ばば様の一人語り(月まで3キロ)
「月まで3キロ」
伊与原新
タクシーの運転手と乗客の話である。
訳ありで乗った男に運転手さんが話しかける。
一緒に行きましょう。
ついたところが月まで3キロの場所。
運転手には息子との思い出があり。
男には父親との葛藤の生活があった。今は施設に入れている。
死のうとしている50歳の男
15歳の息子に死なれた初老の男性
岐阜県の月という名の場所
その道路標識・月まで3キロ
実際には月までは38万キロメートルらしい。
月は地球から生まれ、今では段々に遠ざかっている。
しかもいつも同じ面を向けていて裏の顔は見せない。
ついに分かり合えなかったまま途切れた親と子の関係
それでも毎月満月の日には月まで3キロの場所に来て
息子を理解しようとする父親。
認知症の父にもう1度会いに行こうと心を決める男性
少しづつ心が変わってくる。
月は色々なものに喩えられる人間に最も近い星
近くてもわからない人間関係。
なんだかしんみりとしてきてじんわりとしてきて
眼鏡をとってハンカチを使うことになる。
(何しろ私は泣き虫である)
月と親子関係を書きながら科学的知識もキッチリと
あるという科学者タイプの作家らしい作品。
おかげ様で少し賢くなれました。
地図のゼンリン社には
月まで3キロのアクリルキーホルダーがあります。