phase2.超短期乾燥試験
本来、木材は切り出してから材木にするまでには保管と乾燥に長い月日を要する。それは、建築材料にする場合や家具家財にする場合には避けて通れないところ。ゆっくり水分を抜かないと割れや狂いが生じて、品質を保つことや精巧な仕上げにすることに支障が出るから、なのだ。確かね。
しかし、『この材を使ってアクセサリーを作りたい』と思った時、市販されている乾燥材では流通がなくなかなかそれが入手できなかったり、またあったとしても高額だったりする。そして、建築材料としての材木の価値があまりない樹種については、加工されることすらない。
しかし、仮に建築材料や家具家財に役に立ちにくい樹種にもそれぞれ個性があり、それぞれの美しさがあるはずなのだ。例えば、果樹としての樹種。林檎、花梨なんかは材木として流通することもあるが(花梨というのはややこしくて、バラ科カリン属の花梨ではなくマメ科の木材に花梨という名前がつけられていることが多い。花梨の瘤材はバラ科カリン属のことがある)、ではミカン科植物はどうか。山椒はその材がすりこぎに使われる。キハダも木材として流通している。ただし、ミカンの樹や枝は、材としてほとんど聞かない。
これをアクセサリーの材にしたいと思った時、まずもってその木材の流通がないのだ。
クリ材は、まぁまぁある。クルミ材や、どんぐりをならせる樫やクヌギ・楢材もまたまぁまぁある。では、柏はどうか。なかなか、聞かない。
うちには、変わった樹木がある。杜仲だったりセイヨウニンジンボク(チェストツリー)、姫ヒイラギ(アマミヒイラギモチ)など。この手の木材は、まぁ出ない。ただ、これを材にしようとしたとしても切り出してから長期に渡って保管・乾燥する機材も施設もない。
そこで考えたのは、ドライフラワーの手法。砂くらいの細かさのシリカゲルにバラなどの花を埋めてひと月ほど置き、水分を抜くという手法だ。これを作った際に、薔薇の花は形を崩すことなく見事に水分が抜けていた。この技術、小さな木材ならば転用することは可能ではないのか。
幸い、伸びっぱなしになり剪定もできずにいる杜仲がある。この樹種を剪定し、この手法を用いて『超短期乾燥』を試みよう・というのがこのテスト。問題は、いくつかある。
杜仲は、まず材としての情報がない。伸びが早いことから木目が密に詰まっている可能性は低く、加工が容易である予想はつくが、問題はその樹液。『グッタペルカ』と呼ばれる杜仲の樹液は粘度が非常に高く、第二次世界大戦中にはその樹液が木造飛行機の接着剤として使われていた…と、僕の記憶にある。記憶違いだったら、ごめんなさい。
さて、そんな高粘度の樹液を持つ杜仲の水分が綺麗に抜けるのか、またそれ以前に材として切り出す苦労にも考え及ぶ。しかし、これは僕の自己満足に過ぎないのかもしれないが、まだ見ない樹種の美しさを見てみたい…そういった欲求が、日頃頭をよぎるのだ。
phase1と同様、試験の推移については追って随時報告をしていこうと思っています。
なお、じつは公表してはいませんでしたが、バラ材については簡易試験済。バラ材(サンショウバラ)は外側の材は硬いが芯材は柔らかくて弱く、その硬度の差からか芯材が抜けてしまって穴が空いた。これは、用途はかなり限定的になる。例えば芯材が抜けてしまうことを逆手にとって、ウッドレジンなどに加工するには良いかもしれない。
だいぶ長く綴りましたが、まずはこの試験の初期説明まで。このテストもまた、結果が楽しみです。