挑戦し続ける
今年から中央大学サッカー部の監督に就任した、宮沢正史(43歳)は今なお、成長を求めて挑戦し続けている。
選手を支えるスタッフに“スポットライト“を当てる、本企画「Spotlight」の第一回は、今年から中央大学サッカー部の監督に就任した宮沢正史さんについて取り上げる。
指導者としての軸
43歳になった今も、宮沢監督は夢の途中だ。Jリーグで15年活躍した宮沢監督は今、指導者として「プロのトップチームの監督になる」という夢を掲げ挑戦し続けている。
新たな夢を追うため、37歳で選手を引退し人生を再スタートさせた。挑戦の一歩目に選んだ舞台はFC東京のスカウティングだった。その環境に身を置くことで、様々な年代の多様な選手を見て、指導者としての土台を作ったのだ。その後プロのトップチームのコーチを経て、中学生を指導し、そして今は大学生を指導している。選手を引退してから5年、次々と新しい環境に足を踏み入れ、常に新しいことを吸収し続けている。
特に中学生を指導した経験は、今の指導者としての軸に大きく繋がっていると話す。その軸とは「勝てるチーム作りを念頭に置きつつも、選手を育てることを重要視する指導」だ。「技術、身体、心のあらゆる側面で成長曲線が大きい中学生を指導した経験は、育成の重要性を考えるきっかけになった。」と語り、何より結果が求められるプロの世界で生きてた宮沢監督だからこそ、この経験は非常に価値ある重要なものだった。育成を重要視する理想の指導者になるため「選手に寄り添い、選手を思いやれる指導者になる」ことを心がけて指導を行っている。常に信念を持ち、学び続けてきたからこそ選手としても指導者としても成功し続けているのだろう。
そして次のステップは大学サッカーを選び、新たな挑戦を始めている。
大学サッカーでの野心
「高卒でプロに進むことはできず、中央大学に進学することになりました。大学サッカーでは多くの経験を積み重ねることができました。そのおかげで選手としてだけでなく、人間としても大きく成長することができたと考えている。大学4年間はプロサッカー選手、社会人としての基礎となる部分を形成した、人生で最も重要な時期でした。だから、ここ最近結果が残せていない中大サッカー部のために、恩返しの気持ちも込めて何か貢献したいと考え、監督を務めることを決断しました。」
大学4年間の重要性を身に染みてわかっているからこそ、学生の可能性を信じ、選手やスタッフ全員と熱くぶつかり続けている。
新体制のチームが始動してから二ヶ月が経ち、学生に対する印象を聞くと、「選手やスタッフの真面目で素直な性格で、日々努力しています。特に監督自身が現役時代にはいなかった学生スタッフが、選手のために全力でサポートする姿は非常に印象的です。」と答えた。
しかし同時に「まだ、成長できると感じている。」とも話す。
「高校生ともプロとも違う大学サッカーでは、多くの指導者がいますが、それに対して受け身になってはいけません。部員が自ら考えて行動しなくてはなりません。すなわち、自主性や自律が求められ、自分で何ができるのかを先回りして考え、チャレンジしなくてはなりません。それはピッチ内においても、ピッチ外においても同じことが言えます。広報や企画、営業等についても、部員自ら行なっているこの部活では、多方面に成長できる環境があり、それを活かさない手はありません。自分がそうであったように、大学4年間で様々な面で大きく成長することができます。必要なことは覚悟だけです。皆ならもっとできる信じており、4年間をもっと大事にしてほしいと思っています。そして卒業後、誰が見ても中大サッカー部を通ってきたことがわかるような、成熟した人間になってほしいと考えています。」と語り、全てを伝えることはせず「自主性」を尊重しながら指導している。これはまさに育成重視の軸があるからこその指導方針だ。
さらに、野心ある監督の視野は大学サッカー全体にまで広がっている。
「選手だった時代と比べて、伝統校だけでなく多くの新しい学校も力をつけてきてました。そのため競争がより激しくなり、レベルも上がっています。それに伴い、日本代表やJリーグにも大卒の選手が増え、少しずつ大学サッカーの注目度があがっています。しかし、まだまだ足りていません。自分自身一指導者として、もっと大学サッカーのレベルを上げることで、注目度をさらに上げたいと思っています。」と語る監督の表情は、群雄割拠の大学サッカー界で伝統校を任せられた責任を感じながらも、それを上回る自信や野心に満ち溢れていた。
最後に
「自分自身も大学生に刺激を受け成長させてもらっています。スタッフと選手が共に刺激し合い、成長できる関係性は理想的です。」と話し、監督はチームや学生と共に成長し続けている。何歳になっても学び、挑戦し続ける姿は学生にとって大きな刺激になるに違いない。今後の中央大学サッカー部と宮沢監督の将来に期待したい。
(取材・文=橋本泰知)