盗めるアート展を供養する
秋山です。様々な要因から注目を浴びている盗めるアート展ですが、すべての展示物は、既にして盗まれており、もはや全体として鑑賞することはできません。一部はヤフオクやメルカリに出品されており、ある意味、そこが第2会場と言えなくもないですが。
以下、展示された作品について感じたことを述べます。
モナリザを盗んでみたい人の為の
巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチの代表作『モナ・リザ』は、世界でもっとも有名な絵画作品とも言われています。この作品は、ヘタウマなタッチですが、その本質は、かの『モナ・リザ』を贋作とは言え、盗み出せるという体験を提供しているという点でしょう。
Narcissi
ふたりの女性と巨大な花が描かれた、ふしぎなテイストの絵です。タイトルから察するに、ギリシャ神話のナルキッソスがモチーフになっているようではあります。
セル フ ディビジョン
パッチワークのような作品です。小区画を意味するセルを、自分で分断する、というダブルミーニングでしょう。下の方は暖簾(のれん)のようになっており、ここだけを切り取れば自宅で使うこともできる実用性を秘めています。
GODS AND MOM BELIEVE IN YOU
床に散らばった大量の財布、紙幣、硬貨、そしてクレジットカード。目の前に差し出されたお金を前に、人々は自身を制御できるのか否か。「神と母はあなたを信じている」という皮肉の効いたタイトルに思わず笑ってしまいます。
ホワイト・キューブ
壁に掛かっている額縁は説明に過ぎず、作品は手前に見える白い箱です。1929年に開館したニューヨーク近代美術館において、作品を展示するための台座として用いられ、以降、展示空間の代名詞として活躍した様子。場所が変われば芸術作品になる、という点においてマルセル・デュシャンの『泉』を思い出しました。
マイマネー
紙幣を模した芸術作品と捉えましたが、タイトルから察するに、アーティストのポケットマネーがリアルに使われているのかもしれません。盗まれるために作られたことを考えると、上述の『GODS AND MOM BELIEVE IN YOU』以上に諧謔を覚えます。
アートブレスト
ブレインストーミングさながら、壁に貼り付けられた付箋が社内研修を思い出させます。本来、アートのアイデアは盗めないものですが、このような形を取ることで盗み出せるようになる、という点が素晴らしいです。
Midnight vandalist
ヴァンダリズム(器物損壊)を働くひと、という意味でヴァンダリストという造語でしょう。ミッドナイトとあるのは、盗めるアート展が0時0分に開場することを踏まえてでしょう。日めくりカレンダーのように、1枚ずつ破くことを想定されていると察せられ、2枚目以降になにが描かれているのか(あるいは、なにも描かれていないのか)想像力が刺激されます。
井上陽水1987
井上陽水の写真、でしょうか。たとえば裏側に、なにか仕掛けがあるのかもしれませんが、判別がつきません。
UNTITLED
最後は、張り紙。アイディア賞、と言ったところでしょうか。
以上です。
写真は、ぺこらさんが撮影してくださったもので、私は間近で見ることがかないませんでした。レセプションには多くの取材陣が入った様子ですので、いずれ記事等で、作品の鮮明な写真が確認できるかもしれません。
盗めるアート展自体に関しては、既にブログの方に書いてしまいましたので、そちらをどうぞ。