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自分で選んでる人生の人
むかしむかし、ある村に、選路(えらびじ)という若者が住んでいました。選路は、自分の人生のすべてを、自らの意思で選び取っていく人でした。
村人たちは「こうすべき」「ああすべき」と、周りの声に従って生きることが多かったのですが、選路は違いました。
進む道を選ぶときも、
「これは私が選んだ道」と胸を張り、
仕事を決めるときも、
「これは私が選んだ仕事」と誇りを持ち、
人との出会いも、
「これは私が選んだ縁」と大切にしました。
時には、選択が間違っているのではないかと不安になることもありましたが、選路はいつもこう言いました。
「たとえ失敗したとしても、それは私が選んだこと。その結果も、しっかりと受け止めていこう」
ある日、村の長老が選路に尋ねました。
「自分で選ぶということは、時に孤独で怖いことではないかね?」
選路は穏やかな笑顔で答えました。
「はい、時には不安になります。でも、自分で選んだ人生だからこそ、どんな結果も受け入れられる。それが私の幸せなんです」
後に選路はこう語りました。
「人生は、選択の連続。その一つ一つを、自分の意思で選んでいく。それは時に難しいけれど、それこそが本当の意味で生きているということなのかもしれません」
そして「己が選びし道は、己が人生」ということわざが、この村から広まっていったとさ。
めでたし、めでたし。
と思う2025年1月27日11時02分に書く無名人インタビュー1008回目のまえがきでした!!!!!
【まえがき:qbc・栗林康弘(作家・無名人インタビュー主宰)】
今回ご参加いただいたのは 生年月日 さんです!
年齢:20代後半
性別:男性
職業:不詳
現在:どうにかして予測不可能性のある時間や行動を、味わってもらう機会を作れないかなって。
toki:今、何をしていらっしゃる方ですか?
生年月日:今はめちゃくちゃ無職ですね。先月の末に仕事を退職して、12月中は有給消化しながら、フリーでできる仕事はないかなってうろちょろしていて。でも、なかなかやっぱり個人で仕事に繋がる機会っていうのが得られてない状況で、今慌てて仕事探しをしてるような状態です。
toki:以前はどんなお仕事をされていたんですか?
生年月日:編集の仕事をしてました。Webと雑誌の編集ですね。
toki:お仕事を辞めようってなったのは、何かきっかけがあったんでしょうか?
生年月日:父親が自営業で家の中にサラリーマンがいなかったので、新卒のときから、サラリーマンとしてうまくやっていく自分の姿が全く想像できなかったんですよ。だから、独立したい願望は昔からあったんですよね。
ちょうどその頃、会社の状況もちょっとあんまり良くなかったので、ちょうどいいタイミングだと思って。もし自分の力だけで仕事を得られるのであれば、1回チャレンジするだけしてみようと思って辞めた感じです。
toki:実際辞めてみて、最近の調子はいかがですか?
生年月日:そうですね、当然無職としての焦りはありつつも、なんていうんだろうな。メンタル的にはそんなにカツカツしてない感じで。
toki:焦り以外の感情って、言葉にするとしたらどんな感情なんですか?
生年月日:解放感ですかね。表裏一体だと思うんですけど、その時々の自分の心の居場所によって、自由と見るか、不安と見るか、って感じなんですよ。自分を取り巻く状況は変わってないんですけどね。不思議なもんだなと思いますけど。
toki:不安と、それ以外のプラスの感情との割合も、その時々で変わっていく感じなんでしょうか。
生年月日:そうですね。多分、自分が思ってるよりも自分が楽観的なんだなって感じていて、開放感みたいなのを感じてる時間の方が長くはあるんですけど。たまに「そういえば仕事ないんだよな」みたいな感じで不安を感じることがありますね(笑)。
toki:なるほど、ありがとうございます。
ちなみに最近は、どんなことをして日々を過ごしていらっしゃるんですか?
生年月日:今年に入ってからは、求人に応募するのと同時に、「散歩と雑談」ってサービスを始めました。なので、その告知をnoteやYouTubeでしたり、実際にその視聴者さんと散歩に行ったりっていう感じですね。
toki:「散歩と雑談」はどういうサービスなんでしょう。
生年月日:ものすごく単純なサービスです。応募してくださった方に場所を指定してもらって、集合場所に私が行って、そこから30分間、目的とか、目指す場所を決めずに散歩しながら会話するっていう。そういうサービスです。
金額は設定してなくて、終わった後に「価値を感じてくださった方は寄付をお願いします」みたいな形で今はやってますね。
toki:「散歩と雑談」のコンセプトというか、これを通して何か目指したいこととか、あるんでしょうか。
生年月日:昔から自然が好きで。特に昆虫を捕まえるとか、昔から好きで今も好きなんです。自分にとっての自然っていうのは、生い茂る木々とか、そういう感じではなくてもっと抽象的で不確実なものとか、予測不可能性の高いもののイメージなんですけど。
で、東京で暮らしてるとそういう自然がすごく少ない土地だなと思っていて。それは、そこに住む人たちも同じで、予測不可能性を嫌ったりとか、目的のない行動や会話を嫌ったりする傾向があるなって、個人的に思ってるんですね。
だから、そういう人たちに、どうにかしてそういう予測不可能性のある時間とか行動を、味わってもらう機会を作れないかなって考えるようになって。
ただ、今の自分にはドカンと借り入れして、起業するとかができるような信用と自信はなくて。そんな状況でできることって何だろうと思ったときに、気楽に始められることをやってみようって。で、「雑談」は自分にとって自然性を象徴するものの一つだったので、始めてみたって感じですね。
toki:そこに魅力を感じるのってどうしてなんですかね?
生年月日:なんでなんだろう。小学校低学年ぐらいから、図書館で宇宙と虫の本を読んでたんですよ。自分じゃ想像もできない何かがこの世界にあるっていうのを感じるのが好きなんだと思います。
「目から血出すトカゲがいる」「太陽の300倍の星がある」みたいな。そういう、ものすごく平たい言葉で言えば「ロマン」みたいなのが、好きなんでしょうね。
toki:ほうほう。実際、先ほどお話された「散歩と雑談」のサービスで、どなたかと散歩と雑談はされたんでしょうか?
生年月日:もう既に3人ぐらいと散歩して、あと予約がもう3件ほどありますね。
toki:3人ほどやってみて、今のところいかがですか?
生年月日:やっぱりいろんなバックボーンを持った人が応募してきてくれて。目的も決めてないんで、その都度会話のテイストが異なるのが面白いなって思います。自分が「散歩と雑談」で得られるものをそこまで強く定義してない分、応募してくださる方もいろんな動機を持って参加してくれていて、そこの出会いも楽しみながらやれてるなっていうふうに感じてます。
「赤の他人だからこそ言える話」とかもあったりするかなと思うんで、そこを楽しんでます。
toki:そうなんですね、ありがとうございます。
質問の方向が少し変わりますが、生年月日さんはどんなことが好きですか?
生年月日:突発的に発生したトラブル、その場にあるもので解決するみたいなのがめっちゃ好きです。
以前、賃貸の部屋の写真を撮影して、不動産の媒介サイトに掲載するみたいなバイトをしてた時があったんです。内装工事中の部屋を撮影してたときに、その部屋のドアにノブがなかったんですよ。だからドアを開けたままにして、ベランダの窓をちょっと開けて日の入りをよくしようと思ったら、風で部屋のドアが閉まっちゃった。
toki:えっ。
生年月日:ドアノブ付いてないから開けられなくて、部屋に閉じ込められてしまって。でも建物は3階だから飛び降りられない。どうしようと思って。
そしたら、財布にSuicaの領収書が2枚入ってて、それをL字型に組み合わせて、扉の隙間に引っ掛けたらドアが開いて、脱出できました。そのとき、もう脳汁が出ましたね。そういうのが好きです。
toki:よかったです、脱出できて。
そうやって発生するトラブルの大きさって、どのくらいまでは許容ですか?
生年月日:死ななければ。死ななきゃいいって感じです。
toki:なるほど。今好きなことについてお聞きしましたが、反対に嫌いなもの・ことは何かありますか?
生年月日:嫌いなもので言うと、なんだろう。「社会人」とか「責任」みたいな言葉があんまり好きじゃないですね。
そういう言葉って、10人に意味を聞いたら、10人なりの答えが返ってくるはずじゃないですか。それにもかかわらず「社会人」って言われると、無条件に自分の行動とか思想が縛られてしまう感じがして、理不尽さを感じるんですよね。
そういう、「何となくみんなが守ってるけど、明確に定義されてない言葉」みたいなもので縛られるのはすごく嫌いです。
toki:ちなみに、例えば「社会人」を例に挙げるとしたら、生年月日さん的には「社会人」ってどういうものだと思います?
生年月日:これはゲームのキャラクターのセリフなんですけど、「大人になるということは、自分で生き方を選ぶことだ」という言葉があって。自分はその言葉がものすごい刺さっちゃったんで、「社会人」の定義にもそれを引用してますね。自分で生き方を決めてるかどうか。
toki:ほうほう。ありがとうございます。
現在パートの最後にお伺いしますが、生年月日さんは周りの人からはどんな人だと言われることが多いですか?
生年月日:「何考えてるかわかんない。」とかは言われますね。あとこの前は「わんぱく」って言われました。
toki:そう言われて、ご自身的にはいかがですか?
生年月日:悪い気はしないですね。嬉しくはあるけど、ちょっと喜ぶことが恥ずかしいみたいな感じ。女の人に「かわいい」って言われたみたいな感じです。
過去:自分の中に明確な正義っていうのがあって、自分が正義の側にいる人間だっていうのを、半ば確信していたようなところがあって。
toki:小さい頃は、どんなお子さんでしたか?
生年月日:小さい頃は、個人主義だったと思います。
幼稚園の頃も、興味がある遊びにしか参加しない節があって。砂場にあった網目の細かいざるみたいなもので、砂を延々に濾してたりしつつ、向こう側の遊具で友達たちがかけっこをしだしたら、ふっとそこに入っていってかけっこをする。でも、その後仮面ライダーごっこが始まったら、興味がないから一人でまた砂を濾しに行く。
面白かったら参加するけど面白くなかったら参加しない。グループでいることにそんなに価値は感じてなかったと思います。
toki:小学校時代はいかがでした?
生年月日:小学校の頃は、ビジュアル的なところで言うと、冬でも半袖半ズボンの少年いたじゃないですか、自分はあいつでした。
で、髪型に異常なこだわりがあって、ずっと坊主を貫いてました。2個上に姉がいたんですけど、弟が坊主だと同級生にもカッコがつかないってことで、姉が母親と画策して、ソフトモヒカンみたいにされたことがあったんですよ。
そのときは、自分は泣いて抗議をしました、「頼むから坊主にしてくれ」って。で、泣いて頼み込んだら、姉も「仕方ないから坊主にしてやってくれ」みたいな感じで、許していただいて。坊主が復活したっていう思い出はありますね。
toki:自分のこだわりを貫くみたいなことって、よくあることだったんですか?
生年月日:はい。お気に入りの犬のぬいぐるみがあって、それをずっと持ってたり。一つこだわったらこだわり続けるみたいなことが、小学生の頃はあったような気がします。
toki:そこから中学校に進学して何か変化とか、あったりはされましたか?
生年月日:中学校に入学すると同時に、髪を伸ばし始めましたね。モテたかったんだと思います。
toki:中学校時代で印象深いこととか、あったりはしますか?
生年月日:中学2年生のときに、身長が15センチぐらい急激に伸びて、髪も伸ばしたんで彼女ができるようになったんですよ。「モテたい」という狙い通りに(笑)。髪を伸ばしてから恋愛がうまくいくようになったっていうのが一つと。
あとは、部活動(バスケ部)を1年間続けられなかったことですかね。かなり劣等感を感じました。兄弟の上2人は結構そういうのに順応できるタイプだったんで、自分が集団の中でうまく生きられないみたいなことに悩んだ時期でもありました。
toki:幼稚園のときも個人主義だったとお話しされてましたが、集団に対する抵抗って、どういう部分に感じていらっしゃったんですかね?
生年月日:多分すごくシンプルで、あんまり好きじゃない人と関わりたくないっていうだけなんですよね。集団でいることを優先してしまうと、あんまり好きじゃない人と否が応でも関わらなきゃいけないので。
だからこそ、仲いい人とはとことん仲いいけど、その人が属している集団に関心があるわけではないっていう、それは今でもそうです。
toki:高校時代はいかがでしたか? 印象的なことがあれば、教えてください。
生年月日:高校時代は、中学時代と同様バスケ部に入ってたんですけど、1年で辞めて、2年生のときにはボクシングジムに通って、3年生の時にまたスポーツを変えました。自宅から1時間半ぐらいのところにアメフトの社会人チームがあったんで、問い合わせフォームから入部できますかって連絡して、社会人の中に1人高校生混じってプレーしてました。
toki:やることをコロコロ変えていったのはどうしてだったんでしょう。
生年月日:全然向上心とかではなくて、どれもシンプルに“YouTubeで見てかっこよかったから”みたいな感じです。「俺もやりたい!」っていう。
toki:その前にやってたことをやめる、みたいなところに抵抗とか、ネガティブな気持ちを抱くことはありませんでしたか?
生年月日:ほぼなかったですね。ただ学校生活で、元バスケ部にそっけなくされたりするのは面倒くさいな、ってぐらいですかね。
toki:そうなんですね。
生年月日:ただ、高1で部活をやめたのは、価値観が変わったきっかけの一つだったかもしれないですね。
中1から高1までは、自分の中に明確な正義があって。自分が正義の側にいる人間だっていうのを、半ば確信していたようなところがあったんです。中学生のときは学級委員をやってたりして、シャツ出しとか第2ボタン開けたりしてる生徒がいたら注意するような、面倒くさい真面目くんって感じだったんですよ。
高1のときも若干そういうところがあって、中学時代ほどあからさまにはやってなかったですけど、間違えてると思う人を論破するとか、批判するみたいなことをしてたんです。
高1で部活をやめたことがきっかけか、多分いろんな要素があったと思うんですけど、その正義が揺らいだタイミングがあって。価値観が変わったんじゃないかと思います。
toki:正義が揺らいだきっかけは、明確にはない?
生年月日:いくつか思い当たることはあって。部活辞めたっていうのがまず一つ。あとは、部活辞めたタイミングで、地元の友達たちと放課後会って遊ぶようになったんですけど、その時、自分は結構横暴な態度を取ってしまっていたようで、その友達たちからハブられちゃったんですよ。
「自分が正義だと思うことを押し通すとこうなるんだな」ってことを思い知った経験でした。「寂しい」って感じたんだと思います。
toki:そこで価値観が揺らいでから、その後の生活とかって何か変わったりはしましたか?
生年月日:どうだろう。行動自体はすぐには変わってなかったかもしれないですけど、頭の中では変化が起こってたような気がします。前よりちょっと繊細になったみたいな感じですかね。
toki:ふむふむ。高校卒業後はどんな考えでどんな進路を選ばれたんでしょうか?
生年月日:体育が強い高校だったので、深く考えずに「体育教師かな」みたいな感じで。先生の資格が取れて推薦で入れる大学にスッと入ったって感じですね。
toki:大学生活はいかがでしたか?
生年月日:大学生活、楽しかったですね。今でも仲の良い友達がいて、彼を「心の友」って呼んでるんですけど、彼に出会えたってだけでもうお釣り出るぐらいの感じですね。
toki:大学生活はどんなことをやられてたんでしょう?
生年月日:生理学とか心理学とか、運動・人体に関することを勉強したのと、バスケのサークルに入って4年間活動したのと、あとは大学3年生のときに学校のミスターコンテストに出たっていうのもありました。
で、そのミスターコンテストの流れで芸能事務所のオーディションにチャレンジしたり、って感じですかね。
toki:そうなんですね。
生年月日:ミスターコンは普通に負けたし、芸能事務所も募集してないところにまで手渡しで履歴書渡しに行ったりしたものの、なかなか返事がもらえないっていうのがあって「普通に生きるか」と思って就活を始めたんですけど、就活も全然うまくいかなくて絶望したタイミングでしたね。
toki:ちなみにミスターコンテストとか、そういったところに出ようと思ったのはどうしてだったんですか?
生年月日:シンプルに目立ちたがり屋だったっていうのがまずあります。あとは、前年のミスターコンの結果発表を見に行ったんですけど、自分はそのとき嘲笑する側だったんです。「自分でイケメンですって立候補して負けるってダサすぎだろ」みたいな。でも外野から石投げるのって汚ねえなって思って、翌年自分も出てみたって経緯です。
結果、今度は自分が嘲笑される側の立場になって、その背後にある苦悩とか努力とか葛藤とか、あの時のあの人たちも同じ気持ちだったのかなって気付きがあって。人生で一番敗北を感じた出来事だったかもしれません。
それまでガッツリ負けた経験っていうのがあまりなかったので、敗者の景色を知ったことで、頑張っている人をバカにするような発言がだいぶなくなりました。
toki:就活も苦労されたとのことでしたが、具体的にはどんなところがうまくいかなかったんでしょう。
そもそもやりたいことがないとか、あとはやりたいことがあっても、その行きたいところに受かれないとか、就活に対する悩みって色々なのかなと思うんですが。
生年月日:何て言うんだろうな、自分を良く見せる、みたいなことをするのが苦手なんですよ。自分をマイナスに表現した方がウケ取れるじゃないですか、自虐的な。
そういうコミュニケーションが自分的には好きで、今までずっとそうしてきたからこそ、ちょっと数字の魔術使って実績盛ってみたりとか、学生時代のこんな経験が仕事の役に立ちますって言ったりとか、「本当か?」みたいな。自分の作った文章の稚拙さ、軽薄さみたいなところに自分でうんざりしちゃって、いちいちそこで悩んでましたね。
toki:就活をして、その後ってどうなったんですか?
生年月日:結局内定一つも出ず、不動産のベンチャーの会社、「ドアノブのないドア」の話で出てきた、空室を撮影して、媒体にアップロードする仕事を見つけて、そこでライティングの仕事に従事してって感じでしたね。
toki:現在のパートで、お父様が自営業だったっていうのもあって、自分がサラリーマンになる姿が想像できなかったってお話されていたと思うんですけど、就活されてた頃もそういった思いって持ってらっしゃったんですか?
生年月日:持ってましたね。すごい表現が難しいんですけど、多分他の人から見たら、自分は偉そうに見えるんですよ。「落ち着いてる」「自分のペースを持ってる」って言われることが多くて。だから、部下ムーブができないんですよね。“かわいい後輩”ができない。
だから(俺は上手に従業員をできるんだろうか)みたいな不安はずっとありました。
toki:その不安はありつつ、でも従業員になろうともしていた?
生年月日:確かにそうですね。さっき言いそびれてはいたんですけど、学生時代に起業しようと思って、何人かの投資家に事業計画書を出してみたことがあるんです。
そのとき投資家の方の一人に、「学歴って重要だと思う?」って聞かれたんです。僕はそんなに名前のある大学出身じゃなかったので、希望も込めて「いや、関係ないと思います」って言ったら、投資家の方は「めちゃくちゃ関係ある」って。
その話を聞いて、一旦社会へ出て、何かしらの肩書きや実績を得ないと、自営業の道にも進めないんだろうと感じて、就活をしたって経緯がありますね。
toki:なるほど。ありがとうございます。
過去のパートを振り返って、「これは言っておきたい」「話しておきたい」ってことがあればお伺いしたいんですけれども、いかがですか?
生年月日:高校時代の友達に「スクールカーストの外側にいた」みたいな表現をされたことがあります。運動部の権力強めの学校だったんで、高1のときは多分カーストの上の方にいたんだと思うんですよ、バスケ部だったってそれだけで。
でも部活を辞めたときに、それまで仲間だったバスケ部のほとんどがそっけない態度に変わってしまって。それまで部活のメンバーとつるむことが多かったんで「あれ、結構友達いないもんだな」って、おとなしくなって。
でも、高3になったときに体育祭の団長に立候補したら、意外と選ばれてしまって。体育祭の団長になったら、意外と優勝できてしまって。
そこでまた、まわりに人が増えてきてって感じで、自分自身カーストとかあんま気にしてなかったと思うんですけど、外側から見たらなんていうんでしょう、カーストの中を行ったり来たりしてる人みたいな。そんな存在だったんだろうなと思います。
未来:正解とされてることを、ひっくり返して「ほら、違ったでしょ」ってやりたいんですよ。
toki:最後に未来についてお伺いします。
1年後、5年後、10年後、何年後でも構わないんですけれども、こういうことをやりたいとか、こういうふうになっていたいとかっていう、未来のイメージって何かお持ちですか?
生年月日:やっぱり最初に言った「散歩と雑談」みたいな感じで、自然的なものと人間の距離を縮めるみたいなところには、今すごく興味があって。
今年中に狩猟免許を取ろうと思ってるんです。自分が獲った肉を食べてもらえるジビエ料理イベントみたいなのを開いてみたくて。あとは、将来的にはゲストハウスなりホテルなりを山の近くに作って、畑やったり、お肉獲ったりして、泊まりに来た人が半自給自足を体験できるみたいな。そういう宿泊施設があったら、面白いかなとは思ってます。
toki:うんうん。
生年月日:あと、この前友達と飲み行ったとき、ちょっと話してて熱くなってしまったことがあるんですけど、いわゆるエッセンシャルワーカーと言われるような必要不可欠な仕事に従事する人たちが、あんまり裕福じゃないっていう状況に納得いってなくて。
それよりも、言ってしまえば「概念操作のおままごと」みたいなことをしている方が、場合によってはお金を稼げてしまうかもしれないじゃないですか。
それが資本主義のルールなので仕方ない。仕方ないけど、限られた椅子の取り合いのために、本当は必要のない仕事で無意味な競争が起こることを、放置してていいとも思わないんですよ。だから勝ち馬に乗るみたいな発想はしたくなくて。資本主義のルールに則りながら、今強い人たちを無視できるぐらいの別の支流を作っていくような活動に従事していきたい。し、従事する人を増やしたいんです。
toki:なるほど。ご自身が従事するだけではなくて、他にも従事する人を増やしたいっていうふうに、他の人に対しても「こうなってほしい」って思うのってどうしてなんでしょう。
生年月日:あんまり立派な理由はたぶん無くて。ただただ、めちゃくちゃ天邪鬼なので、正解ってされてることをひっくり返して「ほら、違ったでしょ」ってやりたいんですよ。それが壮大であろうと、目の前の人とのおどけた会話であろうと、その人が正解だと思ってることを、(もしかしたら違うかも)と思わせたり、そう思い知らせたりしたいんです。ただそれだけのような感じがします。
例えばゴキブリが出たときに、「ゴキブリの存在価値が分からない」「全滅すればいいのに」みたいな発言をする人がたまにいるんですけど、彼らは小動物にとっては貴重なタンパク源なわけで、ゴキブリがいないと成立しないことっていうのは、きっとたくさんあるはずなんですよ。
そんな感じで、「みんなが無価値って切り捨ててるものって本当に無価値なんだっけ?」って天邪鬼な提起をしたいんです。
toki:気になったんですけど、ひっくり返した先の世界を実現することが重要なのか、「ひっくり返す」ことそのものが重要なのかでいうと、どちらの方が近いんですか?
生年月日:ただ「ひっくり返したい」ってだけなんだと思います。
未来はどうにも予想できないと思ってるんですよ。例えば、最近の日本が景気悪いと思うなら、「変わったらいいじゃん」って思います。今のやり方で、もしこれからますます悪くなるなら、一気に悪くなるか、徐々に悪くなるか、どっちかしかないなら、一旦変えてみた方が希望があるんじゃないかなって思うんですよね。
その先の未来はどうなるかわかんないけど。変わる瞬間を見たいし、変わることの方が希望の含有量が多いって感じですね。
toki:では、もし仮に、生年月日さんが思い描いてるような「自然と人との距離が十分に縮まっている世界」が今実現しているとしたら、そこからまた何かを「ひっくり返したい」っていう気持ちって、生まれるんですかね?
生年月日:どうなんでしょう、生まれるかもしれないですね。「みんなバリバリ自分で稼いで、もっと競争しないとダメだ!」「発展こそ命!」みたいなことを言い始めるかもしれないですね(笑)。
toki:ひっくり返すこと、それ自体に関心があるんですね。
正年月日:そうですね。
toki:ちなみに今ひっくり返そうとしているものの進捗というか、「ひっくり返し度」みたいなのって何%ぐらいですか?
生年月日:自然と人間の距離を近くするってあんまり測れないことなんで、どうなんでしょうね。
最近は、エシカル商品とか自然に配慮した企業に求人応募が集まる傾向があるって聞いたことがあって、いわゆる自然、みんなが思う自然の重要性っていうのは、十分多くの人が認識してると思いますね。
あとは、自然って我々にとって不都合な性質を持ってると思うんですよ。地震が起きたり、洪水が起きたり、コンクリートに雑草が生えたり、部屋の中にカメムシが飛んできたり。決して、人に対して優しくはない。そういう予測不可能性、操作不可能性まで含めて自然で、そこまでうまいこと受け入れようってとこまで進んだらいいなと思ってますね。
toki:「ひっくり返したい」と思う時、「自分ならひっくり返せる」っていうふうに思えますか?
生年月日:思ってるから目指してんじゃないですかね、多分。自分の考えが先進的なのであれば、人はきっとついてくると思うんです。見当外れなんだとしたら、人が集まらないって、ただそれだけですね。
toki:なるほど。
ちょっと質問変わるんですけど、死ぬまでにやっておきたいこととか、「これをやらないと死ねないな」ってことは何かありますか?
生年月日:今ぱっと思いついたのは、フランスのモンサンミッシェルに行ってみたいです。中学時代に初めてウォークマンを買ったんですけど、そのときのホーム画面の壁紙一覧に、夕暮れのモンサンミッシェルの写真があって。「ここは死ぬまでに絶対行こう」って中学生のときに思ったんですよ。なので、当時の私の思いを尊重して、モンサンミッシェルに行きたいです。
toki:ありがとうございます。
ところで、就活をして大学を4年で卒業してそのまま就職する人が多い中で、そういう道ではないところを行ったり、仕事をやめてフリーで生きてみようと試みたり、生年月日さんは進む人が多いとされている道ではないところを進んでいらっしゃる印象で。
それって、自然の予測不可能性、不確実性とか、そういった部分と何か繋がりはあったりはするんですかね?
生年月日:ありそうな気がします。自分たちも自然の一部だとすると、本心で生きたら、その予測不可能性によってきっとみんなバラバラな方向に進むはずで、今それが結構画一化されているってことが、むしろ不自然なことに感じたりはします。
自分の場合は多分、あんまり人が選ばない方を毎回意識して選んでるというよりかは、さっき言ったみたいに、ものすごく天邪鬼なんです。得・有利な選択は何かが分かっていても、自分に正直に生きると自然と他の人たちと違う選択になってしまうんですよ。なので「生きづれえなあ」と思いつつも、そんな生きづらい自分のことを実は結構好きだったりするみたいな感じです。
toki:ほうほう。特に自分のどんなところが気に入ってます?
生年月日:あんまり自分の状況とか肩書きにとらわれずに、存在自身に自信を持ってるところは、気に入ってるところですね。
toki:自分が選んだ道や自分自身に自信を持てるのって、どうしてだと思いますか?
生年月日:多分なんですけど、自分で選び続けたっていう感覚があるんですよ。自分で選択した感覚って、何かから外れるとか、何かを辞めるっていう過程で、より強く実感できると思うんです。
例えば、受験勉強とかって「本当に自分で決断したんだっけ?」ってなるじゃないですか。周りで良いこととされてることって、流されたのか、決断したのかが分かりづらい。
でも、例えば「受験勉強しません」「部活辞めます」とか、あとは結果論ですけど、「就活上手くいきませんでした」みたいなのって、自分で選んでなかったとしても、自然とそうなったとしても、周りの批判や否定をシカトするという過程を経るからこそ、きっと「自分で外れることを選択した」という自覚として解釈される気がしてて。
自分で選んでる(と自覚している)人生だから、そこに対して愛着が湧いてるんだろうと思います。知らないオッサンからポンと渡された可愛いぬいぐるみより、自分で悩んで、選んで買ったちょっと不細工なぬいぐるみの方が、愛着が湧くじゃないですか。そんな気がしてます。
toki:その選んだ道が成功だったとしても失敗だったとしても、選んだっていうことが
大事?
生年月日:そうです。
toki:もしも、この先「生年月日さんの人生を決める人」が現れて、これからずっとその人が言う通りに生きていかなきゃいけないとしたら、この先どういうふうに人生を歩んでいきますか?
生年月日:もし言うことを聞かなかったら、家族を人質に取られたりするとか?(笑)
toki:そういう想定で。
生年月日:多分最初のうちは頑張ると思うんですけど、慣れないと思うんで、自殺するかそいつを殺すと思います。追い詰められて。
toki:今まで自分が選んだ、自分がしてきた選択の中で、一番印象に残っているもの、大きな選択だったと思うものって何になりますか?
生年月日:そう聞かれると思い出せないですね。大きな選択だったのかが、わからないです。選択の結果はまだ出てないので。生きてる限りって感じです。
toki:わかりました。ありがとうございます。
そろそろインタビューも終盤になりますが、何か言い残したこと、もっと話したかったことは何かありますか?
生年月日:
ご興味ある方はぜひ「散歩と雑談」に応募してください。っていうのと、窮屈な世の中だと私は感じているんですけど、意外と無視できるんだよってことを、その窮屈さに囚われてる人には、伝えておきたいですね。
▼散歩と雑談の詳細はこちらから▼
あとがき(インタビュアー)
インタビューの中で、何度か出てきた「自然」という言葉。自然を“生い茂る木々”として捉えるのではなく、不確実なこと、予測不可能なことという、より大きな概念で捉える生年月日さんの考え方はすごく新鮮に映りました。
個人的な話ですが、私はいつか(“生い茂る木々”という意味での)自然の中で暮らすことを夢見ながら、今は毎日満員電車に揺られ、大都会のビル群の中にある建物に籠って仕事をしています。たまに仕事で疲れた時に、会社の近くをうろうろと彷徨いながら、「なぜ自分は今ここにいるんだっけ」と考えることがよくありました。
ただ、今回のインタビューを通して、今いる場所は、私が思い描いていた自然とは異なるけれど、生年月日さんの定義で考えれば、どこにいたって、“自然”的な行動はできるし、“自然”の中で生きることも不可能ではないのだな、と思うことができました。
自然の中で生きることを諦めずにいようと、強く思います。
あとがき(編集)
あまのじゃくは漢字で書くと、「天邪鬼」と書くそうです。
仏教の世界に出てくる日本の妖怪的な存在が由来とのこと。
一説によると「人の心を見計らって悪戯をしかける子鬼」から転じた言葉だそうですが、
現代では「多数派の思想・言動に逆らうような言動をする人」を表すことが多いとのこと。
複雑で多様化するこの社会では、多数派が善、少数派が悪(鬼)という単純な発想では
ないのかもしれません。
【インタビュー・編集・あとがき:toki】
【編集:こーすけ】
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