烏山ヲバ利(2)

私の話をしよう。現在、神職についている。月明神社にて仕事を全うしている。
私は生まれつき、すごくいい能力でものすごく、かなり嫌なものを持っていた。君は腕は何本かい?もちろん2本だろう。でも私は3本なのだ。胸に垂れ下がったもう一つの腕。怖いもんじゃない。魔界のもんでも何でもない。つい千年前なら魔物だ妖怪だなんだと騒ぎ、私を殺すだろう。でも違う。私の兄弟なのだ。私たちは結合双生児なのだ。三本目の腕というのは兄の一部。
私についているのに、私の脳では兄の腕を動かせない。なぜなら、私の体内には残った兄の脳が三本目の腕を動かしているのだ。生まれたときは切除しようとしたらしいが父母が嫌だと懇願したらしい。普段は動かなくフラフラとぶらつく兄の腕だが、危機的状況になった時だけ力強く動くのだ。命からがら助かったという状況がよくあった。それは私のパワーで助かったのではなく兄の腕の力で助かったのだ。だが、それと共に私の頭がひどく痛くなる。苦しいというほどだ。そのせいで何度気を失いそうになったことか…
 そんな私ももう三時十七歳になりました。私は、明神神社のいわゆる神主をやっている。祭っている物は神の頭と言われるもの。神と言っても人を平気で祟るのでその頭は絶対に見てはならないと言われていた。
 私が神社の庭などをほうきで掃いていた。子気味のいいリズムで、かつてキレイだのなんだの言われていた紅葉の足跡を、また新しい綺麗にすべくごみのように扱い、自然に介していた。すると、グゥンという自然では全く聞かないエンジン音が耳に響いた。どこかに止まったらしくどんどん近づくエンジン音はなくなり、代わりに少しづつ近づいていく足跡が響いた。私の目に映るのは、黒い影。大柄な黒い影であった。どすどすと近づく影。本当に大柄な体に見えた。そして、全体像が分かった時、その男はこう私に聞いた。
「ここの神社には腕が三本の神主がおる、と聞いた。」
私だ。私のことか。名指しで言われたようにぞくっとした。ふくよかな体型にそれを隠すほどの大きな黒いロングコート。なんだろう、頭がひりついてきた。
「私のことでしょうか。三本の男と言われるより烏山と言ってもらえば有難いです。」
「あぁそうかい。烏山さん。あなた腕が三本というのはぁ本当でしょう?」
記者か。何をしたのか意味が分からない。
「そうですが…ところであなたは何をしに来たのですか?」
ひどく怖い。相手が何を言うか分からないので胸が痛みひどく恐ろしい。
「吾輩の家でははある腕を祭っているのです。今世では見せれませんので、人目の付かないところで見せたいのです。」
「吾輩」という不思議な一人称を使ってきた。
「その祭っている腕と私は関係あるのですか?」
「あなたが生まれた時間をあなたは知らないのですか?ならば少し説明させてください。なので本殿に入りたいのですが…」
男の話はひどくわからず、聴いてみたいという大きい好奇心に駆られてしまった。本殿にあのロングコートの男を入れることにした。
「申し遅れました。吾輩の名は金城佐夫津(きんじょうさおつ)と申します。」
金城さんがそういうと名刺をくれた。その名刺は筆で書かれたようで、和紙に書かれていた。
「金城さんですか。もしかして、記者の方ですか?」
以前にも三本の腕を持つとして私は記事になった。金城さんは全然記者のような恰好はしてなかったのだが一応の聞いてみる。
「いえ、記者というより個人的に来たのです。それに、これを記事にするのはかなりリスキーです。」
リスキー?確かに今世では見れないだとか意味不明なことを言っていたな。
「今世では見せてはならぬと言っていましたが、今現在は見れない、ここでは見せれぬということですか?では前世や来世に無理やり変えるということですか?」
「うーん。今のこの世を前世や来世に帰るというのは現実的にはかなり難しい。新幹線に乗れば0.00001秒ほどの未来には行けますが、タイムマシーンやそんなもんは今できません。」
「ならば、どうすればよいのですか?」
「今、吾輩たちが座り喋っている今世を一つの空間とした時、この空間では腕は見せれません。ならば、人目の付かない新しい空間や皆のわからない空間に入ればいいのです。」
何を言っているのだ。人目の付かない部屋を作るならわかるが空間を作るとは何を言っておんのか。
「え、どういうことですか」混乱してそういった。
「うーん。吾輩も明確にわかっているのでなく、儀式的に、感覚で理解しているのでどうともこうとも言えんのですが…」
そういうと金城さんはバックから折りたたまった青い紙を出してきた。青い紙は麻縄で括られていた。そこには劣化した半紙に「模擬空間像」と書かれていた。

いいなと思ったら応援しよう!