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丑三つ時、満月に吠える
フト目が覚めるとカーテンを開けたままの窓から煌々と明かりがさしていた。
枕元のスマートフォンは1:55を示している。
明かりに呼ばれるようにベランダへでる。
ベッドに入る前には一面おおわれていた雲がすっかり消え、南南西の空に満月。
見渡すといくつかの星がきらめく。
アークトゥルス・スピカ・アルタイル・デネブ・・・天空の星を見上げ、スマートフォンの検索結果をみて、あたりをつける。
星たちへ先人がつけた名前、漠然と思い出すそれらの物語で時空が動きはじめる。
月光浴が心地よい。
明るくもやわらかな白色の光は、ベランダの柵にあたり、長い影を作る。
向こう側に広がる夜は、街の灯りがあちらこちらに無機質に光を放つ。
深夜の静寂のなか、時折走るバイクの音が響く。
停止・走行をこまめに繰り返すその音は、早朝の新聞配達の小型バイクを思わせる。
バイクの音が去ったあと、再び訪れる、月と星と私だけの音のない世界。
目をあけ、立つ。
両手をだらんと下げ、掌を前に向けて開く。
正面には満月。
掌が照らされているのを感じ、顔、胸。お腹、足で月光を受ける。
光が体を透過していくイメージと同時に、
自然と呼吸はゆっくり、ゆ~っくり、ふか~く、ふかぁ~く。
月を見ているようで、月に見られて、漂うランデヴー。
まるで夜の海月(くらげ)だ。
月の光の波長に漂う気分は、段々と高く上り、大きくなり、世界を包む。
この世界、生きている今。
この世界、ここにいる今。
この世界、感じている今。
今部屋で眠っている家族。
今離れて住む家族。
大切な友達、大事な縁ある人たち。
さらにその人たちの先にいる人たち。
そして、わたしより先に逝ってしまったひとたち。
みんな、みんな、みんな。
月と太陽と星の恵みがもたらすこの夜の感謝を
平和と幸せにのせて
今この時、この瞬間に届きますように。
声も出さずに、音もたてずに
満月に吠えた。
感謝と祈りをこめて
しばらくの間、吠えていた。
気づくと半袖から出ている腕は、夜の空気で少し冷たくなっていた。
もうとっくに午前二時は過ぎている。
戻って眠ろう。
部屋から再び窓の外をみると、月は変わらず惜しみなく、光を地球へ注ぎ続けていた。
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