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男日照りのミドサーは社内に推しを作ることにした

ときめきたい。

好きな人が欲しい。

好きな人がいる毎日のあの幸福感を味わいたい。

好きな人の一挙手一投足に全神経を研ぎ澄ませたい。

少し話せただけでぐいぐい上がる口角を必死に抑え、要らぬ嫉妬に負けそうになりながらも、溢れ出してどうにも止まらない恋心の暴走を制御しつつ、ひっそりと、だが確実に、ときめきたい(2回目)。

しかし、年々新しい出会いも減っている私、31歳。既存の人間関係の中でぬるぬると生きているのでそんなに簡単に好きな人など出来る訳もなく、ときめきとはほど遠い毎日を送っている。好きなアイドルも今年の11/1に解散してしまうし、私のときめきは減る一方。このままではやばい。急ぎときめき増産体制を構築しなくては。

女性ホルモンぶち上げにご協力いただけるような「推し」はいずこ。

理想としては、やっぱり毎日少しでもいいからときめきたい。そう思ったらほぼ毎日行く会社で見つけるしかない。うちの会社、ここ数年で若い男性社員めっちゃ採ってるから選び放題。最高!しかもなぜかみんないい子ばかり。まずはこんな素晴らしい会社で働けていることに感謝です。

中でも、特に喋りやすい子がいる。
その子は自称イケメン。マ~ジで、自称イケメン。この表現は、「あいつイケメンでもなんでもないのに自分のことイケメンって言ってるよ~ぷすす~」といじっている訳ではない。確かに整った顔をしていてそれを本人は自覚していて、ホントに自分のことをイケメンと言っているのだ。「自称イケメン」という人間が身近に存在していることに対しては結構衝撃を受けた(というか自称イケメンを語る子、他にも数人いるからうちの会社の若い子どうなっとんのや。そしてみんなちゃんとイケメンだから困るよあたしゃ…/////)。
その子は通勤経路が途中から一緒で、しかも出勤時間が大体一緒なので、「今日めっちゃ飛ばしてましたね!」とか「あの時間帯のあの道路であの車に捕まったら終わりっすよね~」とか、他愛ない会話が出来る。
普段男性(しかも若い人)と話す機会があまりない男日照りの私は、若い子とこういう会話が出来る、それだけでハッピージャムジャム最高なのだ。

だからもう、君に決めた!
私のときめきと女性ホルモンの増産は、自称イケメンくん、君に懸かっている…!
私思い込めるタイプだから、絶対イケるでこの作戦!

そう勝手に決めた時から、案の定、私の世界は華やいだ。
私は基本的に事務所にこもりっきりのしがない事務員。自称イケメンくんは現場作業員なので、現場に出る前や現場から帰って来た後にたまに事務所に寄る程度。でもその時間が楽しみになっている。
顔を見れたら「きゃっ!今日もイケメン///」となるし、お休みの日は「今日休みか~。なーんだ…しょぼーーん」となる。
直接話せた日にゃ、その日はずーっと最高な気分になるからすごい。
私ホントに自称イケメンくんのこと好きなんじゃない?というくらい目で追っちゃうし存在を意識しちゃう。通勤経路では車を探しちゃうし会わないかなって期待しちゃう。

そうしてしばらくして、我に返った。


思い込みって怖い。



違う、違うんだよ。私が求めていたのは、これだけど、これじゃない。
少し冷たい秋の風に吹かれてハッと我に返って残ったのは、恋しさとせつなさと心強さなんかじゃなく、虚しさとやるせなさと気持ち悪さ。つらい。つらすぎる。年下の若いイケメンを愛で、なんなら好きになりそうな雰囲気出してる31歳はさすがにきちぃ。そしてイタい。人1人包みこめるくらいの毛布、ではなく、絆創膏が欲しくなるねェェェ!
ちょっと方向性を間違えちゃった。危ない危ない。
思い込みの激しさに定評のある私が近しい人間を「推し」にすることは、大変危険だということがわかりました。仇となっちまうよホントに。
でも思い込めば好きな人を作るのはもしかして簡単なのでは?という考えも頭をよぎったが、それを「好き」とか「ときめき」と呼ぶのはやっぱちょっと違う気がするな。「好き」という気持ちは無理矢理製造するものではないよね。
その人の人となりを知り、自分の気持ちがその人に傾いていることに気付き、そこからさらにたくさんのときめきが生まれ、色んな感情がぐるぐるした結果、「好き」と自覚したい。恋に恋している状態になるかもしれないけれど、それもまた恋。


まだまだ恋に夢見るミドサーでいたい男日照りの私は、健全なときめきを求め、今日も健全に生きることにした。


(※この場をお借りして、勝手に推しに仕立て上げてしまった自称イケメンくんにお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした(ジャンピング土下座)。)


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