ANGELS OF VENiCE / AWAKE iNSiDE A DREAM
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いったい何というジャンルになるのだろうか?
ANGELS OF VENiCE / AWAKE iNSiDE A DREAM
PART I: EXOTIC ①LIONHEART ②A CHANTAR MER ③NANA ④THE SINS OF SALOME / PART II: POETIC ⑤SCARBOROUGH FAIRE ⑥THREE NIGHTINGALES ⑦THE WORLD BEYOND THE WOODS ⑧CHINA MOON ⑨LIGHT AT THE EDGE OF THE WORLD ⑩AWAKE INSIDE A DREAM
Angels of Venice : Carol Tatum,harp+α ; Peggy Baldwin ,cello+α ; Suzanne Teng,flute+α · +α
Recording data unknown · Hollywood Dino Herrmann Studio〈Session〉
Epiphany Records EPI1002
今度はまた趣向を変えて、こんなCDを紹介します。ノートのレヴュー集にあったCDがすぐ取り出すことが出来たからの芸当なんですがね。
さて、ジャケット画像のキャプション(初めて文末が!ではなく?になりました)にも書きましたが、こうした音楽はいったい何というジャンルになるのでしょうか。ワタシとしてはいわゆる古楽、つまりバッハ以前の音楽が一番近いような気がしますが、フォーク&トラッド的な香りも感じられます。でもジャンルなんか関係ない、そんなことどうでも良いからとにかく好きな音楽を聴きたいという向きにこそ合っているかもしれません。
実はワタシが当CDを購入したのは全くの偶然でした。というよりワタシが積極的に買おうとした訳でもありません。あれは20数年前のことになりますか。その時ワタシは都内ではユーロ・ロックを扱っているレコード店が集まっている新宿西口を徘徊していました。そしてふと入ったレコード店の店員に無理矢理勧められたのです(今でもそのレコード店の名は憶えていますが特に名は秘します。あのレコード店まだあるのかな?)。しかも価格が¥3,000以上と当時の輸入CDとしては考えられない程高価だったのです。そんなCDをなぜその店員がワタシに押し付けるように勧めたのか、今となっては知る術はありません。とにかくワタシはそんなこんなで押し付けられたCDを購入したのですが、なぜかあの時の情景は今でもありありと思い出すことが出来るのです。でもワタシの中で何かピッと来るものがあったのでしょう。でなければいくら押し売り同然のCDを購入したりしないはずです。そしてその判断は間違っていませんでした。
そのCDを聴いてワタシがどう思ったかは、以下のレヴューでどうぞ。
「当CDの主人公である“Angels of Venice”については何も知らない。英文によるとヨーロッパ中世期の楽器、つまりウード、バーディガーディ、アイリッシュブズーキ、リコーダー、チャイニーズバンブーフルート、ハンマーダルシマーなどなど、マンロウ指揮 ロンドン古楽コンソートの『中世・ルネッサンスの楽器』(EMI)でもなければ聴くことの出来なさそうな楽器や、さらにワールドミュージックあたりのエスニックな楽器(ウードはこちらかも)も使われているらしい。基本は女性3人のグループだが、曲毎にゲストミュージシャンが起用されておりクレジットもされているが煩雑になるのですべて省略した。
パートI は『エキゾティック』と題された①∼④の4曲、パートII は『ポエティック』と題された⑤∼⑩の6曲の計10曲が収録され、トータルで50分である。(多分)リーダーと思われるハープ他のTatumのオリジナルナンバーが殆どだが、それらはヨーロッパ中世を彷彿とさせる音楽として再構成されている。他にもサイモンとガーファンクルによるトラッドナンバーとして有名な⑤やスペインの作曲家ファリャの曲③が採り上げられていたりする。④は『サロメの罪』とでもなるのだろうが、聴いての印象はそういった感じには聴こえない。これだけだと多彩過ぎて散漫な印象を与えかねないがそんなことはない。実際聴いてみると多様性より以上にしっかりとしたコンセプトに基づいているためか、それ程違和感なく聴き進めていくことが出来る。中でも気に入ったのが②。前半の女性ヴォーカルをメインにしたパートと後半の即興演奏に聴こえるパートの対比が目を見張らされる。ファリャの③は何かゴシックホラー調のアレンジが施されていて驚かされた。他の曲も曲そのものもそうだが、アレンジが新鮮で聴き応えある演奏になっている。
また、ジャケット写真やブックレット中には前ラファエル画家たちらしき絵画が使われており、このCDのコンセプトはそうしたところからアイディアを得たのではないかと推測される。こうした音楽はジャンル分けに苦労しそうだが、例えばドイツのポポル・ヴーはロックではない(と思っている)がロックのフィールドで認知されている。当CDもロックのフィールドから出てきた訳だが、これはむしろクラシック、特に古楽に興味ある向きにはお勧めである。ただ今入手出来るとも思えないが。まだ聴いたことはないが、ミランダ・セックス・ガーデンも似たような音楽だったのではないだろうか。そのCDも聴いてみたいのだが、今入手出来るだろうか。
実は当CD、今から四半世紀程前にたまたま立ち寄ったCD売場でそこの店員に勧められて購入した。1枚で¥3,000以上もする高価なCDだったがそれなりに聴いているので充分元は取ったと言えるだろう。
当CDは“Angels of Venice”の2ndアルバムのようだが他のCDはないのだろうか。バックインレイには“The Angels of Venice's second release ❛Awake inside A Dream❜ features exotic and medieval instruments∼etc.” と記されており、そういった楽器を使っているのがこれで分かっていただけよう。だからジャンル不明と言いたいのだが、そうかと言ってこれらの音楽をアタマから否定することもあるまい。その後の彼女たちの活動を全く聞いたことがないのはこれだけの良質な音楽を提供しているだけに非常に残念なことである。
2020年4月20日 評価:★★★★☆」
以上が当CDのレヴューですが、いかがでしたでしょうか。やはりワタシはクラシック音楽以外の評価は甘くなる傾向がありますが、これは致し方ないでしょう。
レヴューにも入手した経緯が簡単に綴られていましたが、それだけあの体験は強烈な印象としてワタシの中に残っているようです。でなければ未だに鮮明に憶えているはずがありませんから。一つ言えるのは間違いなく良い買い物をしたということですね。
レヴューの終わりの方で他のバンドを引き合いに出しましたが、もっと有名で似たような音楽を志向しているバンドを思い出しました。それはオーストラリア出身でイギリスで活動したデッド・カン・ダンスです。このバンドは初期の頃はゴシック的なサウンドを特徴としていましたが、徐々にヨーロッパ中世音楽の影響を受けたサウンドに変化していきました。このバンドのCD(4AD)もベスト盤の他、オリジナルアルバムも何枚か持っているのでいずれレヴュー出来ればと考えています。
またレヴュー最初で言及したマンロウ指揮による『中世・ルネッサンスの楽器』(EMI)はかつて東京の山野楽器がリイシューしたCDで入手しました。ですがこうしたCDはあくまでも研究用なのでレヴューの対象にはならないのが残念です。ワタシのCDレヴューは演奏に対する評価なのですから。ただこうしたCDもありますよということで紹介しても良いのかもしれませんね。そうしたCDも多く持っていますから。
お目汚し失礼しました。