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可能性を作る

3月下旬、中央大学多摩キャンパスサッカーグラウンドにて、「八王子オレンジサッカーフェスタ」が開催された。八王子市内にキャンパスを構える大学によるサッカーの大会である。第1回はコロナ禍ということもあり中央大学と拓殖大学の一試合のみで行われた。しかし、多くの街の人に大学サッカーを楽しんでもらいたいという想いから「学生サッカーは街とともに」をテーマに掲げ、八王子市をホームとする少年団、大和田SC、南大沢FC、シルクロードSC、鑓水SCの4チームも招き大会は開催された。

大会主催責任者である中大サッカー部の横山祐一郎さんは、大会の開催趣旨として三つ挙げている。
一つ目が関係性構築だ。八王子市をホームとするサッカークラブが手を組み、地域の方々にサッカーを通じてスポーツの魅力を伝え、新たな関係性を築くことを目指した。
二つ目が強化育成だ。本気でサッカーをする環境、本気で応援される環境を提供することで、技術力、精神力、チームワークの向上を目指した。
三つ目は、地域の新たなレジャーを作ることだ。企画やイベントを開催し、ゲームだけではない魅力を作ることで、地域の方々にとってのレジャーとなる大会を作ること目指した。

可能性を作る

大会の特筆すべき点は、一から学生が企画運営を行なった点である。
主催者の横山さんはこの大会について、大きな可能性を感じていると話す。 横山さんの目標は「持続するクラブ」を作ることである。学生スポーツは常にメンバーが入れ替わり、良いクラブであり続けることは難しい。しかし横山さんは、自分がチームから抜けた後もさらに強くなり続けるチームが作れた時、はじめて自分が本当にチームに貢献できたと感じられると話す。この第1回大会は中大サッカー部の将来を作るための土台作りである。大会を通してできた繋がりが、今後の中大サッカー部の可能性を広げると考えている。
さらに中大サッカー部だけではなく、大学サッカー全体の可能性を作る大会でもあると話す。「日本のサッカーの楽しみ方はアメリカやヨーロッパのそれとは違い、スポーツの枠を超えて一つのレジャーとして成立しています。この文脈の中で学生ならではの、フレッシュなアイデアが重なったときに大きな力を発揮すると考えています。」横山さんは、Jリーグや高校サッカーと比べて知名度が低い大学サッカーは、根本から変える必要があり、そのためには学生が主体となって動くべきだと考えている。
つまり、「八王子オレンジサッカーフェスタ」は中大サッカー部と大学サッカーの未来を、学生が一から作るための大会であるのだ。

実際にやってみて

拓殖大学や少年団チームだけでなく、八王子市サッカー協会や市役所との繋がりを構築することができ、「関係性構築」の目標は果たせたと話す。「育成強化」については、まだ結果が目には見えないが、今後も継続的に開催していくことで、選手が目的、目標となりうる大会になっていくだろうと手応えを感じている。しかし「地域貢献」に関してはコロナ禍で観客を呼ぶことが難しかったこともあり、達成できなかったと言う。とはいえ、現状に悲観的にはならず、今大会はコロナ禍があけた時のための準備、土台作りになったと前向きの姿勢を見せている。

大会については外部からの評価も受けており、今後は協力者も増えていくだろうと話す。したがって、コロナ禍があけた後、大会の規模は大きくなっていくに違いない。
横山さんは今後の大会の展望について、さまざまな展示会、ハーフタイムショーを開催し、さらには大学だけでなく高校、社会人チームも呼び、輪を広げていきたいと考えている。
総じて、第一回は課題と希望が見える大会であったと言えるだろう。


中大の部員に向けて

最後に横山さんは部員に対して「うまく企画に流されてほしいです。」と話した。この大会は、関わる全ての人にとって、個人の成長に繋がる。企画運営を行う人も、プレーをする選手も、普段と異なる環境に刺激を受けることができるからだ。この稀有な企画に部員全員がうまく流され、その中で自分の目的を生める人間になることを、横山さんは部員の仲間たちに期待している。

インタビューの最後には感謝の想いを話した。「中大サッカー部の監督やスタッフ、部員が協力的に動いてくれたおかげで大会の開催が実現できました。特に当日協力してくれた仲間の働きは素晴らしく、一緒に大会の成功を導いてくれ、本当に感謝しかないです。」と中大サッカー部が、このような企画に前向きに協力してくれることに感謝を示し、そしてこの環境なら「持続するクラブ」を目指せると横山さんは確信している。

中大サッカー部は八王子市を巻き込みムーブメントを起こそうとしている。この取り組みが周りに波及し、大学サッカー、大学スポーツが根本から変わっていくかもしれない。そんな無限の可能性を感じさせてくれるこの大会の今後の動向には目が離せない。
 
(取材 文=橋本泰知)

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