逃げてしまわないと、人は壊れる、こともあるのですよね。うん。
仕事は辛くて苦しいもの。
何があっても耐えてやり抜くのが会社員のツトメ。
そんな空気が社内あったのか、社会全体がそんな風潮にまだまだ包まれていた時代だったのか。
これはそんなころのお話。
プロジェクトが泥沼化は日常茶飯事。
何週間前も終電やタクシー帰り。時には連日の徹夜。
休日出勤もなんのその。残業時間青天井。
ボーナス並みの残業代は入れども、使う暇がないくらいに銀行残高が増えていく。
身体を壊すことなく生き延び、プロジェクトが落ち着き、残業が激減した生活に一息をついたころ、翌年の税金は跳ね上がり、残業減の生活を圧迫するという、なんとも笑えない状況もしばしば起きた。
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あるプロジェクトでは、年明けのリリース予定を前に、やってもやっても減らないバグと戦いながら、師走の日々をすごしていた。
ちょうどクリスマスも終わったあたりだっただろうか、リリースを前にして隣のチームのリーダと連絡をとれなくなった。
こちらからの携帯も一切つながらず、もちろん全くだれにも連絡がない。
姿をくらましたリーダを皆気にしながらも、目の前の作業は消化してリリースにこぎつけることが史上命題だ。
PMやサブリーダが代わりに仕切り、メンバーも疲労を日々濃くしながらもなんとか1月1日のリリースを迎えた。
「親父が緊急入院しちゃって」
にやにや笑いながら。
リリース1週間後に戻ってきたリーダのセリフ。
え、それ200%完璧にウソでしょ!と思いながらも、リリース後の大量のバグ対応に追われ、疑惑はうやむやになっていった。
リリース後対応に半年ほど経過したのち、プロジェクトも保守フェーズに代わり、リーダは離任し、その後営業へ異動し、いつも間にか昇進していた。
何年かのち、そのリーダも転職した後、当時のPMとリリース前後のバタバタの話題からその話になった。
「ケィティは逃げなかったよな~」PMがいう。
・・・えっ?逃げてよかったの?
あの時戻ってきたリーダとPMの間にどんな話があったのか、知らない。
今なら思う。
黙って逃げたいほど過酷なことがリーダに起きていたのか
そんな人が生まれたチームのありかたはどうだったのか
わたしも自分の配下で手いっぱいで横のことまで気は回らなかった。
PMやPMO上位者はどうだったのか
背景や事情はともかく、となりのチームのリーダは逃げて生き延びたのだ。
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また別のプロジェクトでは、GW明けの締切を前に3月半ばくらいから、連日遅くまで、毎週のように休日出勤をして提案書を作っていた。
提案の条件の一つに「PMはPMP資格保持者であること」と指定されていた。ちょうど4月の中途入社者の1名にこの資格保持者がいたため、白羽の矢がたてられた。
提案チーム加入時の自己紹介で「流通業界に長く精通してコンサルタントとしてやってきたので、この会社でも是非それを活かしていきたい」と意気揚々と語るPM。
この提案、希望業界も違えば、開発案件と言う点でこの方の希望とは完全ミスマッチ。薬局に薬剤師さんが、不動産屋さんに宅建資格保持者が名前貸すのと同じくらい、正直お飾りPM状態。
提案チームに入ってすぐにPMもそれに気づいたのか、どうも関わろうとしない態度が続く。
それでもプレゼンはPMがする、とこれも提案条件明記のため、なんとかやってもらわないと、提案の舞台にも上がれない。気乗りしないPMに打合せ参加してもらいないながらも、打合せやレビューの日々になった。
提案書締め切り直前GW、暦の上では休日だが、我々にはその選択肢はあり得ず、追い込みだ。休みの日の前日、PMに明日は午後からは出社してレビューに参加してほしいと依頼し、先方も了解した。
休日出勤の日。
午後になっても、30分過ぎても、1時間過ぎても出社してこないPM。前にド携帯に電話をかけても空しく繰り返す呼び出し音。
何度もかけるが反応なし。
2~3時間たったころ、PMとつながった。
なんだかやたらと明るめな、威勢のいい声だ。
「今ドライブ先で帰れませんよ~」
ひょえ~~~~。
午後には出社だったら、普通ドライブなんか行かないでしょう!
もうPMの参加はあきらめている人間だけで進める。
その後提案は奇跡的に通り、受注したが、待っていたのは泥沼泥沼の史上最悪のプロジェクトと、すぐにPMには不適と判断されたが資格要件のために、名前だけPMとしてプロジェクトに居続けさせられたのち、退社していったその方の末路だった。
あのGWの休日出勤のとき、本当にドライブに行っていたのか今もわからない。
あの時にはああでもしないと、もっと壊れていたんだろうな、とあの時よりずいぶん年齢と経験を重ねたわたしは思う。
自分を守るため逃げることは、選択肢としては大事ですね。
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