テーマが大事とかよく聞くけど、テーマが何かを言える人は案外少ない #7
こんにちは、アンノーンブックス編集部です。
UNKNOWNBOOKSレーベルからの新刊、レゲエ・ユニット「MEGARYU」のボーカリスト、RYUREXさんの初の著書は2021年7月に発売されることが決定した。
アンノーンブックス代表の安達が、本のことではじめてRYUさんと話し合いをしたのが2020年8月。あれから僕らは渾身の一冊を誕生させるべく、打ち合わせや取材を重ねてきた。
今回は、ヒットする本づくりのプロセスで必要になる「本のテーマ」についてお伝えしていきたい。
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ところで、本は「テーマ」と「前提」で構成されていることをご存知だろうか。そのあたりからお伝えしようと思う。
テーマとは、ギリシャ語で「置かれたもの」を意味する。物語全体を統一する要素で、何らかの人間の衝動や性質を表す一つの言葉。
前提とは、ラテン語で「前へ送られるもの」の意。テーマとなっている人間の性質について、著者がどのように考えているかを示すもの。
このように、1冊の本は「1本のテーマ」と「複数の前提」が絶妙に絡み合ってできている。本のテーマを決める作業はモノづくりの根幹になるほど重要なプロセスだ。だから僕らは、取材後にもう一度しっかりと本のテーマを考え直す。
「この本を、どんな人に届けたいのか?」
「この本を読んだ人に、どんなアクションを起こしてほしいか?」
この2点をあらゆる角度から考え、練り直すことの繰り返しによってテーマが決まる。
今回、RYUさんの本を読んでほしいと強く思っているのは、変化が激しく予想もつかない今という時代に悩んでいる人だ。今の働き方でいいのか、本当は何をしたいのか。でも、どうしたらいいかわからない──そんなふうに悩んではいるものの“はじめの一歩”を踏み出せずにいる人に向けた一冊にしたいと思って編んだ。
起こしてほしいアクションは、「“リセット”ではなく“リスタート”して、生き直してみないか?」という思考と行動のススメだ。「人生の切り拓き方」や「逆境の乗り越え方」と言い換えてもいい。それが、この本のテーマだ。
すべてをリセットする必要はない。これまでの自分を否定しなくても、さまざまな可能性に目を向け、新しい自分として仕切り直すリスタートなら、誰でも必ずできる。だったら今、新型コロナウイルスの影響で窮地におちいっている人も、リスタートという視点を持つことで立て直すことができるのではないか。
このことは、絶頂期に痙攣性発声障害を患い、ある日突然歌声を奪われたRYUさんだからこそ、説得力をもって言えることだろう。
「あの時、ステージで歌うことへのこだわりを捨てられず、『何がなんでもアーティストとして生きていく』という考えに執着していたら、今の自分はない」とRYUさんは言う。
その後、歌声を失ったことでトップアーティストという肩書をすっと手放したRYUさんは、人生をリスタートさせることで、自分らしい毎日を家族や仲間たちと満足しながら過ごせるようになった。
そんな今のRYUさんから学べることはこれしかない。生き直しのやり方であり、「人生の切り拓き方」「逆境の乗り越え方」だ。これがこの本のテーマであり、今動けずにいる読者の背中を押してくれるヒントになると信じている。