見出し画像

大学授業一歩前(第135講)

はじめに

 今回はフランス文学がご専門の高遠弘美先生に記事を寄稿して頂きました。神保町の書店、PASSAGEでお会いをし寄稿の御依頼をした所、二つ返事でご了承して頂いただきました。是非、今回もご一読くださいませ。

プロフィール

Q:ご自身のプロフィールを教えて下さい。

A:高遠弘美、たかとお ひろみ と言います。2022年の3月まで明治大学商学部・大学院教養デザイン研究科で、フランス語や外国文学を教え、ゼミ、修士論文、博士論文の指導などをしていました。専門はフランス文学です。とくにマルセル・プルースト『失われた時を求めて』を中心に仕事をしてきました。
 現在光文社古典新訳文庫から全14巻の予定で個人全訳刊行中です。

オススメの過ごし方

Q:大学生にオススメの過ごし方を教えてください。

A:本を読む、映画を見る、クラシックやジャズを聞きこむ、芝居を見る、展覧会へゆくなどこれと思えるものが見つかるまでは多趣味でいいと思います。その代わり、自分が没頭するものが見つかったらとことんのめり込むこと。損得を考えない。昼食を抜いても好きな本を買うくらいの「凝り方」が必要でしょう。

必須の能力

Q:大学生に必須の能力を教えてください。

A:・日本語能力。これは古典作品や哲学作品も読めるだけの力と経験を積む必要があります。語彙を増やすことはもちろん大切です。
・外国語能力。あえて言えば、生半可な英語の会話能力など要りません。英語以外の言語をも積極的に習う意欲が肝要です。可能なら辞書を引きながらでも原書を読む力をつけること。
・人の話を聞く能力。対外的な議論術など目指さなくてもよいと私は思っています。それよりも自身の内的世界を豊かにすることのほうがよほど大切です。

学ぶ意義

Q:先生にとっての学ぶことの意義を教えてください。

A:生きることの意義を他人に訊きますか? 学ぶことは人生を深く生きることです。

オススメの一冊

Q:今だからこそ大学生に読んでおいてほしい一冊を教えてください。

A:実利的な書物、ハウツー物、軽薄な成功論は一切読まなくてもいいと思います。
 と同時に、「大学生」一般に共通する「読んでほしい本」などありません。人みな、生まれた家庭も育った環境も、いま生きている場も違います。本は自分で見つけて読んでゆくものです。
 ただ、本は精神に栄養を与え、精神を鍛えるということを忘れてはいけません。そうでない本など切り捨てて構わないのです。

メッセージ

Q:最後に学生に向けてのメッセージをお願いします。

A:深く学ぶ、ということをつねに考え、目標として下さい。フランス語であれば「仏検」などを目標とするのではなく、フランス語で書かれた本を読み、フランス語で話される芝居や映画を見て、自身の世界を拡げるということを目指して下さい。
 自分を保つということは簡単なようで意外に難しいものです。ときには世間と妥協せざるを得ないこともあるでしょう。そういうときに気が楽になる呪文をお教えしておきましょう。「面従腹背」。自分をしっかり保つことができれば少しくらい相手に譲っても構わない。そう考えれば呼吸が楽になるかもしれません。

おわりに

 今回はPASSAGEのご縁から高遠先生に記事を寄稿して頂きました。大変お忙しい中記事を作成して頂きありがとうございました。

昼食を抜いても好きな本を買うくらいの「凝り方」が必要でしょう。

 本は脳への栄養補給源なので、昼食を抜いても栄養は摂れると思います!!先生ご自身もPASSAGEで棚主をなさっているので、是非お越し下さいませ。

次回もお楽しみに!!



いいなと思ったら応援しよう!