成田三樹夫と映画② 歌麿 夢と知りせば

「歌麿 夢と知りせば」は1977年日本ヘラルドによって配給された、実相寺昭雄監督による江戸時代を舞台にした時代劇映画です。主演は岸田森(!!)、共演には成田三樹夫を始め、岸田今日子、岡田英次、山城新伍、内田良平、中丸忠雄、緑魔子、平幹二朗となかなか渋好みかつ豪華なメンツが揃っています。

腐女子な私は、ツイッターで「岸田森が役人に殴られる成田三樹夫を、抱きついてかばうシーンが萌える」とのツイートを発見いてもたってもいられず中古のDVDをアマゾンさんで落として鑑賞しました。

私はこの作品が実相寺デビューでしたので、まずはその奇特な画面構成、カット割りの数々にそりゃまあ驚きましたよ。ななナンジャコリャぁあ?!(優作風味)自分が今まで見てきた映画とはかけ離れた映像美学に支配された映画でしたので見終わってからどっと疲れました。しかも2時間20分。
それから濡場の多さも非常に疲れました。とにかく濡れ場、しかも女性が痛めつけられるような痛々しい濡れ場が多い。また出てくる女性みな超がつくほどの貧乳で、ぽっちゃり、むっちりな概念からは程遠く、あばらや胸骨が浮き出るような貧相な体つきがさらに痛々しさを誘い、いっそう心のちんちんがぐったり(巨乳好き)。
と言ってもこれは実相寺昭雄監督の狙いでもあると思いますのでね、時代に翻弄され消費される悲しき女性たちの運命、その悲しさ、惨さ。そういう意味ではすごく成功している(ダジャレじゃないよ)濡れ場でもあったと思います。単にこれ好みの話っすね

まあそんなことはどうでもいいんです。

成田三樹夫がカッコよければ何の問題もないのです。成田三樹夫さえかっこよければどんな映画でもネ申映画なのです!!!!!!

そしてこの映画の成田三樹夫はかっこ良かったかと言うと・・・


めちゃくちゃかっこ良かった!!!!!!!


いやあ本当にかっこ良かった(2回目)です。マジカッケー(3回目)まじ渋い。前回の座頭市地獄旅からは12年後の成田三樹夫なのでいい具合に年を重ねて滋味が全体から滲み出てるんですねえ。
地獄旅の頃のミッキー(30歳!!)はツルッとしてみずみずしくて、渋いんだけど新鮮な色気があるって感じだったんですが、42歳のミッキーはもう、理想のおじさまで・・・っきゃ❤️抑制の効いた男臭さ、気品、脂が乗ってて包容力もあってどっしり構えている安心感。これぞ理想のお父さん、もしくは愛人にしてもらいたい男No. 1(ウンカス調べ)の色気!
いやもう、私は気高き腐女子のつもりなんで男性を異性として認識するとかそういうことはしたくないと心に努めて思っているのですが、そんなリミッターぶっ飛ばすミッキーの悩ましい成熟したお色気・・・熟れてるよぉあんた^^

成田三樹夫は江戸の大版元・蔦屋重三郎を演じていて、実際の出演シーンは4シーンくらいしかありませんが、これがまあ圧倒的存在感でかっこいい。
小林昭二演じる権力をかさにきた小役人にめちゃくちゃ嫌味な俳句を飛ばす最初の登場シーンもかっこいいし、岸田森演じる歌麿の絵を「女が描けていない」と厳しく言い渡すシーンも厳格な雰囲気と歌麿にかける期待の大きさがにじみ出ていて素晴らしい。

こう言う複雑な演技をしてるミッキー・・・しみじみいいなと・・・。顔は非常に冷たい作りのミッキーですが、体内はマグマのごとく熱いということを確認させてくれる演技というんですか、ミッキーが主人公サイドの人間の時は割とそう言ったツンデレ気質なキャラクターが似合うと思いますはい。


特に素晴らしかったのが物語も終盤。享保の改革を断行する松平定信(仲谷昇!)が浮世絵や歌舞伎をお上に反抗する思想を持ったものとして禁止したため、歌麿の浮世絵を出版販売する蔦屋重三郎もその家財を没収の上、罪に服せよとのお達しが下されます(もちろん岸田森演じる歌麿にも厳罰が)。

多くの枕絵が没収され焼き払われ処分される中、ついに成田三樹夫がブチ切れます。

「何故ですかいお役人様・・・!女と(言葉を詰まらせ)・・・女と男の楽しみが・・・お役人様には気に入らねえんですかい!」

「そんなものが世を乱したりしやしませんよ!世の中乱してるのは・・・

あんたたちじゃないですか!」


成田三樹夫一世一代の大芝居、痛切な叫び。それまでは抑制の効いた渋く重厚な我慢の演技を見せていたミッキーが満を持してその持てるパワーを爆発させた瞬間でした。しかしただ怒鳴り散らすのではなく、そこには権力に押しつぶされていく人間の悔しさと反抗心とがにじみ出ている・・・。

そして最後の、小役人小林昭二の折檻にもめげず押し殺した、しかし大きな怒りを滲ませた「あんたたちなんですよ・・・」というセリフ。私はやはり敗者が好きなんですかねえ。成田三樹夫は主人公サイドに回っても敗者なんですねえ。悪役が敗者になるのはこりゃまあしゃあないですが、うーん敗者。しかしかっこいい。哀愁漂ってます。
仁義なき戦いの松永弘が歌麿のミッキーの演技に近いと思いますが、年も経てるせいかこちらの方が貫禄はあったような気がします。あちらはあくまで兄貴、蔦屋重三郎はいわば歌麿ら文化人の親玉ですから。確かな目利きとしての鋭さと、文化人たちを背負って立つ男の迫力が、今作のミッキーにはありました。いやあ本当にかっこ良かった。

あ!三樹夫語りですっかり忘れていましたが、私が見る気になった

岸田森が殴られる成田三樹夫を抱きついてかばうシーン

ちゃんとありました!!!でも想像と違っていましたね。私は成田三樹夫がリンチも同然に役人たちに袋叩きされ傷付き倒れている(重要なんです腐女子的には!)のを岸田森が抱きつき身を挺して守るものと勝手に妄想してましたので、少し期待を裏切られました。ウタツタを期待していたらツタウタぽかったと言う(わかる人にだけわかれば良い)。でもそんな事は良いんです。そこ何度見直しても萌えますもん。

本編でのそのシーンって歌麿(岸田森)が必死に縋り付くように蔦屋(ミッキー)を押さえ込むんですけどその姿がね…なんか健気でね…ツタウタを期待してたらウタツタ(?)と思わせてのウタ→ツタだった!みたいな(わかる人にだけわかればry)

その点は本当に岸田森に感謝です。キモカワイイんですよね、仕草が。生き生きしてないのに生き生きした芝居をするギャップっていうのかな。すごく絶妙な演技をする人だなあと思います。その抱きつくシーンも。

岸田森を知ったのはこの映画がきっかけだったんですよね。第一印象はなんだか生気を感じない俳優さんだな(ファンの方ごめんなさい)。でも正直言っちゃえば岸田森の幽霊のような現世にいない感じが、今作の夢ばかり追いかけて現実に馴染むことができない歌麿像にぴったりでしたので、適役だったなあと思います。ちなみに岸田森で一番好きな役は傷天の辰巳さんですかね。沖縄決戦の軍医も良かった。彼も早世が悔やまれる俳優ですが、今作では成田三樹夫との掛け合いもあり、非常に満足です。


現在ではDVDは絶版でありなかなか視聴が難しい作品ではありますが、岸田森はカルトな人気がありますし、また其の内どこかの名画座でかかる気がします。ぜひその時は大画面でご覧下さい。広瀬量平の音楽も白眉であります。サントラ欲しいなあ・・・

それではまた!


余談ですが、昔NHKで蔦屋重三郎が山形勲で、歌麿だか写楽が佐藤慶、共演に南原宏治も出てるという神がかったドラマがあったようですが、これも見たいな。

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