同人大学院生、同人活動を始めてみた覚書2024
※記事内に二次創作BL/非公式同人小説の画像を取り扱っております。
苦手な方はご注意ください。
はじめに
2023年春(当時大学の学部4年生)にとあるジャンルのとあるカップリングに出会い、生まれて初めて二次創作小説を書き始めました。元々子供の頃から趣味でオリジナルを書き、2年ほど新人賞の公募勢(いわゆるワナビーというやつ)として小説を書き連ねていたのですが、ここでまさかの版権二次創作沼に足をすくわれてしましました。しかも10年ほど百合(ガールズラブ)一筋だったのが、まさかのまさかここでBL。いったい自意識になんの革命が起きたのか……という自分語りはさておき。
そんなこんなで解釈を書き連ねた同人誌を作りたい、という半ば必然的な欲望が芽生えてしまい、今まで憧れがあったものの手をつけたことがなかった小説同人誌を作りを始めました。推しカプの力凄い。
というわけで生まれて初めて知識ゼロから完全に自己満足のための同人活動を始めたので、その備忘録です。ですがおしゃれでデザイン性の高い装丁とかの備忘録ではなく、本当に無骨な本の紹介とメモ程度のものです。
自分のように学生なので高いものは作れない&デザインセンスないし字書きだからインデザインとかイラレとかよく分かんないしで凝ったものは作れない……しかしそれでも推しカプの分厚い本が作りたい! とりあえず小説同人誌を作ってみたい、といった方に少しでも参考になるものがあったら幸いです。
※作業環境は全てword2016。イラスト制作はiPadのCLIP STUDIO PAINTを使用しています。
まず印刷所を決めますか~と探していたところで、大学でゼミ冊子を制作する際にここを使っていておすすめ、と大学の方に教えていただいた印刷所がポプルス様でした。以降同人誌は全てポプルス様にお世話になっております。
Xなどでよく『厚い本はポプルスにお任せください!』と紹介している通り、とにかくページ数多めで分厚めな小説同人誌を作りたい方は本当にポプルス様一択でもいいかもしれません。印刷所様によっては300ページまでとか制限もあったりするので。
様々な印刷所様から資料を取り寄せてみたり、料金の比較をしてみたりしたのですが、学生の自分からするとポプルス様がお値段的にもなんとか作れる……! といった感じで本当に助かっております。
HPがシンプルでわかりやすく、ただ全く無知な初心者に優しいかといえばそうというわけでもなく、データチェックがある程度は自分で出来る方向け、また最低限の入稿知識などは求められます。ただHPに細かく説明が書いてあるのと、不備の連絡や相談のメッセージなども非常に丁寧です。院の同級生が「こういった箔押しがしたいのですができますか」といったメッセージを送った際は、「できなくはないけど潰れるからおすすめしない」みたいなことが返ってきたと聞きました。掲示板形式でメッセージを送れるのもありがたい。
元々がお安めなので早割とかはないです。逆に言えば早割不可能なぎりぎり原稿タイプにはありがたい。お見積もりも丁寧です。一度めっちゃ先のスケジュールを押さえようと思って早すぎる予約をしたら、その日に納品なら入稿日が1日ずれてますねーと直してくれました。すみません。
あとRGB入稿ができます。CYMKとかありますけど違いがよく分かってないのですが、RGB入稿出来るのはありがたいです。なのでほぼデータ通りのカラーで印刷されます。
他の印刷所様と比較するとオプションの種類がめちゃくちゃに豊富というわけではない……のですが自分からしたらそれがありがたく(やれることが多いと混乱する)、本当にシンプルな本をとりあえず作りたい! という方におすすめ。
初めて製作するにあたって創作おTips様の様々な記事を読み漁りました。今でも本当にお世話になっております。いろいろな記事があって読んでいるだけでもめちゃくちゃに楽しいです。いろいろなサイトとかありますし、印刷所様によっては「作り方」みたいな本を出したりしていますが、自分は創作おTips様が一番タメになりました。
組版とかノドとかよく分からないし、設定の方法もちんぷんかんぷんだったのでこのテンプレートをお借りしました。インデザインとか本当にわからないし、字書きの方ならWordや一太郎を持っている方も多いと思うので最初はテンプレートをお借りして、慣れてきたらそれを自分好みにいじるのが一番いいかもしれない。(今は創作おTips様のA5テンプレートのノンブルを下配置にして使っております。)
タチキリ有、フォントは源暎こぶり明朝に変更してサイズは9ポイント、26文字×21行です。ちなみにこぶりとちくごの両方を使っているのですが、気分で変えています。
小説といえば文庫……なので本当は文庫で作りたい……しかしそれをすると某妖怪研究家のミステリー小説みたいになるので潔くA5サイズにしました。
そんなこんなで出来た本が以下。
◆2024/1/7(COMIC CITY 大阪125) 発行
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タイトル(題字)は別の友人の手書きです。感謝。
【サイズ・ページ数】A5二段組/312ページ(約275,000文字)
【表紙】マットPP
【本文用紙】淡クリームキンマリ70K
【備考】前にグロス加工つき遊び紙あり
自分も表紙を作ってくれた友人も同人誌なんて作ったことない(友人はイラスト集を作ったことはあるが、背幅があるやつは作ったことはない)ので背幅が足りなくて再入稿したり、4編収録したのですが1つのwordファイルで作成したのでPDF化する際に時間がかかったり(それなりに高性能のPCなんですが…)してわちゃわしゃしながらなんとか完成したものです。
届いたときはありえないくらい感動しました。す、すげ~~~!? 自分が作った推しカプの左右相手固定本だ~~~!! とありえないテンションで姫のように扱っていたのも懐かしいです。
中身は解釈の煮凝りな中長編オムニバスです。元々長編書きなのと貧乏性なので「せっかく読んでもらうなら話をいっぱい入れたい」という欲望でページ数が多めになっております。
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本文はこんな感じで読みやすい。
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本文は淡クリームキンマリ70Kで、ポプルス様で選択可能な用紙の中では一番薄いものです。小説同人誌、特に分厚いものを作ろうと考えている方は絶対に淡クリームキンマリを選択すべきです。超絶ドライアイなのですが、眼精疲労の蓄積レベルが白い紙と比較して遥かにマシになる。
あと1番薄い紙とはいえまあまあ重いので足の上に落とすと結構な武器になります。この本だけboothで頒布したのですが、最近のポストって薄いものもあったりするのでちゃんと投函されていたのか気になっていたりいなかったりしていた。
非常に満足な出来だったのですが、ルビの隙間の詰め方がわからなくて隣の行と被っていたり、この時Canvaの存在を知っていても使っていなかったりしてwordで全部作っていたので中扉とかが本当に超地味なのが少し恥ずかしい。それも思い出です。
推しカプが結婚する話を書いたのですが、イベントで「結婚おめでとうございます」と言われて「えっ、自分……?」と一瞬びびりました。
◆2024/1/7(COMIC CITY 大阪125) 発行
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【サイズ・ページ数】A6(文庫サイズ)/128ページ(約65,000文字)
【表紙】ホログラム(ハート)PP
【本文用紙】淡クリームキンマリ70K
【備考】前に遊び紙あり
初参加のイベント、ということでせっかくなのでもう一冊だけペラ本を作りました。本当はもう少し少ないページ数でカバーをつけたり遊び紙をレーザーカットのものにする予定だったのですが、思ったより増えてしまったので金銭的に断念。代わりに表紙をホログラム加工にしたものです。
テンプレートは創作おTips様のものを使用させていただきました。本当に頭が上がりません。創作おTips様のおかげでルビの隙間の詰め方を学び、以来多用しまくっております。
フォントは源暎ちくご明朝v3の8.5ポイント、41字×16行でテンプレからぬりたしを追加しています。
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めちゃくちゃ可愛いのですが、思っていた数倍はギラギラしています。特に背景がピンクだったのもあるかもしれませんが、イラストが若干見にくい。それでもめちゃくちゃ可愛いです。推しカプのモチーフが宇宙とか星とかなので、きらんきらん表紙にして本当によかったです。最高~。
◆2024/6/30(JUNE BRIDE FES.2024) 発行
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【サイズ・ページ数】A5二段組/376ページ(約348,000文字)
【表紙】マットPP
【本文用紙】淡クリームキンマリ70K
カップリングオンリーが開催するとのことで、カップリングオンリーって何? と思いながら出た過ぎて申し込み、大学院に進学して研究と並行しながら原稿をしていました。忙しすぎる(勝手に忙しくしているだけ)。もう慣れてしまったからあれなんですけど、イベントの申し込みも微妙にややこしくて初心者には厳しくないですかね。
中身は中長編オムニバス、ジュンブラなのでテーマは「プロポーズ」です。一番最初に出した本と対になるように表紙を描き、背幅も試行錯誤しながらインデザインの無料体験を利用してみたのですが、微妙にずれて悲しい。というわけで今回はオール自作です。デザイン能力が皆無なのですが、昔にコロナ禍の給付金で購入した死にかけのiPadでかくかくのクリスタを必死になって動かしてなんとか完成。友人がデザイン系だったのでアドバイスをくれて本当にありがたい。
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分厚くなればなるほどに中央が読みにくくなることを忘れてしまい、話の切り替えに入れてる中扉の注意書きがかっつかつ。めっちゃ開かないと全部見れない。ちなみにこのことを忘れて次の本もやらかしてます。あと1話ごとにデータを分けたのですが、1つだけ組版がややずれているのがあって、原因不明で治し方も分からずに、まあいいか……と妥協で入稿しました。
今回から本扉、中扉、奥付はCanvaで作成しています。
インデザインだのイラレだのよくわからない字書きはCanvaを使うとかなりそれっぽくなります。自分は本当に分からない。学部時代の講義でフォトショップと四苦八苦しながら格闘していたレベルです。
院の同級生にCanvaを教えたら表紙を作るのにずっと使っていて、イラレもイラストソフトも持っていない方には本当に便利な神のサイトです。クリスタとかだと素材配置やそもそも素材を選ぶところからのセンスがかなり求められるのですが、Canvaだとテンプレートとかもあるし、素材も検索したらぱっと出てくるのでもうこれなしで同人誌作れません。(これほしいのにないなーってやつはクリスタで書いたりして自作しています)
前回は友人と参加したのですが、このイベントはソロ参加だったのでてんやわんやで、来てくださった方々に上手い対応が出来ずに非常に申し訳なかったです。関係ない思い出話なのですが、イベントで隣の席の方と好きなバンドが一緒で盛り上がり、めちゃ楽しかったです。音楽は世界を救う。
もう一冊無配で作ったのですが、全部頒布してしまったので手元にないです。記憶が正しければ新書サイズで、いいテンプレがなかったのでそれっぽくしたら行間が広くなったのが気になった思い出。
◆2024/10/27(COMIC CITY SPARK19) 発行
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【サイズ・ページ数】A5二段組/212ページ(約180,000文字)
【表紙】ミランダスノーホワイト
【本文用紙】淡クリームキンマリ70K
【備考】前に遊び紙あり
今回はカップリングプチオンリーが開催されたので参加しました。友人と一緒なので落ち着いていられました。たぶん。
薄い本だったので少し金銭的に余裕があり、表紙をミランダスノーホワイトというきらきら特殊用紙にしました。結果として大正解でした。
濃い色だときらきらがあまり出なくなる、ということだったのですが、実際に2人の背景にある宇宙はあまりきらきらしておらず、逆に周囲がきらめいていて、狙ったわけではまったくないのですがそれがいい味を出していて満足です。
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す、凄い……。先述したように推しカプのイメージは宇宙とか星なので、特殊用紙を使ったことで2人の世界が少し再現出来たことに感動。
表紙はCanvaで作ったのですが、解像度が変更出来ないので若干ぼけている。それが気になったので次からクリスタでちまちま作ろうと決意。
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はいやらかしその2です。中扉に書いたタイトルがぎりぎり。中央が見にくくなることを忘れていました。これからページ数多めの本を作る方がいらっしゃったら本当に念頭に置いておいてください。
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特殊用紙だとPP加工がつかない(マットとクリアは全て標準でついています)ので、下の方の千切れや背表紙の割れが目立ちやすいです。100ページ以下とかならあまり気にならないかもしれない。可愛いけど向き不向きがある。でも作ってよかった。
終わりに
同人誌って作るの難しそう……と思っていたのですが、蓋を開けてみると意外と簡単でした。おそらく字書きにとって1番難しいのは表紙のデザインとか背幅の調整とかだと思いますが、ポプルス様だと背幅の計算ツールがあったり、あと同人誌の表紙を作れるメーカーやboothでも素材が色々あったり、Canvaも使いやすいので意外となんとかなります。金銭的に余裕がある方ならばデザイナー様に依頼とかもありだと思います。自分は当面無理なので自力でごり押す予定です。
自分は最初からwordに打ち込み入力をしていますが、メモとかに書いたものをテンプレートに流し込むだけでももうほぼ完成になります。敷居は意外と低い。
自分の妄想や解釈が形になる、という喜びを知ってしまってはもう戻れません。こんなに楽しいことある? と思うほどに夢中になっています。
暫く多忙なので、次イベントは来年の夏になりますが、もう構想は練ってあるのでちまちま書き始めています。どちらかといえば壁打ち気質なのとCPが完全固定なのもありインターネットの片隅で細々と活動しており、完全に自己満足の同人誌作成とイベント参加をしているのですが、足を運んでくれた方々が嬉しいお言葉をくれたり、お手紙をいただいて感動をしたりと、たまには交流もいいな……と思ったりしています。
また緩やかに文章を書いていけたらいいな〜来年も頑張ろう、と思っています。ここまでお読みいただきありがとうございました。誰かの同人ライフにも幸がありますように。