鉄拳は人生だ・5.1前編

・様々なバグ技の調整(側バリ、弐連剛掌破、前掃腿、ブレイズ、ジャストニーetc…)及び幾つかの固有技の仕様変更、受け身後のガード不能時間の削除、吹っ飛びダウンから後転受け身が出来る様になり、ダウン状態や座り中に対してのダメージ補正が軽くなるなどの画期的な修正が施されたVer.5.1。
ゲーム性がマイルドになり、Ver.upの宿命としての賛否両論の洗礼は確かにあったが、ユーザーの感覚としては概ね好意的に迎え入れられたと言える。少なくとも5.0最後期の時点で「5強」と謳われたスティーブ・平八・ニーナ・ブライアン・フェン>>>あとなんかその他のキャラ、という悲惨な図式が解消されただけでホッとしたプレイヤーも多いはず。
ここで当時の5.0の凄まじさを知らない方に、幾つか掻い摘んでその片鱗を紹介しておこう。

1、側面バリアント:スティーブ
左ウェービングからバリアントコンビネーションをLKホールドで出すことでデンプシーロールに移行する。これを相手の側面にヒットさせると相手はうなだれたまましばらく行動不能になり、様々な技を側面から食らう。
レシピによっては即死。お手軽コンボでも総ダメは130程度(全体体力は150…)。
スティーブはこの他にもワンツースリーターパンやクイックNH→ブリストル、壁コンダックイン→チョッピングライトなど、とにかく挙げたらキリがない程の壊れた要素を抱えていた。側バリが発見された時、「なんでまたよりによってこのキャラが…もう神はいないのか…orz」と絶望したのはおれだけではないだろう。

2、弐連剛掌破:平八
多くは語らない。「10F確反でダメ65」これが事実だ…。

3、前掃腿:フェン
ガード-12F前後(細かい数字は忘れた)。とにかく、食らえば半分近く減る下段をガードしてもシャオは立ち途中RK止まりだった。
なんてったってこの技、クリーンヒット時は派手なエフェクト出たんだぜ!ダメデカ過ぎ!(笑)

4、ブレイズスティンガー:ニーナ
言わずと知れた初心者殺し技。空コンの〆に使うとその後凶悪な起き攻めを展開出来た。
まず、この後のエンプレスヒールは確定。その場起きや後転はR&Bや3LPや立ち途中4LPなどで拾ってループ。更に寝っぱ・左横転に当たるスカルスプリッター、寝っぱ・右横転に当たるルーイナスヒール・アギト斬り、寝っぱ・両横転に当たるレッグスイープなど、よくもまぁここまで色々揃えたもんだと驚く。
全国で一体何人の初心者がニーナによって訳の分からないまま惨殺され鉄拳をやめたのだろう、と考えるととても悲しい(T_T)
ニーナはこの他にもガード後に距離が離れ一部キャラ以外確反無し・ヒット時は投げコンボ移行のジャストニーや、ガード後に距離が離れる-14Fのディバイン、14F確反からダメ70近く奪えたレプラ、ガード不能連係のシェイクガード→生ローなど、間違いなく過去のどのバージョンの中でも最強の仕様だった。
かくいうおれも5.0の終わり頃にニーナを使ってみた。あっさりシャオの最高段位である拳達までいった時は非常に複雑な気分だった(^o^;

・こういったリアル鉄拳の可能性を漂わせた技や連係達は5.1という神の裁きによって淘汰され、基本的に強いキャラはある程度弱く、弱いキャラはある程度強く修正が為された。その中でも特にニーナは見る影もないくらい無残な調整を受けた。「ちょwおまww」のレベルだった。ニーナ板はお通夜を通り越してもはや告別式の様な雰囲気になっていた。

・5.1になり強化修正を受けたシャオにも問題なく馴れ、段位も拳達~拳豪辺りで安定し、立川近辺ではおれも結構強い方に入ってきたんじゃないかな~♪などと調子に乗っていた頃。カイジと2人で対戦する為に東福生のプレイランドビッグに行った。
そこには既に12連勝中の拳達のキングがいた。そいつはこの辺りで結構強くて有名で、東福生の個人戦の大会で優勝したりもしていた。おれも実際に戦うのはその日が初めてだった。

まず、カイジ乱入(メインのジャックで確か師範くらい)→普通に負け。

次におれ拳達シャオ乱入→負け。

またカイジ乱入→普通に負け。

次におれ乱入→負け→更にもう1回負けたところでそいつは拳豪に上がった。良いトコ無しのストレート負けというヤツだ。

しかもそいつはラウンドを取る度に後ろ方向へエルボードロップ(7RP+RK)を出すという不快極まりない屈辱的なスタイルを見せ付けてきた。まだ直接死体蹴りをされた方がマシな気さえした。

コイツ…絶対性格悪い…!!

その後しばらく戦って、勝ったり負けたりのシーソーゲームにもつれ込んだ。カイジは結局1度も勝てず、とても悔しそうだった(この時点でまだ苦手意識は残りつつも、おれもカイジに勝ち越せるくらいの成長をしていた)。
更にあろうことか、何戦か交わした後そいつはこちら側に回ってきて、爽やかな笑顔を浮かべながら『いやー強いですねー^^』などと言い出した。

「えっ…いやいやそんなことないですよー。つーかキング強いですね!しゃがパンアッパーの使いどころがマジ上手かったです。完全に読み負けだったなー」

『あーあれは一点読みでしたねーエルフク出したらパンチ捌きされたんで、じゃあ次はあっちかなーなんて思って^^いつもこの辺でやってるんですか?』

「おれは基本拝島とか立川とかですね。彼は大体相模原でやってます」

『あっ、そうなんですかー。まぁ今度またやりましょう^^ねじまき鳥さんは闘劇とか出ないんですか?』

「えっ??Σ( ̄□ ̄;)いや~今のところそういう予定はないですねぇ(^o^;」


なんだコイツ…人見知りとかないのか…?すげーナチュラルだな…力が入ってないというか掴み所がないというか…不思議なヤツだ…


これがYUKIとの出会いだった。


・それからというもの、現在の我らがホーム『ゲームコックピット宇宙船』に足繁く通う様になり、『強いシャオ使い』の異名と共におれも常連客から徐々に話し掛けられる様になっていた。
ある夜そこにいた数人で急遽行われた宇宙船初の大会で優勝した。
メンツはYUKI、まーぷぅさん、やっちん、MITSU、ミヤタとかだったかな?
すげー盛り上がって緊張して笑い合って、携帯番号なんぞを聞かれて焦ったりしつつも「あーこういうノリもなんか悪くないな」などと1人思いを馳せた。

・宇宙船に行けば言葉を交わす対戦相手がいつも大体何人かいる、というのが当たり前になった。いつの間にか人の輪も広がっていき、気付いた時には東福生や立川にも比較的多くの「鉄拳仲間」と呼べる人達がいた。水面に広がる波紋の様に緩やかに広がり、それにつれて宇宙船のメンツも段々と増えていった。相変わらず1セットしかないのにも関わらず…(苦笑)
宇宙船は常にガチ勝負や意見交換が出来る良い環境だった。基本的に皆負けず嫌いで向上心が強く、当然のことだけれど鉄拳が好きだった。毎晩の様に対戦し、対戦の数だけ一喜一憂した。

ピュアで人見知りで無知で無謀で孤独な雑魚…人は捉え方や考え方1つで1年も経たずこうも変わる。
環境を変えようと思ったらまず自分自身から変わらなくてはならない。ただ待っているだけでは何1つ変えられないからだ。

そして、そんな精進と躍進を繰り返した日々が続き、ある程度のところまで辿り着いて少し成長の幅も一段落した頃。

衝撃的な対戦動画に出会った。

後にも先にも『シャオ神』などと仰々しい言葉で形容出来るのは、やはり彼以外にいないのかも知れない。それだけ強烈なインパクトを放ち、類い稀なる圧倒的な「強さ」を持ったシャオ使い。それが…

浅野さんだった。

5.1後編へ続く

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