2024大学ラグビー関西リーグ戦:天理対京都産業を質的分析で見てみた【簡易版】
みなさんこんにちは
大学ラグビーも最終節、いかがお過ごしでしょうか
今回は11/30に行われた関西大学リーグ、天理大学対京都産業大学の試合についてレビューをしていきたいと思います
今回はメンバー表のみとなります
それでは見ていきましょう
天理大学のラグビーを質的に分析する
天理のラグビーのイメージを上げるとすると、バックローを中心とした激しいタックルを起点とする展開ラグビーといったところでしょうか
数試合前からSOとFBの配置転換などもあり、面白いラグビーをしているように思っています
天理のアタックを見てみると、構造自体は比較的シンプルな形をとっているように見えます
9シェイプと10シェイプに3人ずつFWの選手を配置する形を基準としながらも、その後に続くバックスラインはシングルラインで構成されています
しかし、バックスの選手のパススキルが高く、早いパスで位置的不利益を完全に切ることができるので、アタック自体は非常にスピーディーに見える要素があるでしょう
天理のアタックシステムの中で中核を担う、肝となっている選手はSOに入っていた上ノ坊駿介選手であるといって過言ではないでしょう
元々15番や13番を主戦場としている選手ですが、今シーズンでは1番を務める機会が多くなっています
その結果、「アウトサイドで勝負をできる選手がインサイドに立っている」という状態が生まれています
結果として(結果としてなのかは分かりませんが)、アタックラインの勢いがより一層加速することとなり、ラインの深さを出すことなくスピードを出すことができるようになっています
また、アタックラインに参加した選手のパススピードと距離の精度も高く、ライン自体は浅い構造になっているにも関わらず、素早く外の空間にボールを動かすことができていたように見えました
また、どの選手も相手と接近しながらパスを放ることができる選手だったことも大きく影響しているでしょう
直近の日本代表でも求められる選手像の一つと言われていますが、相手に接近して、自分がコンタクトをするのを厭わずに直前でパスを放ることができるスキルは非常に重要とされています。
天理の選手、中でも上ノ坊選手は接近してパスをする能力に長けており、絶妙なランコースを走りながらパスを放っていました
10番のボールタッチもおそらく意図的に増やしている要素も見えます
京産のディフェンスラインが若干コネクションが切れていた要素もあり、接近しながらパスを放ることで相手に迷いが生まれていたようにも見えました
どの選手もアタックに対して粘り腰でキャリーをすることができたことも大きかったように思います
アタックライン自体が浅い構造もあってコンタクトが深くなることはなかったと思っていますが、コンタクトを受けた位置から食い込むように前に出ることができる選手が多く、最終的なラック位置はかなり奥に差し込むことができていたように感じました
今回の試合での特筆事項としては、何よりもディフェンスが挙げられるでしょう
低さと激しさを両立しながら、精度もある程度担保されていた結果として京産に致命的なプレッシャーをかけ続けることができていました
低いタックルが続くと前に出切れない時もあるのですが、そういったシーンも少なく、低いタックルをどの選手も安定して実行できていたのが素晴らしいですね
また、天理の選手は1人で相手を完全にテイクダウン=倒し切るところまで持っていくことができるのも大きな影響力があったように思います
基本的にはダブルタックルを仕掛けて相手を仰向けに倒す=ドミネイトすることが望ましいのですが、天理の場合は1人でタックルを完結させることができており、その結果そばにいる天理の選手がブレイクダウンに仕掛けることができていました
一方で密度的には若干コンパクトになっているような印象もありました
ラックに近いエリアの密度を上げ、外側は流す形でカバーリングをしていたように見えます
ただ、結果として外側のエリアをがっつり攻略されたような要素はなかったように思うので、そこをしぶとく狙ってくるようなチームと当たった時にどうなるか、というところに注目していくのもいいかもしれません
京都産業大学のラグビーを質的に分析する
京産のラグビーは、パンチのある留学生のヘビーなキャリーを中心にゲームメイクをし、外側を走力のあるランナーで仕留める、といった形が多く見られてきたかと思います
しかし、今回の試合ではうまくいかなかったシーンが多かったように思います
順番に見ていきましょう
京産のアタックシステムはある程度9シェイプ偏重型で、9シェイプをある程度当てこんで崩してから外展開をする、といった形が平均的なスタイルになってくるかと思います
9シェイプにはフロントローの選手や石橋選手、フナキ選手といったパワー型の選手が集まっており、グッと前に出ることを意識しているのではないかと思います
ポルテレ選手も京産の選手の中ではペネトレーター役を期待されているかと思いますが、今回の試合では比較的静かなことが多かったように見えました
当然ポルテレ選手も何度もボールキャリーをしていたのですが、今回の試合では天理の選手のタックルが明らかに低く刺さってきており、人体の構造上質量が担保されていない脚を掴まれることで簡単に倒されるシーンが多かったかもしれません
明らかにポルテレ選手も低いタックルを嫌がっており、少し跳ねるようなキャリーが多くなっていたように思います
バックスラインの構造を見るとこちらはある程度シンプルで、バックスラインにボールが渡った後はシングルラインでアタックをしていたように見えました
10番の吉本選手や12番の辻野選手が変わるがわるボールを受け取り、大きくボールを動かしていました
13番のエロニ選手も中盤で強烈なキャリーを見せていましたが、こちらも天理の粘るタックルに捕まるシーンが多かったように思います
アタックラインは全体的に幅と厚みをあまり出せなかったシーンが目立っていたかもしれません
そもそもの選手間の距離自体もある程度近い様相を見せていたのですが、ポッドを配置して厚みを出そうとするとラインが重なった結果幅が出ず、幅を出そうと広く配置するとラインが浅くなって相手に捕まりやすくなってしまっていたりと、うまくコントロールが効いていなかったような印象を受けました
アタック自体はSHの土永選手がかなり意識的にリズムを上げようとするシーンもあってテンポが出ていたのですが、全体的にはそのテンポに乗り切れていない選手も目立ち、結果的に浮いている選手も一定数いたように思います
ポッドとして定位置に入り切れていないFWの選手や、スルーされた結果効果を発揮できていない選手など、全体的に効率が悪くなってしまっていたようにも見えました
一方でキックに関してはある程度効果的に使うことができていたようにも見えました
前半は風の援護もあってかハイボールの距離感がちょうどいい位置にコントロールできており、それに対抗する天理のバックフィールドの選手が明確な対策を取れていなかったこともあって容易に獲得することができていました
ロングキックも比較的伸びる様子を見せており、エリアの部分でも悪くない戦い方をすることができていたように思います
ディフェンスは少し苦戦気味といったところでしょうか
6番の日吉選手や7番の伊藤選手といった、京産らしいハードタックラーが何度もいいタックルを見せてはいましたが、全体的には押し込まれている要素が強かったように感じます
受け身になってしまった要因としては、相手のアタックが全体的に浅い傾向にあったことが挙げられるかもしれません
京産、ひいては関西のチームは相手との空間を埋めるように前に出て鋭くタックルに入るのが持ち味ですが、今回の試合では天理はかなり全体的にラインを浅く、それでいて展開を早くしていたために持ち味の空間を埋める動きを見せることができなかったのではないかと見ています
また、浅いアタックラインによって迷いが生じていたという要素もあったかと思います
特に天理10番の上ノ坊選手の動きには手を焼いているようにも見え、キャリーとパスのどちらかがわからないままかなり接近してくる同選手に対して1人の選手が寄せすぎ、もう1人の選手がうまく詰められないことによってずらされるシーンが多かったように思います
セットピースに関しては、ラインアウトでの安定をもう少し生かし切りたかったところではないかと思います
ジャンプの質も高く、ボール自体は安定的に獲得することができていたのですが、モールを組んでからトライを取り切るという必殺の形を天理にうまく封じ込められていたような印象も受けました
スクラムは非常に難しいところだったように思います
少し首を傾げる様子も見られたり、レフリーの肌感覚にうまくコミットできていないような印象もありました
大学選手権ではこれまで笛を吹かれた経験のないレフリーとのコミュニケーションも出てくると思うので、うまく修正が求められるところです
まとめ
今年の関西は最終節まで順位が決まっていない部分が多く、非常に熱のある試合を見ることができたと思っています数シーズン前の天理大の優勝時以降優勝からは遠ざかっているので、またあの舞台に立つ関西のチームを見てみたいですね
今回は以上になります
それではまた!