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交際相手を8時間、ディズニーに待たせた

どこかに行く約束って、決めてるときはそこそこ乗り気なのに、
いざ日時が約束に近づくと億劫になる。

特に交際相手だと。
友人とは割と乗り気なまま、約束の日時まで到達できるのに。
なんでだろう。

ディズニーに行く約束をした。

向こうから打診された。
なんだか嬉しそうに、少し申し訳なさそうに打診された。
断る理由もないし、あんな雰囲気を纏われたら
断るなんて、なんだか悪者な気がしてできなかった。

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約束の三日前くらい
ポップコーンのバケツを持ってきてと言われた。
アリエル、人魚のやつ。

ずいぶん前に一緒に買った。
もうあの形のものは売ってないらしい。

「向こうで新しいものを買えばいいんじゃない?」
「違うの!あれがかわいいんだ!」

意外だなあ。
どうやら交際相手のことをまだまだ理解できてないらしい。
なんだか少し、楽しみになった気がした。

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約束の前日
ラインがきた。

「明日は舞浜駅でモノレール乗るんだよ!ランドの駅で待ち合わせだよ!」

水色のなんだかよくわからないキャラクターのスタンプで 了解 と返した。

なぜだか寝る前、交際相手の柔らかい表情を思い浮かべた。

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約束当日

寝坊した。

鬼のようにかかってきたことを示す不在着信。
通知を表すアプリの赤いバッジがひどく恐ろしく見えた。

急いでかけなおす。

出ない。
怒っているのだろうか。呆れているのだろうか。

飛び出した。
最寄り駅へ向かう。
折り返しの連絡はない。

モノレールに乗り、東京ディズニーランド駅にちょうどついた時、
着信が入ってきた。

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やったら大きい回る地球儀。

他ではあまり見ない色をしたレンガ。

ドラマを見てるときには気にならないBGMだが、
実生活において、実際に鳴っていると気になると思ったが
案外気にならなかった。


交際相手はディズニーランドに居た。

着信があって、指定された場所に急いで向かうと、
わざとらしく頬を膨らませた交際相手がいた。

「遅いよ!なにしてたの!」
「本当にごめん。仕事の付き合いで飲み会に行ってたの」
「まあそんなことだろうと思ってたけど。むううううう。」
「ほんとにごめん」
「でもいつも頑張ってるし、今日はもう何も言わない。今から遊ぼ?」

交際相手は本当に何も言わなかった。
不機嫌になったり、ふてくされたり、いじけたり、
何も言わなかった。

ただただ笑顔でアトラクションに乗って、
敷地内を他愛もないおしゃべりで歩き回った。

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気づけばもう、20時くらいになっていた。

パレードが見たいと言われ、パレードを見ていた。

交際相手の横顔を見た。
パレードの花火に照らされて、眼がキラキラしてるように見えた。
なんだかいつもより、まつ毛が ぺたんと 寝ているように見えた。

目線を下にした。
上着の裾が目に入った。
ぼんやり滲んでいるような汚れに気付いた。

咄嗟に交際相手から目をそらした。
空を見た。

交際相手を8時間、ディズニーに待たせた。



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