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2人用協力型トリックテイキング『ジキル&ハイドvsスコットランドヤード』を語る

 彼はメートル・グラスを口にあてると、ぐっと一息に呑み下した。すると叫び声をたてて、ひょろひょろとよろめき、テーブルを掴まえてしっかとしがみついたまま、血走った眼でじっと見つめ、口を開けて喘いだ。見ているうちに変化が起こったように私は思った。――彼は膨れるように見え、――彼の顔は急に黒くなり、目鼻立ちが融けて変ったように思われ、――そして次の瞬間には、私は跳び立って壁に凭れかかり、その怪物から自分の身を護ろうと腕を上げ、心は恐怖で一ぱいになった。
「おお、これは!」と私は叫び、そして二度も三度も「おお、これは!」とくり返した。それは、私の眼の前に――色蒼ざめてぶるぶる震え、半ば気を失い、死から蘇った人のように手で前方を探りながら――ヘンリー・ジーキルが立っていたからである!

スティーヴンスン『ジーキル博士とハイド氏の怪事件』
https://www.aozora.gr.jp/cards/000888/files/33205_26197.html

ジキル博士とハイド氏

それは、イギリスの小説家、ロバート・ルイス・スティーヴンソンが著した代表作のタイトルであり、同作の主人公に宿ったふたつの人格の名前です。

ジキル博士は高名な医師、ハイド氏は残虐なる殺人者

人間の二面性、内面に秘められ抑圧された欲望の解放を描いた怪奇小説であると同時に、二重人格という存在を世に知らしめた作品でもあり、「ジキルとハイド」という言葉は二重人格を意味する言葉として扱われることもあります

今回は、スティーヴンソンによる『ジキル博士とハイド氏』を題材とし、また二重人格というテーマを、ゲームに落とし込んだ2人用の協力型トリックテイキング『ジキル&ハイドvsスコットランドヤード』を紹介します。

本記事は『アナログゲームマガジン』で連載している『協力ゲームざんまい』の第3回です。序盤は無料でお読みいただけますが、途中から『アナログゲームマガジン』の定期購読者のみが読める形式となります。試し読み部分で「面白そう!」と感じていただけましたら、ぜひ定期購読(月額500円、初月無料)をご検討ください。
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ジキルとハイドになって、警察から逃れよう

同一人物とは思えないほど顔が豹変しているハイド氏

2人のプレイヤーは、それぞれジキル博士とハイド氏を担当することになります。担当したいキャラクターを選んで、人格カードを受け取りましょう。

尚、二重人格(解離性同一性障害)は、心のなかに複数の人格が共存しているもので、人格が変わったからと言って外見まで変わることはありません。小説『ジキル博士とハイド氏』において、人格がハイド氏に変わるとき、容貌が変化する描写がありますが、これは怪奇小説ならではの記述です。

ゲームの目的は、チャプターによって異なりますが、基本的にはトリックテイキングゲームを2ディール行って、警察の手から逃れることを目指します

本作はミッションクリア型のストーリー形式となっており、全10章からなるストーリーをすべてクリアすることで、ゲームクリアとなります

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