ピアニスト
私にはその音を聞きたいと思うピアニストがいる
牛田智大である。
演奏会に行き座ってじっとお出ましを待つ。
そうして聞こえたその第1音を聞くたびに
ああこれだ、この音を聞きに来たのだと思う。
配信やCD で聴いた音とは違うのだが
紛れもなく彼の音である。
と言うか、これが本物だわ。
彼の楽譜に対する解釈も好きだが
まず第一はその音である。
PPをコロコロと弾く時、
人によっては鍵盤を叩くカタカタと言う音が聞こえる。
彼の場合ただただコロコロコロコロコロロロロと
蓮の葉を伝う水玉の音か?水を走る漣の音か?
とにかくギクシャクしたところがないのだ。
ヴァイオリンと違って
ピアノは音が消えるから音が途切れる・・
それをいかに一つの音として聴かせるか?
勉強してますよ・・してる。
音の連なりが一つに聞こえるヴァイオリンみたいに。
そうして大事にしている音と音の間の静寂。
彼は日本中を演奏して回る、全部は行けない。
東京近郊でない場所で行ったのが京都・岡山・青森。
これらは娘たちが何かの祝いとかで
カンパしてくれたので一泊旅行として行った。
80歳近くになったら遠くに行くのも気が進まぬ。
元々出不精だから妹に誘われなければ
決して行かないであろう。
もう少し若い時に出会えたなら良かったのだが
こればかりは仕方がない。運命である。
演奏をしない人間は演奏会に楽譜を聴きに行かない。
ピアニストが楽譜の中から取り出したものを
聞かせてくれるその音楽を聞くだけである。
彼の場合はその妙なる音が曲の魅力を倍増させる。
今まであまり聴いたことのない曲も
その良さが分かってくる。
決してアイドル扱いはしないが
なんといっても自分にとっては孫世代
ついつい姿形にあれこれ言いたくなる。
登場の姿がまだまだひょこひょこと
中学生に見える時もあったが
座れば急にピアストになる、
このギャップも魅力のひとつか。
最近ではピアニストの風格で登場だ。
ブラックタイ姿が長かったが
最近は全身ブラックである。
随分と大人びて見える
髪の毛の事もいじるが・・もう少し前髪を切った方が
ええんでない・と老婆心。
それは目のためにも良くなかろうにと
ついつい思ってしまう。
ベートーベンさん、カラヤンさんとは言わない。
きちんとした音楽家には君もさんも
要らないと思っている。
彼も世界に出ていくようになって
tomoharu ushidaと呼ばれることが多くなった。
きっとこれからはtomoharuと呼ばれることが
多くなるだろう。
私もtomoharuと呼ばせて頂いている。
世界に羽ばたくのだから
みんなが呼びやすい名が良かろう。