友達もよくしゃべるので、うるさすぎて合う合わないがあると思いますが(笑)、お客様とワイワイ笑える雰囲気も大好きですね。mogmogらしいというか。元気で賑やかですけど、マフィンは真面目に焼いてますのでご安心ください(笑)
お客様の声を聞き、マフィンを楽しむ幅を広げたい
―mogmogとしての活動が急に始まってから、2年以上が経ちました。ここまで続けられた理由は何だと思いますか?
やはり、お客様の声を直接聞けたのが一番だと思います。
昔、ウエディング業界の厨房で働いていた時があるのですが、「厨房は厨房」「サービスはサービス」と、完全に分かれていたんです。それはそれでいい部分がもちろんあるのですが、「おいしい」と言っている声や会話しながら楽しんでくださってる声が聞こえないのが、私には合わなかったなと思っています。
飲食をやめようかと思ったときもあったけど、私にとってはお客様の声を直接聞けるからこそ、やりがいがあるし続けられるんだなと思いました。この約2年で、お客様の意見をもとに作ったマフィンもあります。自分が作りたいものを作ると同時に、お客様にとって、買いに来るのも食べるのも楽しいマフィンをこれからも作っていきたいです。
―今後の目標を教えてください。
マフィンは基本的に日持ちしますが、「その日のうちに食べてほしいマフィン」も作りたいなと思っています。以前はモンブランやケーキのようなマフィンを出しました。その日のうちに食べてほしいマフィンは、季節をより感じられたりもするので、今後もチャレンジしていきたいです。
あとは、出店当初やっていた、スープやサラダなどとセットにしてマフィンを販売したいなぁと思っています。実店舗も持ちたいですね。やりたいことはたくさんあります。「マフィンを楽しむ幅を広げていきたい」という思いは変わらないので、できることから色んなことにチャレンジしたいと思います。