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帯広にいる!
北緯42度55分、東経143度11分、帯広にやってきた。
昨日早朝、東京発のはやぶさに乗った。お盆休みの東京駅は笑っちゃうほどの混雑だ。新幹線の中で軽く食べたいときによく使うベックスコーヒーが、コミケの旬ジャンルの誕生日席スペースみたいだった。最後尾札を見て即あきらめて、自動販売機で買ったつめたいミルクコーヒーと、ホームのキヨスクでてきとうなサンドイッチを買ったら、もう出発の5分前になっていた。
4時間かけて走る北海道新幹線の終着駅は新函館北斗駅。比較的新しめのJRの駅によくある、壁面がガラス張りで改札を出ると目の前に景色がどーんと広がるあかるい駅舎だ。しかしまあ、着いたー!と思って外に出ると(こういうときにいちいちたまの真似をしてしまう病気が治らない)、知っていたことではあるけど、相変わらずでっかいレンタカーと東横インしかない。ここただの途中駅なんで、勘違いしないでよね、という主張すら感じる。はやく札幌まで新幹線で行けるようになるといいな。
と、なんにもないみたいなことを書いたが、新函館北斗駅にはかわいいやつがいる。せっかくなので今回もわざわざ外に出て会いに行った。
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飲食店の数もだいぶ限られている中、なんとかカフェに席を確保してホッキのなんかと、あとはせっかくなのでサッポロクラシックを1杯いただいた。鉄道旅はこれができるから良い。そうこうしているうちに特急北斗の改札時間になって、在来線のホームへと向かった。
特急北斗は函館から、ぽつぽつと離れて存在するいくつかの町をつないではるかな札幌をめざす列車だ。魚の尾びれみたいな渡島半島の内側の輪郭をなぞるようにして、ずっと右側に海岸線を見ながら原生林を走り抜け、苫小牧からはかっきり左折して内陸を北上する。わたしはこれに乗り3時間かけて札幌のやや手前、南千歳まで行き、そこから別の列車に乗り換えて東に向かう計画を立てていた。東京から新函館北斗までで4時間なのにね。かなりの速度を出していることははっきりと感じるのに、一向に進まない。人間に対して北海道が大きすぎる。しかもこの特急が、まあ、むちゃくちゃ揺れるから、軽い気持ちで飲んだビールがけっこう回ってしまった。
南千歳駅から本当はそのまま東に向かう石勝線に乗り換えればいいのだが、どうしても行きたくなってしまって、新千歳空港まで足を伸ばした。だって南千歳から新千歳空港まで4分なんだもの。これまでの7時間に比べたら誤差だった。この空港については、つい先週愛をさけんだばかりだ。意味がわからないくらい読んでもらえて、これで新千歳空港利用しようって人がひとりでも増えてたらいいな。
かくいうわたしも今回は空港自体を交通機関として利用したわけではないのだけれど、こうして立ち寄るのにもすごく良い場所なんです。
今回の行程、わたしが空港で自由にできるのは約1時間。迷っている暇はない。並ぶことが確定している一幻も松尾もはなから候補からはずして、まずはスープカレーのお店、キタカレーへ。スープカレーはわりと食べるけど、ポークカツが入っているのははじめてだった。衣にカレーが染みて香ばしくて、よかったな。
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提供がとても早かったのとわたしがはらぺこだったおかげで、30分くらいで店を出ることができて、あともうひとつくらい何か食べておきたいと、ミルクスタンドでソフトクリームを注文。コーンが黒で、ソフトは真っ白で絞り口が丸く、見た目の情報量が極限まで減らされた感じだった。カレーのあとにさっぱりしたソフトクリームが美味しくて、10分もかけずに食べ終えた。
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新千歳空港RTAを終え、わたしはだいぶ余裕をもって南千歳に戻ることができた。新千歳空港、やっぱりめちゃんこ便利! 無理矢理にでも立ち寄れてよかった。
新千歳空港からは青春18きっぷを使う計画にしていた。18きっぷにはいくつか特例区間というのがあって、基本は普通列車とか快速とかにしか乗れないのだけれど、特急しか走っていない区間に関してはお情けで乗せてもらえる。わたしが行こうとしている新夕張から新得までの区間がそれに該当する。
南千歳から新夕張へ向かう列車に乗り込んだときはまだ明るかったし、まあまあ乗客がいて心細くはなかったのだが、途中から列車が遅れはじめて、5分遅れで終点の新夕張駅に到着。大きな山に囲まれだんだんと暗くなっていく無人のホーム上、じわじわ緊張感が生じはじめた。
暗いし、人の気配がないし、日が落ちると本当にすとんと気温が下がるからなんなら寒いし、特急の遅延を告げる放送の聞き取りにくさも相まって、もしなにかの不都合があって特急が来なかったら、なんていう想像をしてしまう。駅はわりと大きくて、なのに無人なもんだから、知らない間に世界が終わったか……?というような、The Backrooms的な怖さがあるのだ。結局10分遅れで特急おおぞらが入線し、内心かなりほっとしながら乗り込んだ。世界はまだ続いている。
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特急はわりと混んでいて、おこぼれで乗せていただいているわたしはほぼデッキで過ごした。これもまたかなり揺れる列車だった。
占冠、トマムを通り過ぎて新得駅でまばらな乗客とともに降り、他の人たちがほぼ全員改札を出ていく中、人気のない向かいのホームへ渡ると、そこには一両編成の列車がしずかに停車していた。乗り換えには30分近く余裕があったので、特急が遅れていても今回はまあまあ安心だった。最終的に、車両内にはわたしを含めて4人が乗っていた。運転士さんも含めてだ。
そうこうして、今、帯広だ。昨日の朝の6時半から移動を続けて、帯広に着いたのは昨夜21時半。ずいぶんと遠くに来た。ぜんぶ、これのためだ。
六花亭帯広本店 喫茶室
前置きが長くなりすぎたが、ここに来るためにどれだけの行程を経たか、ということを書いておきたかった。限定メニューであるパンケーキが食べたくて、それではるばる帯広に来た。と、このワンセンテンスで済ますべき話なのだが、はるばる、なんて4文字で省略できるほどわたしは人間ができていない。1記事で書くテーマはひとつに絞りましょう、とのnote初心者用の指南を無視して長々と書いたらやっと気が済んだので、ようやく本題に入る。
六花亭の喫茶室は午前11時台に既に満席で、ウェイティングボードに名前を書いてから30分くらい待ったのち2階に案内された。このパンケーキの名称は「帯広の森」という。見たところは特に森っぽくはない。
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ナイフを通してもフォークで刺しても手応えがなく、口に入れた瞬間から存在感が消えていく。ただ、何かとてもおいしいものを食べた気がする、という感覚だけが残る。わたしは8月頭に日本橋で開催中の「行方不明展」に行ったのだけれど、確かにいたはずなのに存在が消えてしまった誰かを探している、という作品がいくつか展示されていて、このパンケーキがまさにそれだった。行方不明は帯広の森で起こるのだ。
どうにか記憶に焼き付けようと思いながら食べていると、焼きたてのクロワッサンもいかがですか、と白いユニフォームの店員さんに声をかけられた。こういうのには乗るに限る。クロワッサンはけっこう大きくて、ぱりぱりなのにバターそのものみたいな味で、これも本当に美味しかった。
雨が降る予報だったから、あまり無理はしないでのんびり過ごそうと緑ヶ丘公園まで歩いて行き、ぶらぶらしていたらでっかいリスを見かけた。ピョェーッ、みたいな高い声で鳴きながら目の前を横切り、そのまま木の幹を一気に登っていった。公園まで歩いた理由は一応ちゃんとあって、とにかくすこしでも腹ごなしをしたかったのだ。ほら、計画になかったクロワッサン行っちゃったから。だだっぴろいグリーンパークのベンチで東京から持ってきた新潮9月号を読んでいたら急にこまかい雨が降ってきて、あわてて木の下へ逃げ込むサッカー少年たちを見ながら次の目的地へ移動。
十勝トテッポ工房
六花亭で味をしめて、もう一軒くらい甘いものを食べに行こうと思って調べたらわりとすぐに出てきた。お菓子屋さんに併設されているカフェでケーキでも食べようと思って場所を調べていたのだが、雨がどんどん強くなるので迷わず雨宿りができて助かった。駐車場にもひっきりなしに車が入っていくから、人気なのだな、と期待が高まる。
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シマエナガのケーキが大変かわいくて、ショーケースを見たらもう注文しないわけにいかなかった。ずっとこっちを見られていると心が痛んで食べられないため、そっぽを向かせて左からいった。顔がついた食べ物を食べるときは、心の中で「イタイヨー」と裏声のアフレコをすることで罪悪感と向き合うふりをしている。ふわふわのレアチーズの中にブルーベリーが仕込んであって美味しかった。食べちゃってごめん。
上には書かなかったが、じつは朝から宿でホエー豚の豚丼もしっかり食べてしまっている。北海道旅行は胃袋との戦いだ。せっかくこうして旅の途中なので、余力があったら、明日もnoteを書こうと思う。