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大学授業一歩前(第31講)
はじめに
大学受験一歩前が投稿のメインになっていましたが、今回は大学授業一歩前の記事です!そして大学授業一歩前の閲覧数がなんと一万五千を超えて、読んで頂いた方々、そして記事を書いて頂いた方々本当にありがとうございます。今回は、工学院大学学習支援センターの野中大輔先生に記事を書いて頂きました。お忙しい中の作成ありがとうございます。
プロフィール
Q:ご自身のプロフィールを教えてください。
A:工学院大学の学習支援センター講師をしています。工学院大学に来る前は、国立国語研究所の非常勤研究員や河合塾のK会というコースの講師などをしていました。英語を教えるのと英文法(言語学)の研究がメインですが、辞書、翻訳、講演などのお仕事をいただくこともあります。翻訳書にはシッダールタ・ムカジー著『不確かな医学』(TEDブックス、朝日出版社)があります。昨年は教育研究会Festina Lenteで「言語学という選択肢」という講演を行いました。講演内容のnote記事をこちらで公開しています。
オススメの過ごし方
Q:オススメの過ごし方を教えてください。
A:大学では自分の好きなことを学ぼう、将来の役に立つことを学ぼうなどと考えると、かえって何をすればいいんだろうと悩んでしまうことがあるかと思います。そんなに大げさに考えず、何かちょっと気になるなと思うことがあったら素通りせずに調べてみる。そんな感じでいいと思います。きっかけは何でもいいんです。たまたま取った授業で紹介されていた考え方に「へぇぇ」と思ったり、ウェブの記事で見たエピソードが妙に記憶に残ったり。それを少し自分で調べみたり、関係しそうな本を読んでみたり、それをもとにああじゃないかこうじゃないかと考えてみたり、そういう経験が意外な形で将来の仕事やその他の重要な場面につながるんじゃないかと思います。
必須の能力
Q:大学生に必須の能力を教えてください。
A:気になることを大切にするというのは、実は意外と難しいことでもあります。何か気になることがあっても「でも、これはくだらないことかもしれない」と思って、それ以上考えないようにしてしまったことはありませんか?まずは、どんな些細なことでも、気になることは大切にしていいんだと思ってみましょう。「能力」というもより心の準備の話ですが、それがすべての学びの原点なのではないでしょうか。
学ぶ意義
Q:先生にとっての学ぶ意義を教えてください。
A:高校生のころ、whileという英単語が「~している間に」と「~なのに、一方で」という異なる意味を持つことを知り、気になりました(関連してat the same timeもbutを伴うときなどに「けれどもやはり」といった意味になることに気づきました)。大学に入って言語学を学ぶと、whileがどうして複数の意味を持つかについての研究があることを知り、こういうことに興味を持っていてよかったんだと背中を押してもらえた気がしました。自分の興
味を大切にしてそれを育むことの勇気をもらえる点は、私が言語学という学問を学ぶ理由の一つです。
オススメの一冊
Q:今だからこそ読んでほしい一冊を教えてください。
A:金子郁容著『ボランティア もうひとつの情報社会』(岩波新書)です。タイトルからボランティアの良さをさぞポジティブに語っているのだろうと思うかもしれませんが、この本は自発的に何かをやることに伴うつらさ、不安、自己批判といった一見マイナスに思えるものに目を向けているのがポイントです。その上で、そういった弱さから生まれる力の可能性が語られています。私はこの本から「自分が切実に感じた何かについて一歩踏み出して行動するという生き方」を学びました。ボランティアなんて偽善ではないかと疑問に思っている人も、そもそもボランティアに何の興味もない人も、どんな人にとっても自分の生き方を見つめ直すきっかけが得られる本ではないかと思います。
メッセージ
Q:大学生へのメッセージをお願いします。
A:私の場合オンラインで仕事をする状況が続いていて、教室で学生に会う日はまだしばらく先のことになりますが、いま自分が学生だったらどんな気持ちだったろうかと考えてしまいます。「ピンチをチャンスに」といった言葉で若者を鼓舞する人もいるでしょうが、まだまだ先の見えない状況を思うと、自分にはとてもそんなことは言えないなと思います。ただただ、学生のみなさんが健康でいられること、そして少しでも穏やかな気持ちになれることを願っています。
おわりに
今回は野中大輔先生に記事を書いて頂きました。お忙しい中の作成ありがとうございました。
まずは、どんな些細なことでも、気になることは大切にしていいんだと思ってみましょう。
この姿勢を私も大切にしたいと思います。疑問から新たな学びが生まれることもあると思います。次回もお楽しみに!!