違うけれど、同じ空の下で
静かな春の午後、
僕はコンピューター室の窓辺に座っている。
桜の花びらが風に乗って、
ガラス越しに揺れる姿を眺めながら、
キーボードを叩く手を止めた。
君の声が、遠くから聞こえる。
運動場で、笑い声と共に響く掛け声。
白いラインを踏む軽やかな靴音、
短い髪が風に踊り、汗に濡れて光る。
どうしてだろう。
君と僕はこんなにも違う。
僕は言葉を並べることでしか、
自分を表現できないのに、
君はただ走るだけで、
誰もが振り向く存在になる。
「速いね」
と呟いてみる。
聞こえるはずもないけれど、
君の全力が、
僕の静けさを突き破っていく。
僕はなぜだか、
君の自由に憧れてしまう。
けれど、君は気づいているのだろうか。
運動場の端から、
僕が君を見つめていることを。
「違うのが当たり前だろう?」
君が言う声が、心の中で響く。
違うからこそ、
同じ空の下で春を感じられるのだと。
その瞬間、桜の花びらが窓に貼りつき、
世界が一瞬止まったように思えた。
違う君と僕がいる、
この美しい季節の中で。