【UniTreat-DX-journey】#4.日本の医療DXは今、何処に向かっているのか?公開情報をもとに考える【#3の続き】
前回の記事では、医療DXの定義と医療DXの推進に関する工程表(以下、工程表)について紹介しました。具体的な変化と時期をこれから、工程表を元に確認していきます。2023年度から2026年度以降までの大まかな工程について取り上げていきたいと思います。
※注意点
大きな項目としては、以下の5点を挙げたいと思います。大量の情報があるため、情報量としては少なくなり、わかりやすくなるでしょう。一方で、要約することは、どうしても情報を削る側面があるため、詳細な文言は十分に情報元を確認するようにしてください。実際に施策を講じる際などは、細かな文言や規制が問題になってきます。興味がある方は、可能な限りリンクも付与しているので、適宜情報元を参照してください。
1.工程表を振り返るきっかけ
UniTreatの活動方針は、国の進めている医療DXの推進に関する工程表を参考にして、どの時期に、どのように活動をしていくかを決めています。これは、国の進める医療DXの方針ありきで、医療現場におけるDXの方向性が大きく左右されるからです。このことは、勿論、我々UniTreatのような医療DXを推進していく団体だけでなく、全ての医療機関においても同じことが言えます。
当たり前ですが、最新の情報を取得していくことは重要です。少し前に、医療DX工程表をUniTreat内部の会議で取り上げました。この話題や情報も多くの方が知らない情報であったり、とても重要な内容を多く含むのではないかという意見が上がりました。
今回、少しでも記事をご覧の方に有益な情報提供ができるのではないかということで、最新ではありませんが、令和5年6月末時点での公開情報を元に、皆さんと医療DXがすすむ方向性を確認・共有していきたいと思います。2023年度から2026年度以降までの大まかな工程表を示しています。
2.医療DXの推進に関する工程表のポイント
①マイナンバーカードと 健康保険証の一体化の加速
(※UniTreatはマイナンバーカード利用促進に関してプロモーション料等の受授はありません)
マイナンバーカードと健康保険証の一体化の加速については、賛否両論ありつつも、令和 6年秋には保険証廃止ということも確定されています(健康保険証 2024年秋に廃止 一体化マイナカード できることを詳しく | NHK)。皆さんはマイナンバーカードの健康保険証利用申込は完了しましたか?
②全国医療情報プラットフォームの構築
2024年度中の電子処方箋の普及に努めるとともに、電子カルテ情報共有サービスを構築
介護保険、予防接種、母子保健、公費負担医療や地方単独の医療費助成などに係るマイナンバーカードを利用した情報連携を実現
他でも触れられていますが、注目すべき点として、上記2点をあげました。政府は、これまで閣議決定文書で、電子処方箋の導入目標を示したことはありませんでした。ここにきて、具体的な時期を明示したことは大きな一歩と言えます。しかしながら、現実的には厳しいハードルがあるようです。23年1月の制度開始から半年超にあたる8月27日時点で、医療機関や薬局の導入率は2.6%にとどまったことがニュースになりました(電子処方箋の導入率2.6%どまり、なぜ? - 日本経済新聞)。
普及が進まない背景として考えられる要因は、義務ではないということと、導入コストの問題があるといえそうです。というのも、医師や薬剤師は、システムの悪用を防ぐために資格を電子証明する「専用カード」を取得する必要があり、医師は1人につき5500円、薬剤師は同様に19800〜26400円がかかります。さらに、データを登録・閲覧するオンライン資格確認システムも必要になり、多額の導入コストがかかります。ここが、解消されなければ、目標時期までの実現は困難でしょう。
また、電子カルテ情報の共有が2024年度からスタートすることが示されました。オンライン資格確認ネットワークの普及や電子カルテの普及などを含めた、医療分野におけるICT化を支援するための補助金制度である、「医療情報化支援基金」の活用に関して、全体像の中でも強調されています。注目すべきは、実際に、同基金へは電子カルテ標準化分として現在149億円が積まれており、政府の本気度が感じられます(令和5事業年度医療介護情報化等特別会計予算)。
③電子カルテ情報の標準化
2025年3月までに概ね全ての医療機関で電子処方箋に導入することを目指す
電子カルテ情報の共有は2024年度中に運用を開始する
電子カルテ導入後の医療機関でも、標準規格に対応した電子カルテへの改修や更新を推進する
電子カルテの3文書6情報の共有からスタートから開始することは、これまでの厚労省の検討会でも示されてきました。今回は、それに加えて、2023年度からの透析情報や2023年度に透析情報及びアレルギーの原因となる物質のコード情報について、など徐々にその範囲を拡大していくことが示されました。
標準の電子カルテですが、クラウドベースの電子カルテを標準とし、今後開発する方針です。日本のHL7FHEIR規格の電子カルテは大手の富士通を中心として、他ベンダーの開発にも注目が集まります(富士通Japan、大中規模病院向けクラウド型電子カルテサービス「HOPE LifeMark-HX Cloud」を提供)。
さらには、電子カルテ情報だけではなく、市区町村が保有する介護情報、乳幼児健診や妊婦健診等の情報も共有していく方針が示されたのです。これは、実現すれば、とてもインパクトも大きいサービスとなるでしょう。ただ、市町村は数が多い(2023年10月時点で1718)だけに、その全てが、すぐに有機的に可動するというのは、現実的には厳しいかもしれません。
また、医療機関薬局間だけでなく自治体介護事業所と情報共有、マイナサポートでの閲覧に加えて申請情報の入力等が可能になるとことを追加していくことも示され、今後、自治体・医療機関・介護事業所間の連携も非常に重要となることでしょう。
④診療報酬改定DX
2024年度において、各システム間の共通言語となるマスタと電子点数表を改善して提供されます。併せて、診療報酬点数表におけるルールの明確化・簡素化を図るとともに、診療報酬の算定と患者の窓口負担金計算を行うための「共通算定モジュール」の開発を進めるとしています。
2025年度にモデル事業を実施した上で、2026年度において「共通算定モジュール」を本格的に提供することが示されているのです。診療報酬改定においては、各ベンダーがそれぞれの作業を一つにまとめ、共通のマスターコードや診療報酬計算モジュールを提供していくことが計画されています。これにより、各ベンダーがそれぞれの診療報酬改定に対応する作業負担を軽減することが期待されています。また、各医療機関でもこれらのツールを活用することで、報酬計算や請求業務の効率化が図られることになります。
ただ、当初の診療報酬改定のスケジュールはとてもタイトでした。1月に改定の項目(短冊)が決まり、2月の中医協答申で点数が決まり、3月に関係告知や疑義解釈が出され、4月から新たな診療報酬のルールに基づき医療機関は算定しなければなりません。約2カ月弱で仕組みがガラリと変わるのです。医療機関は新たな算定ルールを理解する必要が生まれ、システムベンダーはシステム改修を進める必要があったのです。
流石に、これは、現在後ろ倒しになったと、ニュースでも報道がなされました(診療報酬改定の6月施行を了承 2024年度から2か月後ろ倒し|第1038回/2023年8月15日号 HTML版:全日病ニュース)。
⑤医療DXの実施主体
「社会保険診療報酬支払基金を、審査支払機能に加え、医療DXに関するシステムの開発・運用主体の母体とし、抜本的に改組する」と今回初めて明記しました。
社会保険診療報酬支払基金は、主として被用者保険における診療報酬の「審査」 と 「支払」 を実施する 専門の審査支払機関です。保険医療機関から被保険者への診療費の請求を仲介・審査する特別民間法人(正式名称は「特別の法律により設立される民間法人」)です。医療従事者の方がイメージしやすいように言うと、レセプトを審査している法人です。
どうだったでしょうか。ボリューミーでしたが、工程表を振り返り、関連する項目を知ることで、今後、医療現場が大きく変わることが想像できたのではないでしょうか。
3.医療DXのメリットとその実現に向けた取り組み
私たちは、このUniTreatの活動を通じて、医療DXのメリットを感じてもらい、医療DXの流れに参画してもらうように働きかけることができると考えています。とても草の根的なDX推進活動ではあるものの、この情報発信が役に立つと嬉しいです。
この医療DXを国民・患者さんが享受できるようにするためには、私たち自身が医療DXに協力的な姿勢をもち、日々このように新しい情報を得ることが重要なのです。
ここで、医療DXによる、変化の例をあげたいと思います。具体的には、診療現場での問診票の作成の無駄や病歴の徴収の時間の無駄の解消、人生の最終段階における医療・ケアの情報共有などが挙げられると思います。これらが、ほぼ全て、解消される未来が来るかもしれません。
医療DXは、医療サービスの質と効率の向上を目指す重要な取り組みです。これを実現するためには、政府、医療関係者、そして国民一人一人の協力が必要です。医療の未来をより良くするために、積極的な取り組みと情報共有を進めていきましょう。
4.まとめ
「医療DXの推進に関する工程表」では、主に5項目が示された。
①マイナンバーカードと 健康保険証の一体化の加速
②全国医療情報プラットフォームの構築
③電子カルテ情報の標準化
④診療報酬改定DX
⑤医療DXの実施主体
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