ベスト指揮 コリドン・シンガーズによるブルックナーの宗教声楽曲集
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Bruckner:①Te Deum ②Mass No.1 in D mimor ③Aequalis No.1 ④Libera me ⑤Aequalis No.2 ⑥Mass No.2 ⑦Mass No.3 ⑧Psalm 150
①②Joan Rodgers,Soprano•Catherine Wyn-Rogers,Contralto•Keith Lewis,Tenor•Alastair Miles,Bass ①James O'donnell,organ ③∼⑤Colin Sheen,Roger Brenner,Philip Brown,trombones ④Olga Hegedus,cello•Thomas Martin,doublebass•John Scott,organ ⑥English Chamber Orchestra Wind Ensemble ⑦⑧Juliet Booth,Soprano ⑦Jean Rigby,Mezzosoprano•John Mark Ainsley,Tenor•Gwynne Howell,Bass ①②⑦⑧Corydon Orchestra ①②④⑥∼⑧Corydon Singers /①∼⑧Matthew Best
Recording Data unknown〈Session〉
hyperion CDS44071/3 “BRUCKNER The Masses in D mimor•E mimor•F mimor •Te Deum CORYDON SINGERS•CORYDON ORCHESTRA MATTHEW BEST ” 3CDs
今度紹介するのはイギリスの合唱指揮者マシュー・ベストが彼の手兵であるコリドン・シンガーズとオーケストラを振ったブルックナーの宗教声楽曲集です。本当は別のCDを予定していましたが、このコンビによるブルックナーのモテット集を紹介している方がいらしたので、コメントを書かせてもらいがてらこのCDを紹介することにしました。
ところで、ブルックナーと言えばやっぱり交響曲ですよね。あの巨峰を仰ぎ見るようなブルックナーの交響曲の魅力に取り憑かれたら一生手放せません。でもブルックナーにはそうした交響曲の創作の始めに位置する、また交響曲創作の絶頂期に作曲された交響曲に勝るとも劣らない魅力的な宗教声楽曲があるんです。当CDは3枚組セットですが、その中では交響曲第7番と同時期に作曲され、ブルックナーの存命中に30回も演奏されるほどの成功作となった①テ・デウムが一番有名でしょう。カラヤン(DG)やハイティンク(Philips)、バレンボイム(EMI/DG)が(奇しくも)2度ずつ録音しており、カラヤンには映像も残されています(そのうちハイティンクのみ未所有)。他にもメータ(Decca)やレーグナー(Berlin)も録音しています。このうち、バレンボイムとレーグナーは⑥ミサ曲第2番と⑦第3番も、メータも⑥を録音しています。チェリビダッケも①と⑦を演奏し、録音も残っていましたね(EMI)。さらにバレンボイムは⑧詩篇第150篇も録音している(DG)し、交響曲全集も3回も録音する程なので、よほどブルックナーに傾倒しているのでしょう。
ですが、当セットの一番の目玉は②ミサ曲第1番、⑥⑦という3曲のミサ曲を一度に聴くことが出来ることにあります。これらはブルックナーの交響曲創作の始めの頃に作曲されたのですが、CDは長らくブルックナーの権威と言われ、ドイツ・ブルックナー協会の総裁を務めていたヨッフムの宗教声楽曲集(DG)でしか聴くことが出来ませんでした。勿論、ヨッフムの重厚なドイツ的な響きが作り出すブルックナーの合唱曲は交響曲を聴くのと同様の充実感があります。でもこうした音楽ではもっと透明な響きの演奏も聴きたくなるのです。そうした時に出会ったのが当セットでした。以下レヴューします。
「ブルックナー生誕200年の記念の日となったこの日に聴いたのはミサ曲集となった。ベスト指揮 コリドン・シンガーズ&管弦楽団+αによる3枚組セットで、ブルックナーの3曲のミサ曲の他に晩年の傑作2曲、それに初期の③⑤2曲のエクアーレと④リベラ・メの計8曲が収録されている。イギリスの合唱指揮者であるベストと彼の手兵であるコリドン・シンガーズの透明でいながら精緻な合唱は、ヨッフムに代表されるドイツ的重厚さとは無縁だが、こうした演奏で聴くブルックナーの宗教声楽曲も決して悪くない。こうした解釈だとブルックナー特有のしつこさが和らげられている分ミサ曲の演奏としては取っ付き易いようだ。ブルックナーの曲と言えば交響曲に偏っている嫌いがあるが、こうした宗教声楽曲の大作も交響曲との関連という意味でも重要だと思われるが、こうした演奏から入るのも手だろう。ブルックナーを聴くひとときを充分味わらせてくれた3枚組セットだった。 2024年9月4日 評価:★★★★」
以上が当CDセットのレヴューになります。日付けを見てもらえばお分かりの通り、ブルックナー生誕200年の記念の日は交響曲ではなくこうした宗教声楽曲を聴いていたのです。
そしてジャケット画像のキャプション「ブルックナーは交響曲だけじゃない!」というのは、その昔LP時代の時にリリースされた1枚のレコードの帯に付けられたキャッチコビーだったのです。そのレコードとは前文でもチラッと触れたメータ指揮 ウィーン・フィル他によるブルックナーのテ・デウムとミサ曲第2番が収録されたLondon盤でした。ワタシがそのレコードを持っているわけではありませんが(同一音源は輸入盤CDで所有しています)、今でも鮮明に記憶しているのはクラシック音楽を聴き始めた頃の多感な時期に目にしたからでしょう。
そうしたコビーをキャプションに使ったということは、ワタシとしてはブルックナーは交響曲だけではなく宗教声楽曲も聴いて欲しいのです。ミサ曲なんていうと難しいと思われる方もいらっしゃるでしょうが、聴こえてくるのはいつものブルックナーの響きに包まれた合唱曲です。アタマを空っぽにして聴けは何も難しくなんかないんです。無伴奏のモテット集なんかも絶品ですからぜひ挑戦してみて下さい。ブルックナーの世界が広がること請け合いです。
最後にジャケットの下に書いたキャプションの下の欧文クレジット、あれは見づらいですよね。自分のノートに手書きで書くのとこのnoteにスマートフォンで打ち込むのはかなり勝手が違い、手書きならすぐ書けるのにと何度も思いました。その結果、手書きより見づらいのでは話になりません。当レヴューは取り敢えずそのままにしておきますが、いずれ凡例ともども見直す必要がありそうですね。
お目汚し失礼しました。