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2024全国大学ラグビーフットボール選手権大会:早稲田対京都産業を質的分析で見てみた【簡易版】

明けましておめでとうございます
今年度の大学ラグビーも後少しなので、楽しんでいきましょう

今回は1/2に行われた大学選手権準決勝より、早稲田大学対京都産業大学の試合についてレビューをしていきたいと思います

今回も質的分析のみの簡易版です
メンバー表はこちら

それでは順番に見ていきましょう


早稲田大学のラグビーを質的に分析する

早稲田のラグビーは、関東対抗戦を通じて見られた圧倒的な攻撃力と、激しく低いタックルによる堅いディフェンスが特徴として挙げられます
昨年度も同じようなこだわりを持っていたとは思いますが、今年はその二つの柱が顕著に見えているように思います

早稲田のアタックのセッティングは1−3−3−1を基準にしており、一般的な極めて堅実な、一般的なシステムの部類に入っています
SOに入った服部選手がパスで散らすことができる選手なので、位置関係が少しアバウトになっても自分たちの型の領域に持ち込むことができる強さもあるように感じました

また、階層構造はかなり意識していると思います
早稲田の特徴として、ポッドを二層重ねることこと少ないものの、必ずポッドの裏にBKの選手を配置してオプションを作り出しています
先ほど述べたように、少し崩れたようなシーンでもこだわってポッドを配置しており、結果として構造的に高い確率で作り出すことができる空間をかなり効果的につくことができていました

階層構造自体も使い分けをしており、人数をかけてポッドと裏をシステムとして作るシーンと、少人数で動的に階層構造を作りながらアタックをするシーンに分かれていたように思います
特に動的な階層構造を作るシーンでは深い位置でのゲームメイクをできる選手、ディーププレイメーカーであるの中選手がいい働きをしていました

一方でアタック単体を見ていくと大きく上回っていたような様相はなく、むしろ接点の部分で押し込まれているような印象でもありました
その中で早稲田はティップパスと呼ばれるポッド内の接近した選手内で起きる小さなパスや、アングルの部分で小さな優位性を作り、その優位性のもとで前進を図っていたように思います

SHを務めた細矢、宮尾の両選手の捌きのリズムも早く、ラックが安定し切る前だったとしても、ボール出しができる状況だったらボールを動かすといった意識が非常に高かったように感じました
SHがラックから少し持ち出しながらボールを動かす一連のフローも効果的に働いており、ラック際のセッティングが遅い傾向にあった京産のディフェンスに対してマトを絞らせないような効果も見せていたと思います

効果的だったプレーとしてSO服部選手のキックワークは外すことができないでしょう
一度キック前に余裕を持つとグラウンドの半分の距離を越えるようなキックを見せていました
スクリュー回転と呼ばれる縦軸に沿った回転をある程度狙って蹴り込むことができていて、どのキックもかなり距離が出ていたと思います
狙ってなのか偶発的なのかはわかりませんが、結果としてハイパントのような高い軌道で蹴り込むキックは少なく、決勝でどのようなキックワークを見せるかが非常に楽しみです

ディフェンス水準は非常に高く、うまく空間を埋めながらディフェンスラインを押し上げることができていたように見えました
京産のアタックラインが原則として深く作られていたことも相まって、相手の選択肢を潰しながら、消極的なキャリーを誘発できていたと思います

タックル自体も一定水準の精度を保つことができていて、相手の強いキャリアーに対して、人数を割きながらも致命的なピンチに陥るようなシーンは少なかったように見えました
うまく相手の体に絡みながらボール出しを遅らせることができていたのも効果的に働いていたように思います

ただ、後半見られたようなシンプルな接点の部分になると少し相手に押し込まれていたようにも感じます
接点単体の部分では京産の方に一日の長があるような形で、少しずつ前に出られるシーンがありました
低くタックルに入ることでロングゲインこそ抑え込んでいましたが、ゴール前のようなほんの少しの前進の積み重ねがスコアになるエリアでは、結果的にトライまで持ち込まれていました

京都産業大学のラグビーを質的に分析する

京産のラグビーに特徴的なのは、何よりも外国出身選手を中心とした攻撃的でフィジカルの部分で相手を上回ろうとする様相です
セットピースも強烈で、スクラムを強みに取り上げられることも多いでしょう

ただ、今回の試合では全般的にフィジカルの土俵に立つことができなかった、または持ち込むことができなかったように見えたのが正直なところでしょうか
スクラムでは押し込まれるシーンも多く、普段のような試合運びはできていなかったのではないかと思います

普通の相手であれば相手を圧倒することも多かった外国出身選手が爆発しきれなかったことも苦戦の要因、苦戦を物語っているでしょう
ポルテレ選手とフナキ選手はエッジに配置されていることが多く、外側のエリアでの質的優位性を見て配置されているように思います
実際、外側のエリアで相手のBKの選手とマッチアップが起きた時はうまく前に出られていたシーンもあったように見えました

一方、中央付近でボールを受けた時は相手の厚いディフェンスに阻まれ、1人はタックルを外すことができたとしても、後続の選手のタックルに捕まって結果として効果的な全身が果たせないシーンがほとんどだったように感じます
タックルに対して最後まで粘れる分、オフロードを狙うことができそうなシーンでも倒れきってしまっていたのが印象的でした

アタックの構造としては階層構造をある程度意識したアタックはしていたように思います
しかし、早稲田の選手に比べるとポッドからBKの選手への下げるパスのようなパスの部分での精度が低く、フロントラインの選手が相手に接近しきれないこともあったように見えます
結果的にただ人を経由しながらボールを下げるだけになってしまい、早稲田のディフェンスの餌食になっていました

ポッドは3人構成を基本的な単位として、BKの選手もシーンによっては組み込みながらアタックを繰り広げていました
特に外側のエリア、ピストンアタックの様式で折り返してアタックする時ではBKの選手を多く組み込んでいたシステムで動かしていたように見えました
サポートの位置関係もよく、ポッドの動きの中でミスが起こらない限りはアタックは安定していたように見ています

9シェイプは苦戦傾向にあったと見ていて、空間を早稲田のディフェンスにうまく潰されてしまっていたように感じました
京産の9シェイプは比較的キャリーをすることになる選手が絞られやすく、それでいて加速することができていないのでタックルで容易に倒されてしまっていたように思います
もう少し加速するタイミングやコース、ティップパスのような細かく打点を変えるような動きがあれば違ったかもしれません

アタックライン自体を見るとかなり深く、また広さもあるので外への展開はやりやすそうに見えました
ただ、選手の移動による優位性の創造はなく、スタート時点での位置関係でしか優位性を作ることができていませんでした
パス自体が長く、浮くような形になることも多く、ラインスピードのはやい早稲田のディフェンスからすると、比較的止めやすいアタックだったかもしれません

キャリー自体を見ると、接点で粘ることができていれば前に出ることができていました
ラッチングによるサポートはある程度安定していたので、姿勢をキープできれば前に出られていたと思います
一方でエリアによっては相手がテイクダウンを優先して低く入ることも多く、早く倒されることによって前に出られないフェイズも見られました

キックに関しては全体的に苦戦した印象でしょうか
土永選手のロングキックも要所で見られていましたが、全体的にエリアコントロールの部分で苦戦していたような印象で、早稲田の服部選手のロングキックで大きくエリアを取られるシーンも多かったように思います
自分たちのキックも少し長かったり、チェイスの質が悪かったりと、キックゲームを安定して動かすことができていたような印象は得られませんでした

ディフェンスに関しても苦戦していたことでしょう
ディフェンスのセットやフォールディングが遅れるシーンもあり、相対的にスピードのある早稲田のアタックにかなり効率的に崩されていたようにも見えました
タックルの完成度の部分でも、要所で精度が落ちるシーンもあり、外で大きく崩されたりと、全体的に前に出られるフェイズが増えていたように感じました

まとめ

一昨年度は早稲田がほんの少し上回り、昨年度は京産が圧倒した本カードですが、今年は早稲田が多くの時間で優位に試合を運ぶ結果となりました
ただ、京産のラスト10分間の攻撃力、粘りの部分に関しては関西上位校としてのプライドを見ることができました

ついに残すはあと1試合となったので、今年も一ファンとして走り抜けたいと思います

今回は以上になります
それではまた!

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