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2024大学ラグビー関東リーグ戦:東洋対大東文化を簡単な数字で見てみた
みなさんこんにちは
ついに2024シーズンも大学ラグビーが開幕しました
今回は9/7に行われた関東大学リーグ戦、東洋大学対大東文化大学についてレビューをしていきたいと思います
まずはメンバー表を見ていきましょう
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次にスタッツです
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それでは順番に見ていきましょう
東洋のアタック・ディフェンス
東洋のアタックシステム
後述しますが、東洋はFWの選手と外国出身のインパクトプレーヤーが如何にコンタクトシーンで前に出ることができるかが重要になってくるようなアタック傾向を示しているように見えました
ポッドの傾向としては9シェイプに3人、10シェイプに3人置くようなスタンスですが、同じフェイズ内で両ポッドが同時に構築されているようなシーンはあまり見られておらず、前フェイズに参加していたFWの選手は浮いているようなイメージのシーンが多かったように思います
要所で13が絡むこともありましたが、基本的にFWの選手の行動規範はシンプルな基準で動かしているように見えました
ゴール前に近づくほどFWを主体としたアタック傾向に振り始め、少し浅い位置に向かって走り込んだFWの選手にパスを出すようなアタックが続く形で攻撃を続けていました
一方でポッド内パスでボールを動かすようなシーンはそこまで見られておらず、キャリー自体はかなりシンプルな構造に終始していたようにも思います
バックスラインのアタックに関してはどちらかというと消極的というか、ある程度組み立てた状態から個々人のスキルによって突破を図るような様相があったように思います
15番の坂本選手や14番のボンド選手が動きとしては目立っていましたが、積極的で手堅い大東文化のディフェンスの網に捕まるシーンも多かったように感じました
また、セットピースからの1stフェイズなどといった重要なフェイズでは前tない的に渋い結果となっており、最初のフェイズからゲインを取り切るといった形にはなっていなかったように見えました
バックローの選手をアタックラインにおいてインパクトを活かそうとしている様子は見られましたが、全体的なスピード感はなく、前に出るという観点では完遂できていなかったのではないかと思います
インパクトプレーヤーとしては7番の森山選手や8番のヴァハフォラウ選手がコンタクトシーンで活躍をしていて、9シェイプのトップに入ったり、後半に生まれたトライではエッジを2人で打開したりと走力と突破力を備えた攻撃的なプレーでチームを盛り上げていました
一方で細かいプレー選択の幅がなく、ボールを持った際はキャリーに終始しているような様相もあったので、相手がきっちりとしたディフェンスをしてくるようなシーンではうまく攻略できていなかったようにも見えました
セットピースの安定感が得られたのは攻守ともにかなりの収穫ではないかと思います
細かい解説は専門の方に投げますが、ラインアウト・スクラム共に精度が高く相手にプレッシャーをかけられるような強度で実行できていたので、セットプレーからはかなり心理的余裕を持ってアタックに繋げることができていたように見えました
東洋のキャリー
先述の通り、東洋のアタックの生命線はFW戦と外国出身選手の突破となっており、そこで前や裏に出ることでモーメンタムを出すような仕組みで動いています
一方でキャリー前後の動きに関してはかなりシンプルな構造をしているので、個々の力に依る部分も大きいのではないかと想像しています
両チームの実力水準によるところもありますがある程度ディフェンス突破を図ることができるようなランナーも多く、うまくずらしたようなシチュエーションでコンタクトに持ち込むことができたような状況では相手を弾くようなシーンも散見されていました
弾くことができる選手は走力も兼ね備えていることが多く、一度の突破から大きく前に出るシーンも見られていました
キャリー回数としては1試合で100回となっており、大東文化の回数を上回ってポゼッションを支配しており、ガツガツ相手にあたりにいくようなプレーをしていたことが想像できます
ただ、ラインブレイクの回数自体はそう多くはなく、算出はしていませんがゲインラインをうまく切ることができなかったシーンもある程度あったように感じているので、効率的か否かの部分に関しては改善の余地もあるかもしれません
キャリーを種別に回数を細かく見ていくと、9シェイプが総じて多く100回のキャリーのうち40回を占めています
一方で10シェイプは全体で3回となっており、SO役を絡めないキャリーが多かったということができるかと思います
ポッドが絡まないキャリーを見ると、前後半で若干様相は異なってはいますが、中央付近で19回、エッジエリアで15回と比較的外展開が少ないという見方もできるかもしれません
ただ、後半にかけて明確にパス回数が増えて外でキャリーが生まれるシーンも増加しており、どのエリアでアタックするかといった要素に関しては前半を終えた段階での修正が入っていたかもしれません
東洋のパス
キャリー・パス比を見ると2:3の近似値となっており、最終的な比率だけを見ると一般的なアタック水準と似た傾向を示しているということができるかと思います
一方で前後半で数値を見比べると前半が5:6、後半が5:9となっていて、後半にかけてかなりパス比率が増加していることが見て取れます
実際キャリー種別を見ても外側のエリアでキャリーをしている回数は明確に増加しており、質的に見ても外側で崩そうとしている様相ははっきりしていたと思います
前半ではあまり見られなかったペネトレーターに外で重点的にプレーさせるといったシーンも増えていたように感じました
パス回数自体は1試合で152回となっており、単純な回数としては一般的かそれより少し多いくらいではないかと思います
ラックからのパス種別を見ると46回が9シェイプへ、20回がバックスラインへの展開となっています
バックスラインへの展開単体を見ると前半は5回、後半は15回となっているので、展開する意図を強く感じられるのではないでしょうか
バックスラインへの展開後は4回が10シェイプへのパスとなり、バックスライン内では40回のパスが生まれています
バックスライン内のパスに関しては後半だけで30回となっている点からも、後半の展開思考が見て取れるかと思います
東洋のディフェンス
タックル成功率を単体で見ると「改善の余地あり」といったあたりの感覚になるかと思います
前後半でタックル試行数も変わっているので一概にタックルミスの数の寡多について語ることは難しいのですが、特定の選手に何度も外されるようなシーンが特に目立っていたように感じます
ディフェンス自体はそこまでガツガツ前に出るといった様子はあまり見られておらず、じわりと前に出て体の強さで相手を止めるような雰囲気を感じました
厳しくダブルタックルでチェックしにいくような感じでもないかとは思いますが、ミスが生まれたタックル以外に関してはある程度きっちり前で止めることができていたように思います
一方で気になるのが相手へのプレッシャーという観点から見るディフェンス面でのブレイクダウンワークで、ジャッカルに成功するシーンもありましたが全体的に淡白な印象もあり、相手がやりたいリズムでラグビーをできているような様子も見受けられたかと思います
大東文化のアタック・ディフェンス
大東文化のアタックシステム
基本的なポッドを用いたアタック構造は一般的なものとそう違いはないと感じますが、1アタック全体を見ると2番のヴァイレア選手がキーとなってアタック全体に勢いを与えているような印象を受けました
ヴァイレア選手自身はハードヒットを中心とした強靭なキャリーが持ち味の選手ですが、自陣深くからの脱出のキックやパスワークを用いた崩しの過程で効果的な参加をしたりと、10番の福井選手とタイミングや位置関係をうまく分担しながらゲームをうまく動かしていました
ポッドの位置関係に関しては9シェイプに3人のFWを置くことを基本としていますが、時折4人でポッドを作ってSHからの投げ分けを誘引し、ラック自体は3人構成にすることで余った選手をスピーディに次の配置へ移動させているように見えました
ただ、特に9シェイプでポッドを構成する選手の位置関係がまばらになっているようなシーンもあり、勢いを出せる選手にパスを出すような方向性があるとはいえ、全体的にサポートが若干遅れるような様相もあったと思います
アタックに関連した要素で特徴的だったのは相手のキックに対するカウンタアタックのシーンで、おそらく意図的にグラウンドの中央・最低限ハーフラインを越えるといったあたりを狙っていたように感じました
バックフィールドは主に原田選手やオト選手といったある程度高さがあって走力もある選手が押さえているため、安定感を保ちつつ次のフェイズに生かしやすい位置関係を作っていたのかもしれません
中央エリアでラックができた時はFWの選手はスプリットするように配置され、大まかには片方に1人、もう片方に3人のFWが置かれます
バックスラインは決まったサイドに位置するというよりも流動性があり、相手の動きを見ながら10・12番を中心に移動しながらすでに配置されているFWのポッドと階層構造を作るような形で次のフェイズを組み立てているように感じました
ただ、先述したようにポッド構成がまばらなシーンが見られたり、位置関係的にポッドに属さない選手が個人の判断で動くことでアタックフローのコースを跨いだりと、チーム全体の意識の方向性は統一されていないような状況もあったかと思います
特に9シェイプと10シェイプを同時に作る意図が見られたシーンで顕著だったのがその曖昧さであり、9シェイプと10シェイプの構成員があまり深さのギャップがないような状態に位置した結果、一回の裏へ下げるパスで5〜6人が同時にパスの範囲外になってしまうような状況も見られました
セットピースからの1stフェイズなどではかなり意識的に階層構造を生かした外を使うアタックを構築しており、こういったシーンではキャリーとパスのバランスがいいヴァイレア選手がうまくアクセントになってアクセントになって外展開への繋ぎを司っていました
外のエリアで作ったラックにも献身的に味方のサポートが入ることで安定感が生まれ、一連のアタックフローをうまく作っていたように思います
キックに関して、東洋サイドにも言えることですが、限局的な打開を図ったグラバーを除けば大局的なキックゲームを仕掛けているような様子はあまり見られておらず、キック自体も距離感などの改善の余地はあるようにも見られました
ただ、ヴァイレア選手やオト選手といった距離の出るキッカーがいるので、タイミングやアタック構成を工夫すればキックゲームで相手を上回りやすい要素はあるようにも感じます
大東文化のキャリー
キャリー回数自体は78回と、東洋側の回数に比べると8割ほどの保持数になっています
実際の試合の雰囲気的にも後半は相手に保持される時間が増えており、プレーエリアも若干押し込まれていたように感じました
キャリー自体はどの選手も強烈で、主にバックローの選手が様々なレーンに顔を出しながらキャリーすることで部分的なミスマッチを作り出すシーンも散見されており、コンタクトから前に出ることに成功していたように思います
バックスにもパンチの効いている選手が揃っているので外寄りのエリアでの1対1でもある程度押し勝つことができるため、ビッグゲインこそ機会が限られていたものの着実に前に出る構造は作れていたように見えました
キャリーを種別に見ていくと、9シェイプは26回、10シェイプは7回といったあたりの回数となっており、4割ほどはFWポッドを使ったキャリーになっていることが見て取れるかと思います
ただ隣の選手へ細かく繋ぐティップパスがほとんど見られていないので、位置的な優位性は作れずに個人レベルでの勝負が連続していたようにも感じました
ポッドを絡めない範囲で言うと中央エリアでのキャリーが13回、エッジエリアでのキャリーが19回となっていることから、傾向的には外側志向ということができるかと思います
比率的には当然中央エリアでの攻防が多かったですが、後述するようにパス比率も多くしていることから、外のエリアに向かったアタック傾向はあるように見ています
キャリアーとしては3番のフィナウ選手が変わらず強さを遺憾なく発揮しており、主に9シェイプでもらうシーンが多かったのですが必ず相手を1人は弾いてからラックに持ち込むことに成功していました
足腰の強さもあって走力も兼ね備えているので、弾いた際に姿勢が崩れずにしっかりと前方向に動き続けることができることも強みに感じました
大東文化のパス
パスに関しては様々な側面において工夫がみられており、同じバックドアへ下げるパスを見ても、ポッドの隙間を縫うような形や内側から体を回すように裏へパスを出す形など、単純なパス以外での動きを練っている様子が見て取れました
一方でフェイズを重ねるごとに単調になるシーンがあったりと、原則に沿ったパス構成といったところはまだ練ることができるかもれません
パス回数は141回と東洋と大差ない回数となっており、キャリー・パス比も1:2にかなり近い比率になっています
先述したように外方向を志向するようなアタック傾向が見られており、少ないパスでコンタクトシーンを作るというよりも、細かくパスを繋いで少しでも優位に立った状態でコンタクトを作ろうとする様子が見られたと思います
ラックからのパスは29回が9シェイプへ、25回がバックスラインと展開されており、数値的にはかなりラックからボールを動かす傾向があるといっていいと思います
10シェイプへのパスはその中の8回となっており、SOを経由したボールはより外方向へ動かされる傾向にあるということもできるかもしれません
バックスライン内で生まれたパスも45回となっており、ライン内でボールをこまめに動かすという様相が見て取れるかと思います
FWの選手がバックスラインに参加した場合も計上される数値であるため、ポジションに関係なくアタックの指向性に各選手がうまく対応しながらパスワークを見せていたと感じました
大東文化のディフェンス
タックル成功率の水準もかなり高い部類に入り、コンタクトシーンでも相手を上回るシーンが目立っていたりと、全体的にうまくいっていたということができるかと思います
ダブルタックルの質も高く相手の前進をきっちり止めることができており、大きく崩されるようなシーンはほとんどなかったように見ています
一方でフォールディングと呼ばれるラックを挟んで空いているサイドを埋める動きに関しては少し大雑把な印象があり、タイミングのずれた集散になっていたフェイズもあったように思います
東洋が大きくボールを動かすシーンが少なかったためにレイジーなフォールディングでもある程度押さえることができていた様相もあったので、ディフェンス間の距離感や位置関係に関しては修正の余地があるかもしれません
まとめ
大学ラグビー全体の開幕戦となった東洋対大東文化の試合ですが、両チームの方向性はある程度見えてくるような試合展開でした
ミスも目立ちましたが方向性が決まっているために迷いがなく、細かいエラーを修正すれば共により良くなっていくことが想像できるかと思います
今回は以上になります
それではまた!