チームを伸ばす10の視点⑨賞罰~ほめたたえるチームには勢いが
どんな人であれ、自らのがんばりを賞賛されるのは嬉(うれ)しいものだ。認めてもらえたという経験は次なる活動のエネルギーになる。がんばった人をほめたたえるチームには勢いが出る。
賞賛をするとき注意すべき点は、形式的にならず、心からの感謝を伝えること。そして、時間を空けずに素早く対応することだ。
さらに、不公平にならないことも大切だ。チームとして何かを成し遂(と)げる際、そこには必ず陰での労苦を引き受けている人がいる。日のあたる場所でがんばっている人は多くの人から賞賛されるが、陰の苦労に気づく人は少ない。だからこそリーダーは陰の苦労に徹している人を、最大限にほめたたえなければならない。
「この人は自分のことを見てくれている」―この信頼感が各人のやる気を生み、さらなる原動力となっていくのだ。
賞賛とともに罰することも、チームには必要といえる。「泣いて馬謖(ばしょく)を切る」という故事があるが、良いことは良い、悪いことは悪いと的確に指摘していくリーダーがいなければ、チームはなれ合いの集団になってしまう。
ただし失敗を指摘する際には、相手を責めるような言い方はいけない。失敗のなかにある「成功につながる因」を見つけ、励ましていくことも重要だ。
■選手を信じる
6年ぶりに優勝したプロ野球ヤクルトスワローズ。前年の最下位の結果を覆す大勝利の1年であった。様々な要因はあると思われるが、1つに選手が活躍するための環境作りが要因であろうと思う。一昨年秋に、新たに就任した高津監督は選手たちを見てこう感じたと言う。「生き生きとしていなかった。何かに縛られているような重圧を感じながらやっていた。みんながやる気になって、元気にグラウンドに立った中で野球をやりたいと思った。」
監督(リーダー)には様々なタイプがあると思う。高津監督の場合、コーチ陣とともに同じ意識を持ち、目指すべきチーム作りを選手との信頼関係に置いたのではなかろうか。ヘッドコーチの宮出コーチ曰く「決してみんなの前で怒鳴ったり叱ったりする事はしない。話がある際は1対1で伝えた。選手に寄り添い気持ちよくグラウンドに送り出していた。」と。一人ひとりを尊重し、選手としての能力や可能性、一人の人間として尊重しているからこそ、そのような考え方になるのではないだろうか。
選手が結果を出した際に、自分も同じ立場の選手のようにベンチから飛び出し、喜び称えている姿からは、コーチが上で選手は従うものといった上下関係は感じられない。しかし、優勝後、選手たちの口から出たのは監督に対する尊敬や感謝の言葉だった。
カタチを越えた人間関係の中で、チームは伸びていくものだとあらためて感じる。
Check Point!
□チームに功績を賞賛する雰囲気はあるか?
□陰の苦労に徹している人をたたえているか?
□上下ではなく信頼を基にした関係性は築けているか?