「セーラー服」
「忘れないでね」
心の中にいるセーラー服の少女が笑って言った。
セーラー服を着たことが1度だけあった。
何も悪くないのに、罪を犯したようなドロドロとした悪い気持ちになった。
ヒラヒラしたスカートから伸びる脚も、袖からチラつく指も
そのセーラー服に似合っていなくて腹が立った。
「忘れちゃいたいな」
漏れて出た、細い声。
少女みたいに笑ってみたかった。
僕はセーラー服を着た。
毎日袖を通すその服が嫌いだった。
なんかヒラヒラしていて可愛らしい真っ赤なリボンがついたこの制服が私には似合っていなかったし、きらいだったから似合ってほしくもなかった。
可愛いを背負ったその服は私が着ると囚人服になる、ここで暮らすために無理矢理着るのだから。こんなに可愛いのにね、それがほんとに腹立たしかった。
違う何かが着たいということでも無かったけど、これはあまりにも「窮屈」だし「違和感」だった。 あぁズボンいいなぁ、そういうレベルの話では無くて、泣いて頼んだら聞いてくれる?叶えてくれるの? そういう話だ。
早く脱いでしまいたいな、こんなので私が決まってしまうのは悲しいな。でもさ、これを脱いだら何を着て暮らせばいいんだよ。
結局、「窮屈」で「違和感」を抱えて「普通」に守られていたかった。
「それで?」
「ん? 特になにも。毎日黙って着てたよ。」
「へぇ、珍しいね。」
「今の私なら絶対反抗したし抗議もしてた。」
「その方が君らしいよ」
「褒め言葉として受け取っておこう」
「いいなぁ、セーラー服」
「絶対私より君のが似合うよ」
「……1回だけね、着たことあったよ。」
「え?前聞いた時は1回も無いって」
「…うーん、なんか、忘れちゃだめな気がした」
「そっか。」
いただいたお題「セーラー服」
ウニ
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