琴葉桜の季節
「捕まえた! お姉ちゃん見てみて!」
葵の手の中には桜の花びらが握られていた。散っていく桜を捕まえたようだ。
「剣豪はお箸でなんとかって言うから、私も剣豪だね!」
珍しくはしゃぐ妹の姿に茜は目を細める。
「お箸じゃなくて手やん」
そんなんウチでもできるで、と茜は散る花びらのひとつに手を伸ばす。空気をかき混ぜないように静かに伸ばした手のひらの上に花びらが落ちる所を見ながらゆっくりと手のひらを閉じる。
葵の方を向くと自分と同じ顔が膨れっ面をしていた。
サッと伸ばした手を花びらがヒラヒラとかわしていく、花びらを追って手を握りしめるが虚しく空を掴む。
隣を見ると妹の表情が緩んでいる。あざけるような顔をしていると感じるのは気の所為ではないだろう。
「あれー?」
ねっとりとした声に握りしめた拳を高らかに上げ反論を考える。恥ずかしさで頭は上手く回らなかった。
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