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中央大学野球部を陰ながら支えるリーダー

1930年に創部して以降、数多くのプロ野球選手を輩出してきた大学屈指の強豪校野球部、中央大学。しかしそんな強豪校であって大学サッカー同様、高校に比べてメディア露出が少なく、注目度も低い。それでも、そこに熱い想いを持って大学4年間をかける人間がいる。高校生よりも自由度が増し誘惑が多い大学生であるにも関わらず、日の目があたらないところで泥臭く努力をし続けている。私は大学スポーツで選手として活動しているからこそ、そのような人の魅力や凄さに気づき、より多くの人に知ってもらいと考えている。そこで第7回の今回は、中央大学野球部でマネージャーを務める荒井さんに取材を行った。
 

プロフィール
荒井優汰
あらいゆうた。高校まで選手として野球を続ける。大学ではマネージャーとして中央大学硬式野球部に入部し、3年生になる今年はマネージャーを統括する主務の役割を担う。

人として成長するためにマネージャーになる

 高校時代は強豪校の富山商業で、選手として甲子園を目指していた。しかし度重なる怪我やイップスを経験し思うような結果が振るわず、次のステップで野球を続けることは断念した。選手としての未来を諦め今後の進路について悩んでいる時、偶然中央大学野球部出身だった高校時代の監督が、荒井さんに全く新しい道を示した。「マネージャーはとても面白いし、必ず成長できる。」と伝えたのだ。
しかし、高校野球児として根付いた負けず嫌いの性格から、マネージャーという立場では選手に対して"劣等感"を感じてしまうのではないかと考え、すぐにマネージャーを目指す決断は下せなかったと話す。その後も将来について悩み続けるうちに考え方が変わり、劣等感を感じてしまうことは自分の幼さや弱さであると認識するようになり、それを克服したいと考えるようになった。よって自分の弱さを克服し人として成長するために、大学でマネージャーとして野球に関わり続けるという決断を下したのである。
 

マネージャーとしてチームに欠かせない存在へ

 マネージャーの主な業務については予め聞いてから、覚悟を持って入部を決めた。しかし実際に入ってみると、想像を絶する業務の責任感の重さに驚きを感じ、特にチームの財務管理については、組織運営において核となるとても重要な業務であり、そのプレッシャーからストレスを感じることもあったと話す。
それでも、「チームの勝利に貢献できるマネージャーになる」という目標のために、常に“考えながら”試行錯誤を繰り返してきた。例えば、自分が選手時代にマネージャーにやって欲しかったこと、やってもらって助かったことを実践した。また、それと同時に選手との絶え間ないコミュニケーションも大切にしている。
つまり、選手が欲していることを、高校までの経験とコミュニケーションを頼りに予測し行動することで、選手のよき理解者となっている。そして、チームの「日本一」という目標に対してマネージャーとしてできることが限られている中でも、確かな存在意義を示し、チームに欠かせない存在になっている。
 
よき理解者としての荒井さんの存在は、先週まで続いた東都リーグの入れ替え戦の結果にも大きく繋がったに違いない。二部降格が目前にまで近づき、チームとしてとても、とても長く苦しい時間が続く中で、マネージャーとしても選手に話しかけにくいような緊張感のある囲気が続いたと話す。そのようなナーバスな時こそ、選手にはストレスなくプレーだけに集中してもらうために、最大限のサポートに努めた。全てはチームが勝つために、限られた出来ることを完璧にこなし続けたのだ。
このように、土壇場での執念の一部残留の裏側には、選手だけではなく裏方の努力もあり、まさにチームが一致団結した結果であったのだろう。


中央大学野球部の未来を見据えて

 そして、リーグ戦に一区切りがついた今、荒井さんは次世代の育成に注力している。それは自身が卒業した後も中央大学野球部が強くあり続けるためである。後輩たちには自分が常に意識してきた「考えること」を大切にしてもらうために、今はあえて雑にゴールだけを示し、プロセスは自分で考えてもらうようにしている。なぜなら、荒井さん自身が、考える習慣のおかげで成長を大きく実感してきたからだと話す。「自分のことだけを考えていた高校時代の自分の弱さは克服できたと強く実感できている。」と話す、荒井さんからは高校時代にコンプレックスに感じていたような幼さや弱さは全く感じられず、自信に満ち溢れていた。きっと高校時代の監督は、荒井さんの責任感や思考力を見抜き、マネージャーとして大きく成長できると確信していたのだろう。
 
最後にチームに向けて、「勝つためにできることは全部やるから、選手には絶対に勝ってほしい。」と負けず嫌いの荒井さんの性格がよく表れた熱い言葉を残した。

筆者コメント

私も含め選手の多くは支えられることに慣れてしまいがちだが、「チームの勝利」は決して試合に出ている9人や11人だけではなく、それを支える全ての人がもたらしているものだと、強く感じさせてくれる取材になった。今後も同じ中央大学の仲間として、互いに高いレベルで刺激し合えるような関係性を構築していきたい。
 
(取材・文=吉田賢人、橋本泰知)

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