ハーマンミラーは、なぜ高級店に出店するのか? カスタマージャーニーについての対話(累積思考FM vol.1)
「累積思考」ってなに?
弘松:皆さん初めまして。株式会社unnameのデザイナー・弘松陸です。25歳、福岡県出身です。
この記事は、2024年から始まった「累積思考FM」というポッドキャストの書き起こしになります。代表取締役・宮脇啓輔との対話を通じ、unnameの価値観をゆるく伝えていくのが目的です。実はこの企画、私が最初に提案したんですよね。
宮脇:そうでしたね。最初は正直、ピンときませんでした。「ポッドキャストって大変そうだな」って思いました。
弘松:確かに。この企画に関しては、前職での経験が大きかったです。10人程度の会社だったんですが、採用強化のためにポッドキャストを活用している企業が周りに多くあって「うちでもできるんじゃないか」って思ったんです。
宮脇:そんな背景があったんですね。
弘松:前職はデザインファームだったんですが、外部からのイメージと内部の実態にギャップがあって。外から見ると「バリバリでキレキレな会社」に見えるけど、実際はもっとアットホームな雰囲気だったんです。
宮脇:わかります。うちも似たようなことがありますよ。5人しかいないのに、20人くらいいると思われることがあったり。
弘松:まさにそういうギャップです。だから、ポッドキャストで会社の本質を伝えられると考えたんです。応募してくる人や応募を迷っている人に、リアルな会社の姿を知ってもらえるんじゃないかって。
宮脇:確かに、業務委託の方が入ってきたときに「めちゃくちゃキレキレの集団かと思ってました」って言われたことがあります。イメージと実態の差は大きいかもしれませんね。
弘松:宮脇さんは最初、ポッドキャストにあまり乗り気じゃなかったですよね。何が決め手になったんですか?
宮脇:そうですね。でも、弘松さんにおすすめされたポッドキャストをいくつか聴いてみて、特に「経営中毒」というのが良かったですね。
弘松:あれいいですよね、経営者の生の声が聴けるというか。
宮脇:そうそう。経営者の等身大の悩みが聴けて、すごく共感できました。自分と同じような失敗をしているのを聞いて、「ああ、みんな同じなんだ」って思えました。極端なことは言わないけど、本当に思っていることを話している感じが伝わってきて。
弘松:確かに、リアルな話が聴けるのがポッドキャストの魅力だと思います。
宮脇:もう一つ、話しながら自分の思考も整理されるんじゃないかって思ったんです。人に何かをフィードバックしているときに、自分自身にも新しい発見があったりします。そういう経験、ないですか?
弘松:あります、あります。話しながら「あ、こういうことだったんだ」って気づくこと、よくありますよ。
宮脇:そう、それなんです。それで「累積思考」という言葉を思いついたんです。結論のない会話を重ねることで、知識や経験が積み重なっていきます。それが自分の成長にもつながるんじゃないかって。
弘松:なるほど。だから「累積思考FM」というタイトルにしたんですね。
宮脇:そうなんです。引き出しが多いと思われる人とか、頭の回転が速いって言われる人って、実は日々考えているんだと思うんです。この「累積思考FM」を通じて、そういう思考の積み重ねを可視化できればいいなって。
弘松:素晴らしいコンセプトですね。正直、最初はタイトルにunname(会社名)が入ってないのでびっくりしました。
宮脇:そうですよね。「直接成果に繋がらなくてもいい」と思ったんです。人と違うことをやらないと差はつかないし、長期的な視点で取り組みたいんですよね。
弘松:そうですね。短期的な成果を求めすぎると、かえって続かなくなりそうですもんね。
ブランドとは「出会い方」「情報の取り方」が大事
弘松:さて、今回のテーマは、宮脇さんの最近の購買体験からカスタマージャーニーについて考えることでしたね。
宮脇:そうですね。年末年始に結構いいものを買いました。具体的には、ハーマンミラーの椅子、エルゴトロンのモニターアーム、それと三菱の冷蔵庫です。
弘松:良いものばかりですね。それぞれの購入プロセスについて詳しく聞かせてください。
宮脇:ハーマンミラーの椅子の話は面白くて。実は、2年前に二子玉川の蔦屋家電で見かけたのがきっかけだったんです。当時は30万円くらいで「そんなに高い椅子はいいや」って思ったんですけど、最近肩こりがひどくて。それで弘松さんに「いい椅子知らない?」って聞いたら「ハーマンミラーいいですよ」って言われて。
弘松:覚えてます。私、ガジェット好きでよく調べてるんで(笑)
宮脇:そうそう。それで改めてハーマンミラーの店に行ったんですけど、アーロンチェアというのがあって。これがめちゃくちゃ座り心地良くて。店員さんに聞いたら、30年前に発明されて、海外の博物館に初号機が飾ってあるらしいんです。
弘松:そんな歴史があるんですね。
宮脇:そうなんです。で、これを買ったあと思ったのが、ブランドって「どの場所で商品と出会うか」、「誰がおすすめしてるか」が大事なんだなって。
弘松:まさにカスタマージャーニーですね。
宮脇:そうなんです。例えば、ユニクロが駅の改札内に小さい店舗を出してるの知ってますか?
弘松:ありますね。最近増えてきた気がします。
宮脇:最初に見たとき「なんでこんなとこに」って思ったんです。でも今思うと、新商品を見せたり触れる機会を作ってるんですよね。
弘松:認知経路としての役割が大きいんですね。
宮脇:そうです。ハーマンミラーも高そうな場所に出店してて、それが「間違いない椅子」というイメージにつながってるんです。ネットで比較検討する人もいますけど、こういう体験がある人にはそれ以上の説得力があるんじゃないかなって。
弘松:確かに。実際に見て、触れて、体験するっていうのは大きいですよね。
宮脇:はい。で、エルゴトロンのモニターアームなんですけど、これは別の観点が面白くて。
弘松:どんな観点ですか?
宮脇:Amazonベーシックという、Amazonの自社ブランド製品があって。エルゴトロンとほぼ同じものを少し安く売ってるんです。
弘松:ああ、聞いたことあります。OEM生産してるんですよね。
宮脇:そうそう。で、正直迷いました。数千円の差なんですけど、昔の自分ならAmazonベーシックでいいやって思ってたと思います。でも今回は「数千円をケチって後悔したくない」って思って、結局エルゴトロンにしました。
弘松:なるほど。品質と価格のバランスの判断が難しいところですよね。
宮脇:はい。高くて駄目なものってあんまりないじゃないですか?特に家電とか。だから「失敗したくない」って思ったんです。
弘松:わかります。長く使うものだし、毎日使うものですもんね。
宮脇:そうなんです。で、最後の三菱の冷蔵庫なんですけど、これが一番面白くて。私は、三菱が冷蔵庫を作っていること自体知らなかったんです(笑)。
弘松:えっ、そうなんですか?
宮脇:そうなんです。で、新宿のビックカメラで見てたら、店員さんが詳しく説明してくれて。省エネだというのと、瞬間冷凍みたいな機能があるというのが決め手になったんですけど。お肉とか魚を瞬間的に凍らせて、でも完全には凍らないから、すぐ調理できるみたいな。タンパク質重視の人には嬉しい機能らしくて。
弘松:なるほど。でも、どうしてビックカメラだったんですか? 地元の電気屋さんとかじゃなくて。
宮脇:実はね、地方の家電量販店でも見たんですけど、接客があんまりよくなかったんです。聞きたいことを聞けなかったというか。競争が激しいからかもしれません。でも、こういう経験を通して、カスタマージャーニーの重要性を実感しました。商品との出会い方、情報の得方、最終的な決め手、全部大事なんだなって。
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不動産探しから学ぶカスタマージャーニー
弘松:そういえば、私も最近カスタマージャーニーについて考えることがあって。今、引っ越しを考えてるんですけど。
宮脇:へえ、どんな感じで探してるんですか?
弘松:実は、YouTubeで「OTOGI不動産」っていう不動産屋さんの動画を見つけたんです。東京の地理とか不動産選びのコツをわかりやすく説明してて。例えば、山手線の地図を使って「ここに新宿があって、ここに東京駅があって」みたいな感じで。
宮脇:面白そうですね。
弘松:それがすごくわかりやすくて。「皇居から離れれば離れるほど家賃が安くなる」とか、「自分の職場と趣味の場所を結んだ中間点で探すといい」とか。
宮脇:なるほど。確かに参考になりそうです。
弘松:で、実際に問い合わせてみたら、普通の内覧の前に「サンプル内覧」っていうのをやってくれるんです。自分の希望を伝えた上で、それに近い物件を何件か見せてくれるんですよ。でもそこで決めるわけじゃなくて、自分の潜在的なニーズを探るための内覧なんです。
宮脇:面白いですね。どういう効果があるんですか?
弘松:例えば、「2LDKがいい」って言ってても、実際に見てみたら「広めの1LDKでもいいかも」とか、「2階以上がいい」と思ってても1階の物件を見て考えが変わるとか。そういう発見があるんです。
宮脇:なるほど。「わからないことがわからない」状態だからですね。
弘松:そうなんです。こういうサービスがあるって知って、もう他の不動産屋さんには行きたくないくらい。
宮脇:それはすごいですね。YouTubeで認知して、実際のサービスで感動して、口コミで広がるという。理想的なカスタマージャーニーですね。
弘松:そうなんです。最初はYouTubeで東京の地理を知るところから始まって、最終的には具体的な物件を探すところまで。長期的な視点でカスタマージャーニーを作ってるんだなって。
直接的な成果を、求めすぎない。
宮脇:この話を聞いて、うちの事業にも応用できそうですね。長期的な視点でカスタマージャーニーを設計する必要がありそうです。
弘松:そうですね。直接的な成果を求めすぎずに、長期的な関係性を構築していく。
宮脇:例えば、うちのマーケティング支援サービスでも、初めからすぐに契約を取ろうとするんじゃなくて、まずは潜在顧客の悩みや課題を深く理解するところから始めるとか。
弘松:なるほど。セミナーやウェビナーを開催して、業界の課題や最新トレンドを共有するところから始めるとか。
宮脇:そうそう。そういった情報提供を通じて信頼関係を築いていって、実際にサービスを検討する段階になったときに、自然と選んでもらえるような関係性を作るんです。
弘松:まさにOTOGI不動産のYouTube戦略みたいですね。
宮脇:そうですね。この「累積思考FM」も、そういう長期的な視点で続けていけたらいいですね。直接的な成果を求めるんじゃなくて、リスナーの方々と一緒に考えを深めていけるような場にしたいです。
弘松:同感です。今回の対談で、カスタマージャーニーについて多角的に考えられて本当に良かったです。
宮脇:はい、こういう対話を通じて、自分の考えも整理できたし、新しい気づきもありました。まさに「累積思考」ですね。
マーケティングの本質と「累積思考」の関係
弘松:カスタマージャーニーって結局、顧客との関係性構築のプロセスですよね。大切なのは、一方的に情報を押し付けるんじゃなくて、顧客の声に耳を傾け、対話を重ねていくこと。それって「累積思考」の考え方とすごく近いですね。
宮脇:なるほど。確かにそうですね。単に商品やサービスの情報を伝えるだけじゃなくて、顧客と一緒に価値を作っていくような感じですか?
弘松:そうです。例えば、ハーマンミラーの椅子の例で言えば、単に「これは座り心地がいいです」って言うんじゃなくて、お客さんの仕事のスタイルや体の悩みを聞いて、一緒に最適な椅子を見つけていく。そういうプロセスが大切だと思うんです。
宮脇:わかります。三菱の冷蔵庫も、ただ機能を説明されただけじゃなくて、自分の生活スタイルに合わせて提案してもらえたら、もっと納得感があったかもしれませんね。
弘松:そうそう! そして、そういった対話を重ねていくことで、顧客の潜在的なニーズも見えてくる。それが新しい商品開発やサービス改善にもつながっていく。
宮脇:まさに「累積思考」ですね。対話を積み重ねることで、新しい価値が生まれていくんです。
弘松:そう考えると、このポッドキャストも、リスナーの方々と一緒に考えを深めていく場になれば理想的ですよね。
宮脇:そうですね。例えば、今回の対談を聞いてくれた人が、自分の仕事や生活の中でカスタマージャーニーについて考えるきっかけになるかもしれません。
弘松:そして、そこから生まれた新しい視点や疑問を、また次回のポッドキャストで取り上げる。そうやって螺旋的に思考を深めていける。そうなれば面白いですね。
宮脇:次回以降も、こういった深い洞察と新しい気づきがある対談ができることを楽しみにしています。
弘松:ありがとうございました。これからも「累積思考FM」をよろしくお願いします。
宮脇:こちらこそ、ありがとうございます。では、また次回!
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