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2023-24シーズン:スピアーズ船橋・東京ベイの新加入選手を数値的に比較してみた

みなさんこんにちは
大学ラグビーシーズンお疲れ様でした

順調にリーグワンの各チームから新加入する大学生が発表されてきています

UNIVERSISとしてはこの辺りの話題を外すわけにはいかないだろうと、気持ち新たに数値的な分析を始めた次第です

第1回ということで、前シーズンの覇者でもあるスピアーズ船橋・東京ベイの新加入選手についてスタッツをつけてみたので、よかったらご覧ください

分析に伴う諸々の定義は以下の通りです

  • 大学生の分析は直近の三試合を対象とし、リーグワン側の選手に関しては「比較をするポジションとして出場している直近の二試合」を対象とする

  • JSPORTSオンデマンドで配信されている映像を分析対象とし、当該試合が配信期限を過ぎている場合はそれに応じて対象試合を減ずるものとする

  • 大学生と比較するリーグワン側の選手はUNIVERSISの独断と偏見で決めるものとし、意見・要望等は必要に応じて受け入れるものとする

正確にいうと「この選手はこの選手とポジション争いしてほしいなぁ」という個人の願望が反映されているので、「そんなわけないでしょ」という意見もごもっともな場合があります
そういう場合はぜひコメント等残していってください

※Adj. Numbers:大学生の三試合のスタッツの平均値について、大学生側の出場時間とリーグワン側の選手の出場時間とを比べて数値を補正したもの

それでは順番に見ていきましょう


為房慶次朗 - PR3 (明治)

Player Analysis - 為房慶次朗

為房選手は明治の右PRで、試合全体の9割近い時間をプレーする堅実な選手であるということができるかと思います
明治の戦略上では9シェイプの特に外側に入ることが比較的多い選手で、キャリーをする回数自体はそこまで多くないですね
9シェイプをダミーとして裏で動かすプレーも多かったので、セットはしても裏を通されることが多かったようにも見えました

むしろ、ブレイクダウンへのサポート回数が多く、関連したプレーの中では最も多い数値を示していました
バックローの選手の方が若干よりが早いので為房選手のよりで勝敗が分かれるようなブレイクダウンはそこまで多くなかったかと思いますが、堅実なプレーを見せていたように思います

キャリー自体は大学レベルでは強さを誇っており、大きくあおられるようなシーンはほとんど見られませんでした
ビッグゲインに至らないまでも相手を外して前に出るシーンはいくつも見られており、セットピース以外にも強さを見せていました
一方ボールに関わらない部分では少し戻りが遅いような様子もあり、「明治だからこそのワークレートだった」という要素もあるかもしれません

Player Comparison - 松波昭哉

スピアーズ所属の松波選手も為房選手と似たようなプレースタイルを求められるような選手であるように思います
レベルが上がったことに伴うプレータイムの減少こそあるものの、相対的なワークレートは高い水準を求められていますね

松波選手は9シェイプを主戦場としており、傾向としては中央よりも両サイドのサポートとして入ることが多かったように見えました
スピアーズはLOやバックローに強いキャリアーが揃っており、「ボールを受ける選手」と「サポートに入る選手」の役割分担は比較的明確に決められているように思います
より強い選手に前に出る役割を任せる感じですね

ディフェンス面ではラック側に立っているように見えます
エリアにもよりますがリーグワンではピック&ゴーを積極的に採用するチームはそこまで多くないと思うので、より動きの少ない状況でキャリアーが全身を狙ってくるエリアにPRの選手が配置されているイメージでしょうか

Challenge to LeagueONE

アタックフローに直接関わる部分となるキャリーやパスの部分では為房選手の方が単純計算では多いプレー回数を示しており、一方でディフェンスに関わる水準の部分では松波選手がプロとしての水準を見せているように思います

明治のラグビーは「前へ」が押し出されるFWとBKの強さを活かしたコンタクトを厭わないアタックスタイル、体を張って相手を止め切るディフェンスを兼ね備えたまさに「ハイブリッド重戦車」と呼ぶに相応しいものであると思います

一方スピアーズは体が強く前に出ることができるFWと大きくボールを動かすことのできるBK陣が揃っており、どちらかというとFWのボールタッチが多くなるようなアタックをしています
ディフェンスに関しては相手にもよりますが、どの選手も堅実に体を張る印象です

そのため求められる役割は大きくは変わらないものの、スピアーズでプレーするにあたって為房選手はより一層サポートに徹したプレーが求められるようになってくるのではないかと踏んでいます
明治に比べると外にボールを動かす回数も増えてくると思うので、グラウンドを大きく動いて主体的にアタックシェイプの構築をする必要性も出てきますし、運動量全体も増えてくることでしょう

イジー・ソード - PR3 (拓殖)

Player Analysis - イジー・ソード

ソード選手は恵まれた体格とチームのアタック傾向からボールキャリーを多く求められる動きをしていました
キャリーを求められるためそもそものボールタッチが多く、最大で一試合20回近くのボールレシーブをすることもありました
アタックに関連したプレーの中ではキャリーが比率的に最も多くなっており、パスやラック参加は二の次といったような印象です

プレータイムもPRとしてはかなり多い部類に入っており、分析対象とした三試合ではフル出場を求められていました
悪い言い方になってしまいますがそれだけチームの中では依存されていたということでもあり、リーグワンに行けば用いられ方は少し変わってくるような気もしています

アタックの立ち位置は9シェイプの中央が最も多く、ポッドのサイドにつくようなシーンはほとんど見られなかったように思っています
基本的にはキャリアーとしてボールを受けることが求められているような感じですね

一応はボールを受けてからスイベルパスで裏に下げるようなプレーをすることもありますが、場を動かすほどのうまさはなかったようにも見えました
ソード選手自身が優れたキャリアーなので、上手く使えれば相手を釘付けにすることもできたかとは思いますが、正直拓殖はその辺りをうまく活用できていなかったようにも思います

ワークレートや運動量とも言われるような部分に関しては、個人的には「悪くはないがチーム事情もあって効果的な働きはできていなかった」ということができるかと感じています
数値的に見ると比較的動いているように見えますが、試合を総じてみると全体的に動いているエリアは狭めで、若干セットまでが遅かったようにも見えました

Player Comparison - オペティ・ヘル

ヘル選手はスピアーズの選手の中でも前に出る力が随一の選手であり、ソード選手とも近い体格をしていたので選出しました
ヘル選手自身もまだ若手なのでそう易々とポジションを明け渡すことも少ないかとは思いますが、プレースタイル的にコンタクトが避けられないために怪我で長期離脱する危険性もあり(2024年1月現在離脱中)、同じようなプレイングができる選手は求められていると思います

ヘル選手の売りは何よりもキャリーをした時のインパクトにあると思います
ボールタッチの回数こそそこまで多くはないものの、キャリー回数に対するタックルブレイクの回数が比類のない多さとなっています
毎回のキャリーで相手を弾き飛ばしているくらいの勢いですね
弾いた後の走力もあるので弾いただけで終わることが少なく、コンタクト時点から大きく前に出ることができるのも特徴です

基本的には9シェイプに入ることが多い選手ではありますが、優れたSOがいるスピアーズでは10シェイプに入ることもあり、コンタクトで勝負するエリアを動かしている印象です
大まかな位置としてはエッジで起きたラックからは2ポッド目に立つことが多く、より中央に近いエリアでのコンタクトが求められているイメージです
人数の少ないラインアウトではリフターではなくアタックラインに参加していることから見ても、ヘル選手がどれほどキャリアーとして重要視されているかがわかります

ディフェンス面では守るエリアの影響もあるとは思いますがタックル成功率も高く、体の強さを活かして相手を大きく押し戻すことができています
走力もあるのでキックチェイスではフロントラインに立っていますし、総合的なワークレートも高そうな印象です

Challenge to LeagueONE

ボールレシーブの回数単体で見るとソード選手の方が多く、チームのアタックに対する寄与率は高いということができるかと思います
チーム事情からか出場時間も長いですし、一試合通じてプレーに参加し続けることができる能力はすでに有しているということができるかもしれません

むしろソード選手に求められるようになるものとしては単純なワークレートだけではなく、参加したプレーに対するより優れた効果量はないかと思っています
つまり、「同じワークレートで得られる貢献度を上げる」といったところになるでしょうか
現時点ではソード選手はワークレートは高くてもチームへの好影響という面ではインパクトを与え切ることができていないような印象があるので、この辺りを向上させていく必要がありありそうです

もちろん今後のスピアーズがどのような組み立てをしていくかといったところによって変わってくるかと思いますが、セットピースでの貢献はもとより、アタック・ディフェンス面での貢献度を上げることでチームのセレクションに引っかかってくるかと思うので、その辺りを期待していきたいですね

江良颯 - HO (帝京)

Player Analysis - 江良颯

江良選手は機動力とパンチを兼ね備えた、帝京を優勝へと導いたキャプテンでもあります
体の強さやブレイクダウンでの強さもありますし、走力やパススキルといった攻守両方にわたる器用さも持っている、大学有数のHOであると考えています

ボールタッチの回数としては中程度、パスよりはキャリーの方が多いといった使われ方をしていましたね
アタック参加には柔軟性があって9シェイプにも10シェイプに入ることがありますし、9シェイプに入る時にはスイベルパスを挟んだりとうまさを垣間見ることができます
セットピースの位置によってはエッジに立っていることもあって、さまざまなアタックシェイプに対応することのできる懐の深さがあると思います

ディフェンス面でも体の強さを活かしたタックルをするシーンもありますが、少しタックルミスが目立ったシーンもあり、特に細かいステップに対応するのには苦労していたような印象です
全体的に姿勢が前がかりになっているような様子もあって飛び込みがちになっており、それによってタックルを外してしまう場面も散見されました

Player Comparison - デイン・コールズ

コールズ選手はオールブラックスで長年戦ってきた選手であり、ベテランではありますが走力を生かしてトライも量産してきた選手ですね
エッジエリアに立つことも多く、ボールを受けてから独走することもできるセットピースでの活躍にとどまらない万能型な選手であると感じています

本来たスピアーズの(おそらく)正HOは南アフリカ代表のマルコム・マークス選手なのではないかと思っているのですが、マークス選手が怪我に伴う手術をするために代わりに登録されたのがコールズ選手という形ですね
プレースタイルとしては少し異なっており、セットピースを安定させることは当然のこと、マークス選手はブレイクダウンの攻防に、コールズ選手はジェネラルプレーの安定感に強みがあると思っています

プレー参加数的にはそこまで多くはないのですが、ボールに関わらない部分でのワークレートが高く、グラウンドを大きく動くことを厭わない動きを見せていました
いわゆる「オフザボール」の動きでもあり、数値には表れにくい良さであると思っています

また、試合を見ていて特に気になったのはコールズ選手の「広い視野」です
ディフェンス時により一層発揮されていた良さだと思うのですが、普通のHOの選手に比べると明らかに「首を振る回数」が多かったように見えました
それに合わせて積極的に声や身振り手振りでコミュニケーションをとりながら動いており、「ここは固めたい」と思うような場所をしっかりと埋めてくれる選手でしたね

タックル精度が高いのも高評価ポイントですね
ディフェンス時に主に立っているポジションが中央寄りであるということもあってミスも起きにくいとは思いますが、相手を仰向けに倒すようなシーンこそ少ないものの堅実なディフェンスを見せており、相手が嫌なところをきっちりと守ってくれていたように思います

Challenge to LeagueONE

同ポジションということもあってコールズ選手をチョイスしましたが、身長的にはコールズ選手が14cmほど高いということもあり、一概に同じものが求められるというわけではないと思っています
特にセットピースの部分では江良選手の170cmという小柄な体格はどのように転ぶかわかりませんしね

数値的にはボールを動かすという点においては十分なパフォーマンスを発揮することができているとは思いますが、ボールに触れない位置での動き方の精度というものは求められてくるのではないかと思っています
コールズ選手に限られた話ではありませんが、特にコールズ選手と同じ水準を求めるのであればFW的なイメージ以上の広い視野は必要になってくるかと思います

ディフェンス面で言うと、もう一段階タックルの質は上げていきたいところではないかと思います
相手チームにもよりますが、リーグワンではHOが守ることの多いエリアでもWTBの選手がムーブで仕掛けてくるようなシーンもあり、質的に優位性を取られた状態でいかに相手を確実に倒すかといったスキルも必要になってきそうですね

梁川賢吉 - FL (筑波)

Player Analysis - 梁川賢吉

梁川選手は堅実に体を張る筑波のFWを体現しているような選手で、走行距離も長く移動量的には高いワークレートを示している選手であると思っています
プレーへの参加回数はそこまで高くはないですが、アタック・ディフェンスの両面で穴を埋めるような動きをしていました

ボールタッチは平均5回ほどとあまりボールに触れる機会の多い選手ではありませんが、倍以上のラック参加数を示しており、アタックへの貢献度は比較的高いものがあるかと思います
攻撃的なムーブはしませんがラックをきちんと安定させることができ、全体的にチームを落ち着けるような働きをしていたように見えました

そのような傾向もあってか全体的にサポート寄りのプレー・性能をしてるので、味方としっかりコミュニケーションを取ったりとプレーの中心選手になっていましたね
ディフェンス時もしっかり動いて穴を埋め、できたラックに応じてしっかりとフォールディング=ラックを挟んで逆サイドへ移動したりもしていました

一方で攻撃面に関してはチームに勢いを与えるようなプレーはそこまで見られず、キャリーをしてもグッと前に出るというよりかはラックを安定させる方に注力しているような印象を受けました
近年のバックローに求められているインパクトという点では他校の同ポジションの選手の後手に回っている感じですね

ただ、ラインアウトに関しては高いスキルがあり、リフトやジャンプの良さもさることながら相手ボールに対する読みからスティールも見せていたりと、挑戦的な姿勢もしっかりと見せていました

Player Comparison - ピーター・ラピース・ラブスカフニ

ラブスカフニ選手は日本代表のキャップを有する経験豊かなFLで、派手なプレーではなく堅実なプレーで体を張るタイプの選手ですね
プレー一つとってもスキルと体の強さの水準が高く、チームのアタック・ディフェンスに安定感をもたらすことができます
(個人的には2019W杯ロシア戦でのリップから独走トライした時のラブスカフニ選手が大好きです)

梁川選手と似たような体格であるラブスカフニ選手ですが、チームにより高身長の選手が揃っていることもあってかラインアウトではメインジャンパーではなさそうな印象があり、人数が少ないライナウトではアタックラインに参加することが多いイメージです

アタック面では動きが大きくなることの多い10シェイプに入ることが多く、ボールを積極的にもらいにいくというよりはサポートプレーに徹しているような感じですね
ラックへの参加回数がその堅実さを示しています

特筆すべきはディンフェンス面での動きで、タックル成功率もさることながら凄さは「総タックル数」にあります
調査した二試合ではミスタックルがなく結果的に100%となったタックル成功率の一方で、驚くべきは一試合平均22回以上のタックル数です
ディフェンスでのポジショニングする位置に相手が多く仕掛けてくるという背景を鑑みても驚きの数字です
しっかりと穴を押さえてくれているというところが見て取れますね

Challenge to LeagueONE

走行距離や絡んだプレーの数から見ても梁川選手の運動量も悪くはないのですが「ここを伸ばした方がいい」という点を挙げるとするならば、おそらくは「ディフェンス面での貢献」といったところになってくるかと思います

ポジショニングの影響があるとはいえラブスカフニ選手は20回以上のタックルを毎試合見せており、一方の梁川選手は10回程度という数値に収まっています
リーグワンではより高い強度でより多くのコンタクトシチュエーションが起きるということを鑑みると、より体を張ったプレイングが必要になってくることになりそうですね

また、アタック面で前に出る意識というのも伸ばしていくと面白いかもしれません
梁川選手のプレーは安定感がある一方でチームのモーメンタムへの貢献度は若干低く、少しテンポが変わってしまうシーンが見られています
スピアーズのラグビーはバックファイブの選手の前に出る勢いによってモーメンタムを変えている印象もあるので、この辺りはより攻撃的になっても面白いかと思います

溝渕元気 - SH (関西)

Player Analysis - 溝渕元気

溝渕選手は良いアタック感を持ったSHで、パスをメインにチームに勢いをもたらし、ゲームを動かす選手です
プレータイムも長くチームに大きな貢献をしていることでしょう
どちらかというとパス特化型といった感じですかね

関西大学のアタック傾向の影響もあって少しテンポは遅めなアタックを繰り広げてはいましたがパスの精度は高く、次のラックの読みもいいのでセットまではかなり早いペースでできていたと思います
惜しむらくは関西のアタックテンポで、全体的に遅いのでそのセットの速さを活かしきれていなかったようにも見えました

近年のSHとしては珍しくそこまでボックスキックを蹴らないタイプのSHで、パスでボールを捌くことが多かったですね
ボックスキックの質自体は改善の余地もありそうな雰囲気で、15mほどの距離で蹴ってはいますが対空時間が短く、結果的に効果的なキックにはなりきれていないような感じでした

ディフェンスに関しては一般的な水準といったところでしょうか
相手によってはミスが嵩むところが気になりますね
基本的にはラックの後方に立っているので最前線に立つことはそこまで多くはありませんが、バッキングアップをすることが多いポジションなので1対1になるシーンも多くなっていたように思います

Player Comparison - 藤原忍

スピアーズの攻撃を支える攻撃的なSHで、ボールタッチの多さとボールをテンポよく動かす良さを兼ね備えています
怪我で薄くなっているスピアーズのSH層を支えているという点では重要度もかなり高そうですね

パス回数は一試合で約50回程度となっており、プレータイムも長いのゲームへの貢献度は高いかと思います
SOにゲームをコントロールできる選手が揃ってはいますが、藤原選手本人のいい持ち出しなどでSHからゲームをコントロールすることもできるのではないかと思っています

特徴的なのは良いサポートコースから生まれる効果的なキャリーで、回数こそ少ないものの1回のキャリーから盤面の流れを変えることができているように見ています
キックの判断や距離感もいいので相手を大きく動かすこともできますし、自分から前に出ることもできる攻撃性が良さとしてあげられるかと思います

Challenge to LeagueONE

アタックに関連する要素の範囲では溝渕選手と藤原選手の間に大きな差異はないように感じています
もしあるとしたらスピアーズのアタックに求められるレベル感でのテンポを溝渕選手が生み出すことができるかといった点でしょうか
関西大学は若干アタックの動きが遅かったので、そのテンポに慣れるのには少し時間がかかるかもしれません

目指すべき水準の部分で大きく変わりそうなところとしては「ディフェンス時の動き」といったところになってくるのではないかと思っています
藤原選手は他選手への声掛けもさることながら、自分が適宜生まれたギャップに入って隙間を埋めるような動きをしており、タックルをするまでは至らなかったとしても「ギャップを作らないようにする動き」という点では大学レベルではあまり求められない動きをしていたように思います

溝渕選手は関西大学時には基本的にラックの後方に立って味方を動かすことをメインの動きとしており、自分から積極的にエリアを埋めるというような動きはしていなかったように見えました
そのためにフロントラインを押さえきれていないようなシーンもあったので、この辺りの発想の転換も求められてくるかもしれません

廣瀬雄也 - CTB12 (明治)

Player Analysis - 廣瀬雄也

廣瀬選手は明治のゲームコントロールを担う3人の選手達の1人で、CTBというポジションからゲームを動かしていくことのできる選手であると思います
ラックからのパスの1stレシーバーになることもあり、大きくボールを動かすこともできる選手ですね

キックが伸びること、FBに入っていた池戸選手がどちらかというとコンタクトに強みを持っていたこともあって少し後ろがかりのポジショニングをしており、アタックでは前、ディフェンスではバックフィールドを守るような形でポジショニングをしていました
相手がキックをしてくるとわかった場合には早めに後ろに下がっていましたしね

アタックでは少し外寄りの位置どりをしており、比較的2ndレシーバーに入ることが多そうな様子となっていました
相手を振り切ることができるほどの走力は見る機会はありませんでしたが、キャリーそのものは安定していたのでどのエリアでのキャリーとなってもミスにはつながっていなかったように思います

ディフェンス時は基本的に後ろを守っているのですが、追いかける動きを少し苦手にしているのかタックル成功率が下がっていましたね
自分よりも前で相手を追いかけている味方選手と動きが被ってしまうことがあり、結果的にワンステップで2人とも振り切られてしまうような状況が何度か見られていました

Player Comparison - 立川理道

日本代表経験もあるCTBとして体を張ることができる名選手ですね
天理大学時代はSOを務めていたこともありゲームを俯瞰的に見ることができる稀有な12番だと思います
近年の12番は少しフィジカルが求められる選手が増えてきていますしね

バーナード・フォーリー選手の負傷に伴い現在はSOを務めていますが、廣瀬選手に求められるであろう選手像に照らし合わせて立川選手をピックアップしました

アタック面では似たような要素を持つ両選手ですがディフェンス面では少し毛色が異なっていて、キックを主体に後方を守る廣瀬選手と体を張ってフロントラインを守る立川選手といった感じですね
ディフェンスラインではFWとBKの境目のあたりという重要な位置どりをしていて、10シェイプで仕掛けてくるFWの選手に対してもタックルを仕掛けにいくような立ち位置をしています

アタック面ではパスの多彩さが目立っていて、表裏の使い方も長短の投げ分けも素晴らしいものがありますね
スピアーズの選手はタレントが揃っているのでどのエリアでも勝負することができるため、投げ分けをすることで相手の狙いを外すことができます
そのため、視野の広さも合わせてどちらかというと「体を張れるSO」といった要素が強い選手ではないかと踏んでいます

Challenge to LeagueONE

数値的に見ると、ディフェンス面でのタックル数の差が目立っていますが、これは主にディフェンス時の立ち位置によるものではないかと思います
廣瀬選手に比べると立川選手の方がより前線に立っているという要素があり、エリア的には中央であることから相手とのコンタクトを避けられない状況という形になっています

一方廣瀬選手は後方を守っているため逆サイドでのラインブレイクなどへの対応が難しく、キック対応もあるので安易にコンタクトに参加できないという状況もあります
スピアーズでどのようなポジションにチャレンジするかは分かりませんが、この辺りの転換はもしかするとあるかもしれませんね

また、ゲームコントロールを担う選手の増減に伴って求められるボールタッチの回数やパス回数も変わってくるかもしれません
現時点ではBK3の選手はアタック時はエッジに張ってボールを待っていることが多く、明治の池戸選手のように積極的にラックからボールをもらいにいくような雰囲気ではないので、廣瀬選手の相対的なボールタッチは増えていくのではないかと思っています

山田響 - UTB (慶應義塾)

Player Analysis - 山田響

山田選手は今シーズンの慶應義塾のラグビーの中心となった選手で、自分のプレーで大きく勢いをもたらすことのできる選手です
コンタクト単体では後手に回ることが多いですが、走り込むコースやキックを交えたキャリーで場をいい意味で荒らすことができる存在であると見ています

重要さを表すかのようにプレータイムも長く、4年間通じて様々なポジションにチャレンジしているのもポイントですね
今シーズンはSOに注力していたものの、アタックセンスとしてはBK3に近いものがあったような気がします

SOということもあってゲームを動かす役割を担っていたかと思うのですが、ボールを動かすことに関して言えば他チームの専門のSOの選手の方に一日の長があったように見ています
キックもできますしパスも下手なわけではないですが、「ゲームのコントロール」に関しては苦労していた印象です

その代わりランニングセンスやそれに伴うキックスキルに関しては優れたものがあり、特にシーズンの早稲田戦で見せてチップキックから再獲得してビッグゲイン・トライとなったシーンは素晴らしいの一言ですね
ステップも上手いですし、走り切るスピードもあるのが強みですね

一方でディフェンスは総じて見ると改善の余地はありそうです
エリアによっては前に出てくる山田選手ですが、少し視線を切ってしまったり内側に立ちすぎたりして外を切られるシーンが多かったように思います

Player Comparison - 木田晴斗

現時点で山田選手がになっている立ち位置とは違うポジションですが、「利き足が左」という観点で木田選手がポジション争いの土俵に出てくるかと思い、ピックアップしました

木田選手は力強いランニングと鋭角なステップが強みのWTBで、日本代表候補にも絡んでくる世代を代表するランナーです
スピードもありますし、自分が勝負するエリアがはっきりしているという点で相手を自分の土俵に持ち込むことができる強さがあると思います

基本的には自分のポジションを大きく変えることがないのでアタックへ絡む回数は少なめですが、キックチェイスやラインのセットといった労力を要するシーンでは堅実に動いており、「外で勝負できる」という相手へのプレッシャーを与えているように見えました

ディフェンス面ではミスも少なく体を張ったタックルをすることができており、BK3の構成によって求められる動きが違っても安定したフィールディングを見せています
ライン参加の重要度が高いのかブレイクダウンへの絡みはないですが、しっかりと穴を埋めてくれる感じですね

Challenge to LeagueONE

この一年で担当してきたポジションが違うこともあってかスタッツできには大きな違いが出ていますね
特にSOといったボールタッチの多いポジションを担っていた山田選手の方がアタックに関連したスタッツに関わる数値が多くなっています

山田選手がどのポジションを主に担うようになるかは分かりませんが、もしWTBを担当するようになれば決定力といった部分はかなり重要視されると思うので、この辺りは安定感と工夫が求められるかもしれません

また、ディフェンス面では似たような動きをしているかと思いますが、より戦略的にキックを交えたアタックをしてくるリーグワンの方が、求められるフィールディングの質が高くなってくると思うので、より一層広い範囲での動きを研ぎ澄ませる必要がありそうです

まとめ

徐々に明らかになってくる各チームの新加入選手情報が楽しみになってきますね
この記事がうまい具合に伸びてくれれば他のチームも記事を書こうと思うので、よかったら楽しみにしててください

今回は以上になります
それではまた!


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