出張の受難
日々仕事と家事に追われる労働者が家族から離れ、ひとり静かに過ごせる日、それは出張。
子供同士の叫び声、漏れ聞こえてくるYouTubeの音声、絶え間無い妻からのお小言から逃れられる唯一の日、それは出張。
見慣れた風景とおさらばし、新鮮な気持ちで写真仕事と向き合える日、それは出張。
カメラを抱えひとり立ち止まって構図を考えてても誰にも怒られない時間、それが出張。
出張になりました。しかも2泊3日。最高。
最高にちょうどいい。
いえ、わかっております。奥様の負担が増えること。
でも、2泊3日。ちょうどいい。
まだ帰ってからリカバリー出来る日数。
ワクワクして準備しますよね、そりゃ。
最初はGFX持ってこうかなとか考えたの。
で、レンズは1本純正であとはオールドレンズかなー、スクリューマウント縛りにして、バルナックもポケット入れて…とか。
重い…無理よ、GFX。誰がこんなん買うたん。
疲れたおじさんはこんなん持ってウロウロ出来ない。
腰も首も死んでしまう。
すぐホテルにチェックインしてしまう。
もうTGや。TG-6しかない。
画素数は捨てよ。スナップシューターや。
虫も撮れるし。
で後はバルナック。
いや、露出大丈夫かいな…大体知らないとこで撮影するとやらかすもんな。
フィルム装填もな…カッター持ってくの嫌やし…
せや！ここは、M5や。ライカの最高傑作M5や！
誰が負け組や！
縦吊舐めんなよ！
左肩に掛けて、スッと撮ったらんかい！
人差し指でシャッタースピードかえたらんかい！
しぶいやないかい！
ということでカメラ決定。
フィルムはとりあえず1本装填。
予備でもう1本。ワクワクドキドキ。
当日、全国大雪警報。
飛行機飛ぶが現地交通不透明。
急遽レンタカーキャンセル。
都会人雪に弱い。怖い。雪道怖い。
空港から雪降りしきる中高速バス。
わけわからん道端で降ろされる。真っ暗。
どこここ？
しらん。
コンビニもない。
雪の中八甲田山死の行軍。
震える体でホテル到着。
ホテル禁煙。
ふざけんな誰や予約した奴。
素泊まりプラン、ご飯無し。
また死の行軍。
やっとのことで見つける焼肉。
会社の経費一食2,500円。
知るかもう外には出たくない。
カルビ、センマイ、ミノ、ハツ、ライス。
誰やレバ刺しやめさせたやつ！
えーい、やけくそカルビクッパや。
外に出るとかじかむ手。
震える体。からっぽの財布。
すぐに頭に降り積もる雪。
ポケットのTGを取り出すこともできず。
肩から下げたM5は冷た過ぎて触りたくもない。
いやや、ウチもうホテル帰る。
1日目終了。
2日目、朝から仕事の準備。
9時から仕事、昼まで仕事。
ほいで移動。
「折角なので一緒にお昼を。」
いや、もういい迷惑。
断れずにご飯。かき込むご飯。
降りしきる雪、立ちすくむ僕。
「良かったら駅までお送りしましょうか？」
救いの神やん、ありがとう。
駅でお別れ、さようなら。
電車乗るぞと時間を見たら次の電車は２時間後。
駅前にあるのはなんと百均だけ。
立ちすくむおじさん。
ふと見上げると町立図書館。
思わず駆け込むおじさん。
かじかむ手で何故か手に取るはだしのゲン。
涙溢れて前が見えない。
泣き腫らした目で乗る電車。
暖か車内でついうとうと。
いや、写真撮らんと！！
ってシャッター切ったけど…
次の目的地到着。
ゲキ寒。
マジでゲキ寒。
ホテルなかなかしぶい。
いや、しぶすぎるな。
ロビーで寝とるおっさんが3人くらいおるぞ…
なんやここ、木賃宿か…
「お客様、今日ツインの部屋のご予約ですけどベッドひとつしか使わないで下さいね。おひとりなので。」
は…？そんなことある？
ツインの金払ってんだろ…
「はい！わかりました！」
部屋入って速攻２つのベッドでゴロゴロしてやりました！
なめんじゃねえぞ。
こちとら大人じゃい。
しごうしちゃるぞ！
喫煙オッケーだったのが救いだね。
ごめん、続き書くの飽きちゃった…
もう部屋から出たくないし、ホテルの下にある食堂でご飯食べちゃったの。で部屋から一歩も出ませんでした。
寒いもん。
次の日も仕事だったんだけどね…
わけわかんないバス乗ってとんでもない時間かけて空港に行くし、飛行機はバンバン遅れるし…
とりあえずさ、写真撮る余裕なんてなかったの。
撮ったやつもマジでなんの写真？ってやつばっか。
とりあえずTGの写真載せときますけどね…
やっぱさ、「カメラは、撮る人を写してるんだ」ってことですよ。
何撮ってんだかわかりませんもん、自分でも。
もちろんね、フィルムも現像してませんよ。
撮りきれて無いんだから！！
いや、ごめんなさい。
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