unknown.-誰も知らない答えを探してる⑥-
イスラム教徒と言えば日本人が最初に思い浮かぶイメージと
全く同じイメージを私も持っていた。
踏み入るのが最も怖い宗教だった。
ただ、私はまだ比較宗教をしていない。
2つ以上を比べて初めて「比較」したことになる。
キリスト教でも何ともなかった。
イスラム教だって世界で2番目に人口が多い。
そんなに危ない宗教ならそこまで広がってない。
大丈夫。
自分にそう言い聞かせた。
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都内では比較的大きいモスク。
そこに初めて足を運んだのは冬のことだった。
雪が風でかたまり、道はつるつるしていた。
礼拝入口までは階段を登り、
入り口は扉が全開放していた。
注意書きがあり、入る前にどうやら手足を洗うらしい。
冷水で手足を洗い、震えながらモスクへ入った。
私はまず、驚いた。
キリスト教と違ってモスクの中のイメージは元々皆無だった。
そこには固定概念も何もなかったが、
モスクの中には本当の意味で何もなかった。
キリスト像やマリア像、十字架、長椅子、教壇、聖書、パイプオルガン、
その代わりになるものも何もなかった。
あるのは綺麗な柄の絨毯のみ。
信者は数名いた。
みんな正座をして同じ方向に向かって頭を下げていた。
そして誰にも聞こえないくらい小さな声で何やら呟いている人もいる。
外と変わらない気温の中、身震いせず祈っている。
誰かの唱えているような歌っているような、
リズムはなく、微妙なラインの音がどこからか流れていた。
アラビアっぽい感じの言葉だ。
キリスト教に通っていた私からすれば明らかに異様だ。
特に誰かが流れを指示するわけではない。
各々がそれぞれのタイミングで祈り始める。
え…?私は何をすれば…?
戸惑い、立ち尽くしたが、過去にもそういうことはあった。
得意のコピーで、横目でチラチラ見つつ、
一人の男性と同じリズムで同じ動きをした。
10分ほど経つと彼は去っていってしまった。
なんにも分からなかった。
ここまで何も分からないとは思わなかった。
下の階へ行ってみると大きい本が展示されている。
聖書のようなものだろうか?
2-3人がアラビア系の言葉で話している。
集団はない。
ある男性が棚から何かを取り出し、
私に何か言って差し出してきた。
おそらく「食べるか?」的なことだろう。
オリーブ?の一回り大きいものだった。
怖かったがその人も食べてたから大丈夫だろうと、
とりあえず食べた。
もんのすごくすっぱい。
その顔を見てその男性は笑ってどこか行ってしまった。
え、こわいこわい。
さすがに話す人もいなくてその日はモスクを出た。
近くのカフェでノートパソコンを開き、
イスラム教について調べてみた。
イスラム教は、
神を何かの形にして表す偶像が禁止されている。
つまり人物の銅像や十字架のようなものが一切飾られていない。
キリスト教で神はゴッドと呼ばれるが、
イスラム教で神はアッラーと呼ばれる。
アッラーは唯一神と言って、
イエス・キリストのように神を仲介する人物は存在しない。
神は神だけ。
イエス・キリストが神のことを父と呼ぶが、
イスラム教のアッラーには性別すら存在しない。
正反対とは言わないが、
キリスト教とかなり対比的な状態にある。
これだけでも比較の面白さを実感した。
ただ、私は比較を楽しむことが目的ではない。
疑問の答えを見つけること。
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次の週、次の週と、
何もわからないがとりあえずモスクへ通った。
気になっていたのはガラスケースに飾られていた大きな本。
あれだけ何も飾らないイスラム教で唯一展示物がある。
ガラスケース越しに本を見ようとしていると一人の男性が声をかけてきた。
?「クルアーン読めるの?」
日本の方だった。
自分「クルアーン?」
初めて聞いたフレーズだった。
彼は私がイスラム教徒としてここにいるわけではないことが分かったようだ。
?「そう、これはクルアーンと言って、神アッラーの言葉が書いてある。」
自分「キリスト教の聖書的な感じですか?」
?「ん〜、、、違うけどまあそんな感じだね。」
なんか失礼な例えをしてしまった気がする。
彼の中ではきっと聖書とクルアーンは全く違うが、私に極力わかりやすいように例えに同意してくれた。
A「Aです。」
声をかけてくれた彼はAさん。
まさかの私の大学が母校という一回り上の大先輩だった。
自分「私は、比較宗教をしてるんです。」
A「へぇ〜!めずらしいね!おれもしてた時期あるな〜。」
まさかの比較宗教の先輩でもあった。
A「ちょっとカフェ行かない?」
意気投合してそのままカフェへ。
、、、ん?ここは?
路地裏から地下に下る階段を降り、
扉を開けると暗い間接照明だけが何箇所かほんのり灯る場所。
あれ?もしかして騙された?やばい?
数組がソファに座り、
何やらヤバそうなものを吸っている。
完全に映画で見る裏社会の光景だった。
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