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Asahi in Wonderland

運動をして部屋に帰ると、鍵が閉まっていた。ガチャガチャしてみるが、閉まっているものはしまっているので開きようがない。ルームメイトのジェイコブ、さっきまでいたのに。どこに行ってしまったのか。電話する。

僕:「どこいんの」
ジ:「あー、学部の人たちと飲んでる」
僕:「どこいんの」
ジ:「駅の近くのバー、どうしたん」
僕:「鍵なくて、部屋は入れない」
ジ:「じゃあ取りに来て、せっかくだし一緒に飲んでけば」
僕:「了解、とりあえず行きます」

僕、短パン半袖、それに運動後の汗が冷えてきた。共用キッチンの窓から腕を出して、外の温度をチェック。なかなか寒い。行きたくない。ということで5分ぐらい部屋の前でじっとしてみた。行くのやめよっかなーとか思いながらも、いつ帰ってくるかもわからないし行かなきゃいけないなと気持ちが定まり始める。立ち上がって、ダッシュで寮を出て、そのままダッシュで駅まで。

バーの扉を開き店内へ、しかし見えるところにはジェイコブの姿なし。でも声は奥の方から聞こえる。ドアのない扉の先にもう一つ部屋があるよう。

ジェイコブを発見。赤い。お酒が回っている。アジア人だ。周りの仲間たちも結構盛り上がっている。ジェイコブが僕を発見。手を振ってくる。すると周りのみんなもこちらをみる。なんだか気まずい。

「アサヒです。ジェイコブのルームメイトです」

あー、みたいな感じになったあと、酔っ払った1人のヨーロッパ人が言ってきた。

「お前に関してなんか面白いこと言ってや」

ないし。なんかこのムード嫌だし。は?って感じになってしまい。

「えーっと、鍵の部屋閉まってたからジェイコブが持ってる鍵を取りに来たけど、実は全然ここに来たくなかったんです」

しまった。言わなくてもいいのに。微妙な空気に。そんな時にジェイコブ、ナイスタイミンぐ、鍵を差し出してくれる。ガシッと掴んで奪って、勢いよく回れ右をして撤退。

あちゃー。またやってしまったよ。違和感のある環境に遭遇すると、反射的にやたら徹底的に意思を体現する行動をしてしまう。なんか、後悔とかではないし、あの場所を去れ多こと自体は嬉しかったのだけど、その環境の空気が嫌いなだけで、そこにいる人たちが嫌いなわけではないから、もし誰かが嫌な気持ちをしていたら悪いなと思ってしまう。

されど、鍵があるから嬉しい。早く部屋帰ってご飯が食べたい。駅と寮の間にある公園をまっすぐ走っていく。すると黒い影が横を通り過ぎた。

ん?猫か?シルエットを確認。猫じゃない。あれはウサギだ!!!

僕が進もうとしている道をウサギも走っていく。ウサギとの追いかけっこ。初体験、テンションが上がる。跳び箱を飛ぶように走る後ろ姿は、お尻が大きくて丸い。かわいい。ずっと追いかけていたかったけれども、少しするとウサギはツンのめるように地面の上で勢いを抑え踏み込み、速度を力に変えて、大きめのジャンプをして生垣の中に飛び込んでいってしまった。

バー行かなくてよかった。ウサギと走れたから。

寮に帰れた、暖かい。ご飯をささっとつくって食べて、皿を洗って、シャワーをして、パジャマに着替えて、ベットへ。1日を終えた。

そういえば忘れていたけど、寮の話を少ししようと思う。今日はトイレとシャワーの話。

まずトイレ。徹底的な問題は、便座が冷たいこと。ぬくぬくのシートヒーターが搭載されていない。日本では当たり前なのに。座るたびに飛び上がりそうになる。日本のトイレのクオリティがすごい高いことを知っていたけど、そのクオリティがどれだけ生活に大切なのかは気がついていなかった。暖かい便座っていうのは想像以上に重要で、便座が冷たいと本当にトイレに行きたくなくなる。
例えば、日本のトイレは暖かいから、ギリギリ間に合った時とかには間に合ったこと自体と同時にその暖かさで安心を感じることができる。しかし、冷たい便座は間に合ったところで全然ほっとしない。せっかく間に合ったのに緊張が解けない。どうしようもない。
今、欲しい物の第一位は自分専用のTOTOのトイレ。部屋が狭くなってもいいから欲しい。掃除もするし。

次はシャワー。機能や設備には大きな問題はない。海水浴場のシャワーに似ていて、しっかりとした仕切りがないことに最初は違和感を感じたけど、水圧も十分だし、満足して体を洗えるから慣れれば特に不便はない。
しかし問題は2日目から起きた。お湯が出なくなったのだ。寒い寒い。根本的な問題すぎて閉口。しかし、これは寮あるあるなので仕方ないところもあるだろうとその日の自分を納得させた。前の学校の量でも似たようなことは起きた。水の出とか水温とかは同時に使っている利用者の数に影響を受けるので、タイミングの問題でコンディションが悪いことは多々あるのだ。次の日は大丈夫だろう。
次の日、同じように冷たかった。水の温度は今でもその冷たさを保っている。
3日連続で冷たかった日は、もう流石に文句を言おうと、次の日に受付に伝えようと意気込んだものだったが、4日目にも冷たい水が出てきた時には、この冷たさはもしや挑戦なのかもしれないと思ってしまった。その状態が今まで続いていて、もう少し挑戦に耐えようと思っている。

今回はあまり写真がなくごめんなさい。もうちょっと写真を撮ります。次の回では土井善晴先生へのありがとうを書きます。

続く。

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