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痛みと覚悟を伴う歌が響く夜~「prototype ver.4.5」六本木BIGHOUSE2024.10.28 〈Varrentia(独奏形態)/トミヅカダイチ(toybee)〉

痛みと覚悟を伴う歌が響く夜~「prototype ver.4.5」六本木BIGHOUSE2024.10.28




ビッグハウスだから「大家」だって!
美しいスクリーンでした

六本木BIG HOUSE


トミヅカダイチ
Varrentia(独奏形態)

O.A.
ヤマシタカホ(ひかりのなかに)


久しぶりのトミヅカダイチ、ソロライブ。
Varrentia(渡井翔汰さんのソロプロジェクト、この日は独奏形態)による「prototype ver.4.5」企画に呼ばれてのツーマンでした。
O.A.はヤマシタカホさん、この方も「ひかりのなかに」というバンドを今はソロプロジェクトとして頑張ってる方。

たまたまなんでしょうが、3人とも以前のバンドを色んな形でやめざるを得ず、次のステップに向かった点が共通していて、それでも今なお歌う心の痛みや決意が通じた、覚悟の強さを感じるステージだった、と思いました。
とみさんも渡井さんも少し話したい気持ちだったようで、ステージそのものはゆるやかだったんですが、歌には強い思いがこもっているのを感じる、みなぎる時間でした。

とみさんと渡井さんの歴史を紐解くような、と言って回顧ばかりでもない、この先もお互いに進み続けることを約束するような、そんな心地よい対バン。とみさんは最後、一緒にやろうと渡井さんに呼ばれて飛んでって、ステージの上では、10年タイムスリップしたような子どものような顔をしてました。

いいライブでした。月曜日早々ですが、頑張って来てよかったです。心地よく響いて帰宅してからはなかなか眠れませんでした。

ヤマシタカホ(ひかりのなかに)

Halo at 四畳半のベースだった白井さんが現在関わっているアイドルユニット「may in film」にスタッフとして参加されているそうで、その縁だったのかな?と思います。

すっと入ってきてほぼMCはせず、どの曲もギターに心をたたきつけるような、歌を歌うというよりも吼えるような、そんなステージでした。
帰るときも姿勢よくすっと立ち、お辞儀をしてさっと帰っていく。綺麗な人でした。
自主公演が決まってるとのこと。


トミヅカダイチ(toybee/冨塚大地)

胡蝶の夢
縋-sugare-
道化師のラブソング
あらしのよるに
Ordinaries(Varrentia cover)
S.Y.S〜Save your soul〜
LOOK BACK

ヤマシタさんと対照的によく喋ってたんですが…だからといって軽いわけでも明るいわけでもなく、なんとも言えないさみしい空気もまとってました。自身のここまでの痛みも一緒に振り返ることになったから、かもしれないです。
なんとなく12月のソロツアーはこんな空気になるのかなぁ…?と感じる、とみといびー成分も交えつつも内省の深さを感じるセットリストでした。

流れが実に美しかった。呼んでくれた渡井さんに報いるために、すごくすごく考えたんだろうと思いました。BESGの曲もさらりと…中でも「胡蝶の夢」はびっくりした。オープニングの「詩のようなもの」はトミヅカダイチ的渡井翔汰世界への挑戦だったのでしょうか。詩の中の少年はきっと、とみさん本人。

「胡蝶の夢」という、とみさんが高校生のときに書いたとは思えない美しい歌詞が印象的な曲から始まり、続いてもBOYS END SWING GIRLの「縋-sugare-」という、昔の曲。渡井さんが褒めてくれたんだそうで、そういう思い出を紐解く感じ。
ただ、タイトルには「ラーメン屋みたい、柏あたりの」とダメ出しがあったんだそうで(この日も言われてました、いい曲なのになぁって)。ちょっと回顧に流れすぎないよう、笑いもまぶすトミヅカダイチ。 

渡井さんについても、常に1年あとを追いかけてきたとみさんは、尊敬と愛情と同じくらい憎しみを抱いてる、と。常にかなわない、俺の先を行き、希望をくじく、追いつけないそういう存在が渡井さんなんだと。そんな存在は日本にきっと俺しかいない…と、冗談に混ぜつつも割と本気なんだろうなぁと言う話を終始していました。
また楽屋でMCのとき「だけ」扉を開けて聴いて時々混ぜっ返していた渡井さんからの気持ちも面白くて(笑)素敵でした。

弾き語りなのでとみさんはバンドの時よりかなり柔らかく歌っていて気だるげでした。それがまた、夜に心地よくてよかった。

「道化師のラブソング」の弾き語りは初披露。スロウで歌詞の切なさの際立つ弾き語り、素敵でした(ギターソロのところは特にフィンガーピッキングを駆使するとかはなく、コードのみでさらっとこなしてました)。
僕は「道化師」で、化粧を落とすことはない、ずっと仮面をつけてる、でも渡井さんと白井さんには素を出せ、と言われ続けてた、やっとこのごろそれができるようになってニュートラルに音楽が楽しめるようになってきた…と曲になぞらえて話していたのが印象的。

「あらしのよるに」は指弾きに挑戦!
バンドマンの弾き語りだなぁってかつて渡井さんに言われたことが頭にあったとかで、それくらいやれんだよ、俺だって!!と練習してきたそうです。
軽やかに淡々と歌ってましたが、今日は歌詞を聴いてほしい…という気持ちが届いたのか、渡井さんのファンの方が何人かすんすんと鼻をすすったりタオルで目を拭ったりしてました。そのことに客席でときめきました。

渡井さん、そしてVarrentiaへの敬愛をこめまくった、Varrentiaのカバー「Ordinaries」、高音が素敵でした。明るさのある、トミヅカダイチの「Ordinaries」でした。

ラストは新譜から「S.Y.S〜Save your soul〜」、「LOOK BACK」。
いやぁ、これたまらんかったです…。
「S.Y.S〜Save your soul〜」は、アーティストがおそらく皆、悩んだり考えたりするであろう、「今」をどう表現するかという問題について話したあとで、みんなが自由に受け取ればいい、と言いながら。
とみさんがこめた想いはパーセンテージはそれぞれとしても、感じ取れてるんじゃないかな、と思える、そんな客席の空気でした。
とみさんにしては低音から始まる、暗い曲調。弾き語りではよりダイレクトに伝わったように思います。

そして、「LOOK BACK」。
まるで今日そのもののような…来し方を振り返りながら「ここで共演できたのは嬉しい、でもここじゃない、もっとでかいところでまた一緒にやりたいんだ」と吼えるとみさんの未来を見つめる強いまなざしと声にグッときました。
その「でかいところ」での共演を目撃できる日が近いことを願っています。

Varrentia(独奏形態)・渡井翔汰

Ordinaries
オルター
stray sheep(BESG cover)
惑星都市
天動説
NEW DAWN
オートメイト

en.
夏の匂い (LUNKHEAD cover) with トミヅカダイチ

エフェクターボードを足元に広げ、暗いステージの上でセッティングする渡井さん、眼鏡をかけてクールな面差し。
9月のサンストでのくさのね後夜祭以来、二度目です。
とみさんが信頼し尊敬し対抗心を燃やし追いかけている存在であることは知ってはいましたが、音楽的にはほぼ未経験の状態。
今日は歌うよりしゃべりたい、ゆったりやります、と。独奏形態での「prototype」シリーズは今回が今年は最後だそう。

い~や~も~ギターの音でまずやられましたよね。カッコいい…!!

冨塚が歌ってくれたから、と最初に「Ordinaries」。
これがもう…直前にとみさんのカバーを聴いて直後に本家を聴けるという醍醐味満喫で、とみさんがいくぶん速めのテンポで爽やかに歌ったのと対照的にゆっくりと柔らかく滑らかで、同じ曲でこうまで変わるのね…とうっとり聴きました。渡井さんの声、美しくて潤っていて気持ちいい。

なんというか…とみさんが投げた上の句に応える下の句、とでもいうか…しっかり繋がっている感覚がずっとありました。冒頭の「Ordinaries」、そして「俺がこのタイトルの曲を作りたかった」と返歌のようにカバーしてくれたBOYS END SWING GIRLの 「StraySheep」。たくさん、とみさんとの思い出やとみさんへの気持ちも話してくれたこと(やさしい話ばかりでなく、赤裸々に思うところも含めて…「報われない男だな、と思ってた、でも今が一番、報われてると思う」)。
照れくさいんだが、後ろからちょいちょい、とみさんは茶々を入れてて、一度など準備するからMCを繋げ、などと言われて喋ってて、ふたりで一緒に繋がってたような感覚はそういうところからも感じたのかもしれません。

渡井さんがやさしい人だと感じたのは、私達トミヅカダイチファンのことを「昔から応援してる人も、toybeeになってから応援してる人もいるでしょ」と何度も気配りをくれたこと。どんなタイミングからであろうと今のトミヅカダイチを好きなみんな、とちゃんとくるんで語ってくださったこと。古い話が多いから余計に、だったのかもしれません。

ふたりの共通の友達に向けて書いたというやさしさにあふれた「オルター」、凄く染みました。泣いた。
「惑星都市」「天動説」「NEW DAWN」と宇宙、空の曲が多くて、ずっと曲のスケールの大きさを感じていました。
とりわけ「天動説」では、ルーパーを5チャンネルくらい使って複雑に音を組み立てて、弾き語りだけど弾き語りを越える音を作っていて、まさに「Varrentia(独奏形態)」でした。

アンコールはとみさんを呼んでふたりで思い出のLUNKHEADの「夏の匂い」を。
その場でどんなふうに割るかもぱぱっと相談して、軽やかに、しかし、大切そうに。最高でした…!! 

渡井さんに総じて感じたのは、ひたひたと胸の中に潮が満ちて海水が満たされたような、そんなうっとりした心地のするサウンドだなぁということでした。素敵すぎました。
あぁ、また行かねばならぬアーティストが増えてしまった…!
とみさんが対バンする相手はみんなそんな、対バンだからじゃなくても聴いてみたくなる、素敵なアーティストばかりなのでした。信頼。

太陽と月

コラボロンT。ゆうれいくんがびいとくんを食べちゃうデザインも見たかったかも

1、2度、ふたりがステージにいるところを見たとて、ふたりの本当の関係性なんてわかるはずがないのです。

ただ、ふたりの言葉から、長い年月お互いの闘いをお互いの場所で見守ってきたこと、追うものと追われるもの、それぞれへのリスペクト…その思いの片鱗は短い2時間の中でもたくさん、たくさん伝わってきました。とみさんは「憎愛だ!」って苦笑いしていたけれど、多分に「愛」の成分は多かったように思います。ずっと追いかけてきた人が、自分を同じステージに呼んでくれた、その高揚と感謝とが満ち満ちたステージでした。また渡井さんもそれを受け止めて、やさしいけどエスプリの効いたエールをくれていたと思います。

トミヅカはあえて道化を演じている、と渡井さんは言う。

「俺は太陽にはなれなくて、どっちかといえば、月。このたとえはわかってもらえる気がするけど、でもさ、トミヅカは太陽になれる男だと思うんだよ」

この渡井さんの言葉を聴いて、toybeeファンとしてあの場にいたたくさんの仲間達は昨年末、サンストワンマンでとみさんが言った言葉が頭をよぎったんじゃなかろうか。

「俺は太陽にはなれなかった。月なんだ。
でも月の光は深海の奥の奥まで届いて、明るく照らすんだよ。」

英米文学と日本文学(と少年漫画)。手法の違いはあれど、近い感性なんじゃないかととみさんいわく。奇しくも証明された瞬間だったと思いました。

同じようにサンストで切磋琢磨し、インディーズ、メジャーとデビューのルートを1年違いで同じくし、今、新しい形でさらに高く飛ぼうとしているふたり。
そんなふたりの「この先」、いつか「でかいとこでツーマンやるぞ!!」な未来への第一歩、そして次の一歩は今度はバンド形態での共演!!

11/19(火)下北沢CLUBQueにてtoybeeのツアー・day3は「進撃の佐倉」ならぬ、サンスト育ちの4バンドでの対バン企画! 面子がすごいよ、明くる夜の羊、Varrentia、toybee、そしてO.A.(!)にCUTMANS!
これも見逃しちゃいけない夜です。ぜひご参集を!




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うのじ。
いただいたサポートは私の血肉になっていずれ言葉になって還っていくと思います(いや特に「活動費」とかないから)。でも、そのサポート分をあなたの血肉にしてもらった方がきっといいと思うのでどうぞお気遣いなく。