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古典を100回読め

 小説家の町田康に若者が、
「どうしたら文章を書けるように
なりますか?」という質問を受けた。
答えは、たくさん読むこと。
お気に入りの作家でもなんでもいいけれど、
オススメなのは言葉の起源に近い昔の作家がいい。
最近の本を100冊読むよりも、古典作家の本を
100回通読したほうがいい。
そういう回答だった。

作文しているが、そういう試みはしたことがない。
名作、傑作はかなり読んでいる。
だけど、洋書の翻訳が中心だ。

一番のお気に入りの小説は、
華氏451度、レイブラッドベリの
ディストピア幻想小説だ。

内容は素晴らしい。
文句がない。
1953年というカラーテレビが
ぎりぎりあるような
時代に書かれたにもかかわらず、
情報過多で、白痴化していく我々の
暗澹たる現在と、
そして救済を描いている。
(私の目標の一つは、
焚き火を囲む男の一人になることだ)

しかし、文芸という観点から見ればどうだろう。
原文で読むならば、100回読むべき名作でも、
所詮は翻訳だ。

日本の文豪と呼ばれる作家。
日本語を高度に使いこなした
日本語の知の結晶といえる
作家の文章と比べることはできない。
本来ならば読むことができない
外国の文学を翻訳して
読ませてくれる事に感謝している。
優劣ではなく、ただ役割が違うのだ。

手持ちのお気に入りの小説。
伊藤計画「虐殺器官」
冲方丁「マルドゥックシリーズ」
どちらも素晴らしい小説だけど、
古典の文豪ではない。
書店に行きませふ。

目立つところに三島由紀夫の
小説コーナーがあった。

「君たちはどう死ぬか」

という帯の巻かれた「葉隠入門」が目にとまった。
三島由紀夫の小説は読んだことがない。
自衛隊で演説して切腹した人、
くらいの認識しかないが、
私のような野原の輩でも、
文豪であることは認識している。

イメージ。
太宰治、なんか暗い自虐の人。
芥川龍之介、おとぎ話みたいな小説の人。
夏目漱石、ぼっちゃん読んだことがある。

三島由紀夫、やばい人、切腹したやばい思想家。

という尖った、やばい印象がある。
太宰と芥川と夏目の三人を、殴り倒して
血反吐を吐かせる戦力、それが三島だ。

しかも、そんなヤバい切腹作家が、よりにもよって
「葉隠」なんていう、武士道の書、
「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」なんて
いうヤバい古典を入門にいざなってくれるという。

古典なんて眠くて読んでられないですよ、という
不遜な私も、まったく眠くならずに読めそうな、
電車で読んでいると人格を疑われそうな本を買った。

今日お勉強して覚えた言葉。

「二つに二つの場にて、
早く死ぬはうに片付くばかりなり。
別に仔細なし。胸すわって進むなり」
(人生には生きるか死ぬかの場面がある。
そういう時は早く死ぬほうを選べ。
別にかまわない。
平然と進んでいけ)

み、三島先生、葉隠、めっちゃかっこいいのですが、入門して大丈夫なたぐいの書なんでしょうか?

別に仔細なし、胸すわって進むなり

かっこいい。
名文です。
職場では活かせそうにはありませんが、
武士道の心意気を
学ぶのは悪いことではありませぬ。

実際に切腹した三島先生以上に、
葉隠を語れる人はいないでせふ。
読みませふ。


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