フルトヴェングラー戦時中のベートーヴェン録音 その1:交響曲第3番《英雄》・第4番・第5番・第6番《田園》・第7番、他


フルトヴェングラーが第2次世界大戦中に残した
ベートーヴェンの録音を集成したセットがこれだ!

Beethoven:①Symphony No.3 in E flat major op.55 “Eroica” ②Overture Coriolan op.62 ③Cavatina from String Quartet No.13 op.130 ④Symphony No.5 in C minor op.67  ⑤Symphony No.6 in F major op.68 “Pastorale” ⑥Symphony No.4 in B flat major op. 60 ⑦Symphony No.7 in A major op.92  
①Wiener Philharmoniker ②∼⑦Berliner Philharmoniker / ①∼⑦Wilhelm Furtwangler
①1944.12.19/20 Wien ②④⑥1943.6.27/30⑤1944.3.20/22⑦1943.10.31/11.3 Berlin〈Live〉③1940.10.15 Berlin〈Session〉
ANDROMEDA ANDRCD5061 “LUDWIG VAN BEETHOVEN Recordings during War Time conducted by Wilhelm Furtwangler (1940-1944)”  6 CD SET

今回山形のまぁちゃんが紹介するのは20世紀を代表するドイツの大指揮者の一人であるウィルヘルム・フルトヴェングラーが第二次世界大戦中に演奏したベートーヴェンの曲の録音を収録したCD6枚組セットです。ここにはベートーヴェンの①交響曲第3番 変ホ長調 作品55《英雄》、④交響曲第5番 ハ短調 作品67、⑤交響曲第6番 へ長調 作品68《田園》、⑥交響曲第4番 変ロ長調 作品60、⑦交響曲第7番 イ長調 作品92、交響曲第9番《合唱》という6曲の交響曲の他にピアノ協奏曲第4番、ヴァイオリン協奏曲、②序曲《コリオラン》作品62、③弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 作品〜第5楽章『カヴァティーナ』〔弦楽合奏版〕、《レオノーレ》序曲第3番 72aという曲も収録されているセットです。その上ボーナストラックとしてやはり戦時中のシューマン、ブラームス、ブルックナーの曲の一部とフルトヴェングラーのドキュメントが2分半強程収録されていますが、今回のレヴューではこのボーナストラック分は割愛させていただき、ベートーヴェンの11曲のみを対象にすることにします。
フルトヴェングラーが戦時中にナチスドイツとどのような折り合いを付けて戦争末期の1945年1月までドイツに留まったのかは(オーストリアは1938年にナチスドイツに併合されています)様々な書籍に書かれているのでここでは言及しませんが、そうした時期に演奏された録音を聴くと当時の切羽詰まった状況がまざまざと実感出来ます。それらモノーラルの古い録音にも関わらずそうした状況を教えてくれるというのは書籍だけでは決して得ることが出来ません。そしてなぜ今なおフルトヴェングラーが没後70年以上経つ現在でも偉大な指揮者と言われるのかをこの古い録音を聴いて実感していただきたいのです。
さてこのレヴューを記事にしようと改めてノートを見たところ、ワタシは1枚ずつ収録順に書いていました。なぜ録音順ではないのかは不明ですが書かれた順にレヴューしていきたいと思います。ただ一度に全11曲というのも煩雑になるので今回は前半3枚に収録された7曲を対象とします。それではその7曲のレヴューをどうぞ。

「フルトヴェングラーが第二次世界大戦中に演奏したベートーヴェンの作品を集めた6枚組セットより、まず1枚目に収録された①だが、これは言わずと知れた『ウラニアのエロイカ』。さすがにライヴでのフルトヴェングラーの凄まじさがまざまざと伝わってくる演奏だ。データではナチスドイツの敗北が決定的になっていた時期に当たるが、そのような時にこれだけ鬼気迫る劇的なベートーヴェンを聴かせてくれることが出来たのはフルトヴェングラーだけであろう。反ファシズム、反ナチスを唱えていても結局はアメリカに亡命したトスカニーニとの違いがそこにあると見た。音は当時のものとしてはとても良くモノーラルであることを除けば鑑賞に不都合は感じさせなかった。ナチスの技術力の高さを図らずも証明したかのようである。
②は手兵のベルリン・フィルならではの重厚でありながら自在にオーケストラを操ってベートーヴェンの真実の音楽を表現している。
③はTelefunkenへセッション録音された3曲のうちの1曲(他の2曲はグルック:歌劇《アスチェルテ》より序曲と当セットのボーナストラックとして収録されているブルックナー:交響曲第7番より第2楽章)。これは若干音がもやつき、セッション収録のためか演奏に閃きに乏しいように感じた。
④は1943年のライヴ。音が良く、特に弦の音が生々しい。フルトヴェングラーの指揮も劇的な迫力を持っており、壮絶とも言えるベートーヴェンになっている。その点では1947年のベルリン・フィル復帰コンサートにおける同曲の演奏(DG)と甲乙付けがたい。第3楽章からフィナーレに移行する時に一瞬音が途切れるのが惜しい。
⑤は④の8ヶ月後のやはりベルリンでのライヴで、この曲の持っている田園的な和やかさからは極めて遠く、①や④のように劇的でかつ壮絶な演奏となっており、第4楽章などこの曲の許容範囲を超えているところもあるが、それでも同じく戦時中に演奏されたブルックナーの交響曲の残された録音ほどの違和感はない。音は①や④と違って歪みや強音部の音割れがあり、少々聴き辛い。またオーディエンスノイズも少々気になった。
⑥は1943年の録音でデータでは②④と同時期のライヴとなっているが、この曲に関しては放送録音と定期公演のライヴがあり、比較したわけではないので日付けだけではどちらかは不明。DGが正規にリリースしたCDはその辺がはっきり区別した上で収録されているはずだが当セットは輸入廉価盤のため致し方ないだろう。ただオーディエンスノイズが聴き取れたので、定期のライヴである可能性が高い。⑦も1943年のライヴでどちらもフルトヴェングラーならではの壮絶なベートーヴェン演奏となっている。聴き手を引き込むファナティックささえ備えた自由自在に振る舞ったベートーヴェンと言えよう。音は先に聴いた①④程ではないにしても⑤よりは聴きやすかった。      2013年8月4日(①∼⑤)&5日(⑥⑦) 評価:★★★★(①②)、★★★☆(④⑥⑦)、   ★★☆(③)、★★★(⑤)」

以上が『フルトヴェングラー戦時中のベートーヴェン録音 その1』の7曲のレヴューでしたが、いかがでしたでしょうか。すぐ上のレヴュー日と評価が若干見辛くなっていますがどうやっても上手くいきませんでした。これはスマートフォンでの入力のためなも知れませんのでご寛恕いただければ幸いです。

ワタシがフルトヴェングラーのCDのレヴューをするのは去る2月1日に投稿した1949年3月15日にライヴ録音されたブルックナーの交響曲第8番(Archipel)以来になりますが、実はフルトヴェングラーのCDに関してはそこそこ集めましたので可能な限り録音順にレヴューすることを目指しました。大方終了していますので順次記事にしていきたいと考えています(あくまでもワタシが所有している音盤に限りますが)。
そこでなぜこの戦時中の録音を最初に選んだかと言うと、ワタシが所有しているフルトヴェングラーのCDの中にはSP録音を復刻したのとか戦間期のライヴ録音などもありますが、組み合わせの関係でどこで記事にしたら良いのか悩ましいのも多くあります。ただワタシが所有しているCDはごくわずかの国内盤を除けばその殆どが輸入廉価盤のため解説など期待出来ません。当セットもトラックリストとデータが記載されたブックレットがあるだけですが、これは輸入廉価盤でCDを集めている以上致し方ないことだと思っています。

ここまで読んで下さった皆さんには心からお礼申し上げます。
お目汚しして失礼しました。








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