居 酒 屋 #2「居酒屋」
考えてみたら変な言葉だ
居+酒+屋
居れる酒屋なのか
居る前提で売る酒屋なのか
「居」っていうのもなかなかな見てくれである
庇の下で椅子に座って手を広げてご高説を垂れているおっさんがいる。
「やあやあみなさん、今日は存分に飲んでくれたまえ!無礼講だ☆」
「部長!おごりっすか!」
「んなわけないだろこの安月給でバーカ!」
「安くて悪かったな!」
「「「しゃ、社長―!!!」」」
みたいな三文芝居的オヤクソクが瞬時に脳内を駆け巡る
学生からおっさんまでがわいわい騒ぐためだけにあるウマくもない飯をうまそうに見せることもなく出してくる店
飾る言葉だけは贅沢に、空気を読むのがお得意なお嬢さんやおにーさんたちがたむろするウマそうな空気をつくることだけご立派な店
うらぶれた町の中にひっそりとたたずむ「知る人ぞ知る」とか巧妙な優越感で足りないものを補ってる店
一人のさみしさを補うだけのものをそっと提供する、カウンター
求めるものを求めるだけ楽しむことができるシステムに歓喜する者たち
ウマいものを出すことに砕いた心が喧騒のなかで、度し難い酒量に粉砕されていくのも
求める利益を思うが儘に得たことでごみを出してごみを捨てることとよしとするのも
みんな、みんなその居+場所のストーリー
ああ、そうだよ
嘘を罪にしないためにはね、いつだってアルコールが必要なんだよ
こうやって、ほら、浴びるのならば
罪なんてみんな、消えちまうのさ
消毒消毒
ほら、シュッシュッてやって、ごしごしすれば、ばい菌なんていなくなるでしょ
みんな、こうやって、おんなじふうに、ね
ヨノナカは、みんな、きまってるんだよ
だから、こうやって、ね、みんなで、ちょっとずつ
ほら、必要でしょう?あなたにもアルコール
ここにいるんだから。
ここに、いるんでしょう?
駆け出したあなたは、今の世の中では暮らしにくいアルコール・アレルギー・マンだった
「入店するのに消毒をしないなんて非常識な!!」
自称警察に迫害されて、彼の罪は消せることなく、積み重なるのか
(任せて!そんな時には次亜塩素酸水だよ!水素水で作ると効果が高いよ!)
無害な水を小脇に抱え彼は無害を主張する
「県内在住です!居場所はここです!!運転するのでノンアルコールでお願いします!」
叫ばない、伝えるだけだと、大きな声で
無害、無害はほんとうなのか
ヨノナカハね、みんな、きまってるんだよ
居られない君は、酒屋へGOだ
一人手酌で、飲んでるんだろう?
ここは、居酒屋。いられる人たちのための、ヨノナカ
あなたはうそつき、こう告げる
「家でなら、多少は」
にっこり、笑顔で心を隠して
居られないなら、ご破算ご破算
消毒できない、あなたに祝杯
かんらかんらと
夜が更ける