アパレル販売を経て喫茶店を。接客一筋を楽しみ続ける「上田玲美さん」(喫茶キンバリー/シェアショップUZ)
宇野港メディア部では、岡山県の港町・宇野港エリアから玉野市の良さを「人」を通じて紹介していきます。
今回取材したのは、宇野駅から徒歩3分にあるシェアショップUZで「喫茶キンバリー」を営む店主、上田玲美(うえだ れいみ)さんです。
愛知県名古屋市出身の玲美さんは、岡山市で3年過ごしたのち2020年に玉野市へ移住しました。
「接客が好き」という、一貫した想いを持つ玲美さん。どのように接客と向き合ってきたのか、それらがどのように喫茶キンバリーへと繋がっているのかなどを聞きました。
慣れ親しんだ、名古屋式のモーニングをやりたい
―現在はどのような活動をしていますか?
シェアショップUZ(以下、UZ)で、「喫茶キンバリー」を営業しつつ、UZ出店者のサポートをしています。
喫茶キンバリーは7:00~10:00に営業中(月曜・木曜定休)です。私が名古屋出身なので、名古屋式のモーニングを楽しんでいただけるような店にしています。
―喫茶キンバリーを始めたきっかけを教えてください。
パートナーであるハルさんと玉野へ移住し、UZをやっていくと決めたことが大きかったです。そのときに自分から「モーニングやりたい!」と言いました。
名古屋ではモーニングの文化が定着しているので、小学生のときに自然と「喫茶店をやりたい」と思っていました。家の隣の空き地で母と「喫茶店したいね」と話していたのも覚えています。
岡山にはモーニングができる喫茶店が少なかったので、「ないなら私がやろう」と思いました。
アパレル業の接客一筋だったけれど
―前回公開した記事で、ハルさんが「岡山県に恩返ししたい」から移住したと話していました。ハルさんから初めて移住の話を聞いたときは、どのように感じましたか?
当時アパレル業で接客をしていたのですが、33歳くらいが限度かなと思っていました。ちょうどその頃に移住の話があったので「よし、地方に住もう!」という気持ちになれました。
大学進学時からは名古屋を出て、横浜に住んでいたのですが、飲食店のアルバイトで接客をするのが好きだったんです。「卒業しても接客をやりたい」と思ったときに自然と思い浮かんだのが、アパレル業でした。
やっぱり接客は、楽しかったですね。固定のお客さんが増えたり、その数が増えるごとに売上が上がったりするのがおもしろかったです。服を作りたいとか、営業をやりたいとかは一切なく、ずっと現場にいたい人でした。
ただ、アパレル業の接客は年齢制限があると思いながらやっていて。それが33歳くらいかなって。お客さんから「ベテラン出てきた」って思われるのは嫌じゃないですか(笑)。だからあらかじめ、自分のなかでの期限を設けていました。
―移住への不安などはなかったのですか?
なかったですね。名古屋を出てからは引越しを経験していたし、都会では働きつくし・遊びつくしたので、「これからは地方で落ち着いて生活してみたい」と思っていました。
試しに岡山に来てみたら、災害が少なくて晴れている日が多いと聞いたので「ここなら住めそう!」と感じました。
妊活と仕事の両立に悩むも「仕事が好き。働きたい」
―玉野に住む前は、岡山市で3年ほど暮らしていたと聞いています。
妊活もしたくて住む場所を変えたのですが、妊活と仕事の両方をやるのが大変でした。
私、働きたい人なんです。仕事漬けの母の影響を受けていると思うんですけど、働くのが好きで。でも、まずは働き口を探すところから苦労しました。やっと採用していただけたのは、結婚式のドレスやタキシードを選ぶ仕事。新たな接客の仕事で楽しかった半面、とてもハードでした。
衣装を選ぶだけでなく、新郎新婦のサイズに合わせてメンテナンスや準備をしたり、小物を選んだり、結婚式当日の会場への搬入搬出をしたりと、結婚式の衣装にまつわることはほとんど担っていたんです。結婚式は、一生に一度の大イベント。当日を迎える約半年~1年間は同じお客様を担当するので、責任を感じながら働いていました。
また業務以外にも研修や会議で関西まで行くことがあって。体力勝負の仕事でした。
一方で妊活では、仕事帰りに毎日病院に行ったりして、なかなかうまくいかず肉体的にも精神的にもしんどくなることも多かったです。妊活期間は長かったけど、努力が実って2020年に娘が生まれ、2023年には息子が生まれました。本当に嬉しかったですね。
―大変でも続けていた、その理由は何でしょう。
私の性格上、好きなことしかやりたくない。どんなときでも「仕事が好きであること」は大前提でした。だからがんばれたんだと思います。
今もそうですが、好きなことで仕事できているのはとてもありがたいです。
自分の店を持ち、玉野に知り合いが増えた
―玉野に住み始めたときは、まちにどのような印象がありましたか?
「都会に来たな」と思いました(笑)。岡山市内に住んでいたときは周りが田んぼだらけで、ランニングをしていると野犬に追われることもあったので(笑)。「宇野港周辺は便利だな」と思った記憶があります。
あと、瀬戸内海に近いから「潮風の影響で、洗濯物は外に干せないのかな?」と思っていましたが、あまり影響はなかったです。干していてもカピカピにならないので、意外と平気でした(笑)。
―玉野で「自分の店」を持つようになった今、喫茶キンバリーをやっていてよかったと思うことは何ですか?
知り合いがいっぱい増えたことです。店に来てくださるのはもちろん、普段の生活でも、まちを歩いていて挨拶できる人が増えたのは、嬉しいことだなと思います。
それに、自分がやりたい店ができているので、楽しくて。好きな仕事をしているから、働くことが気分転換になっています。新メニューなどやりたいことがどんどん出てきて、「今度あれやろうかな」と考えている時間も楽しいです。
―大変なことはありますか?
午前中しか営業していませんが、時間があるようでないのは大変だなと思います。
私はUZに出店してくださる方のサポートもしているので、自分の営業が終わったらお手伝いに時間を使っています。そのうえで買い出しに行くとなると、あっという間に時間が過ぎて、娘が保育園から帰ってくる時間に。仕込みは夜にやって……となると、案外時間がないんです。
―出店されている方に、店を完全にお任せすることもできると思いますが、あえてやっていないのですね。
私のなかで、アパレルのときに他の店舗にヘルプに行っていた感覚と似ているんです(笑)。応援に行っているかんじで。
それに、「料理は好きだけど接客は苦手」という方もいるだろうし、慣れない場所で出店するのはドキドキするだろうし……。いつもではありませんが、なるべくお手伝いするようにはしています。
好きなことで仕事したい人の助けになれたら
―出店者には、どのようにUZを使ってほしいですか?
それはもう、自由に使ってもらえたら!私から「こうしてほしい」という思いはあまりなく、出店する方のオリジナル感を出してもらった方が楽しくなるなと思っています。私の仕事は、それぞれの方が好きなことをやるきっかけ作りなので。
―UZだからこそできることはありますか?
やってみたいことを挑戦できるのは、UZならではかなと思います。
「やりたいけどできない」ことって、最初は多いと思うんです。例えば「マフィン専門店mogmog」のように、作ったマフィンを友達に食べてもらったら「おいしい!売れるよ!」と言われて、「お店をやってみたいな」と思っても場所がないとか。初めから店を構えようとすると、大きな投資が必要だしハードルが高いですよね。
そういうときにUZを使ってもらえたら、挑戦するハードルは下げられるのかなと思います。やりたいことができるように、私たちもサポートしますので。
―最後に、今後やりたいことを教えてください。
昼喫茶をやりたいです!でも、子どもとの時間など色々な問題があるから、どこまでできるかな……というのが正直なところです。
UZがある宇野港周辺は、飲食店の数が増えてはきているけどまだ少ないのが現状。他のお店に話を聞くと、「土日は人が集結しすぎて大変」と言っています。だから「お客さんを分散させてあげたいな」という気持ちがすごくあるんです。
また宇野港周辺を訪れた人にとっても、飲食店の選択肢を増やせたらいいなと思っています。微力ではあるけど、私が昼喫茶をオープンして日中にお茶できるところを増やすことで、玉野にとっていい影響があれば嬉しいです。