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正直な時計

タイトル:正直な時計

(会社)

男「おいちょっと待ってくれよ!違うんだって!今日残業で!あっ…」
同僚「どうしたんすか先輩?」
男「え?…ああ、いや、なんでもないんだ」

今日は婚約している彼女の誕生日。
夕方の6時に会おうと
前々から約束していたのだが、
俺は残業のほうを優先し、
彼女との約束をおろそかにした。

でもそれだけじゃない。
俺は少し前に浮気をしてしまい、
彼女をひどく悲しませた事があったんだ。
だから今日の待ち合わせは
大事なものだった。

同僚「はは、イイですよこんな時ぐらい♪僕が代わりますから、早く行ったげて下さい」

男「す、すまん!恩に着る!」

俺はそれから速攻で会社を跳び出し、
そこから車で20分ほど掛かるカフェへ。
でもタクシーを先客に取られ、
乗ることができず、仕方なく走った。

男「ハァハァ!なんで今日に限って!」

(回想)

女「どうせ今日も誰かと一緒に…」
彼女には散々気苦労を掛けてきた。
それが積もり募って、
今日すっぽかせば彼女はこの世を自ら…

でも…

男「うわあ!!」

彼女の為に買った婚約指輪を
道端に落としてしまい
それを急いで拾おうと走ったらそこは車道。

パァン!!
激しく俺は車に轢かれた。
男「あ…あと1度…あと1度だけ…」

そう願ったら…

(会社)

男「…あれ?俺なんでこんな所に…会社…?」

確かにさっき車に轢かれた筈なのに、
俺は会社で残業している。

そして電話が入り、さっきと同じ状況。

同僚「はは、イイですよこんな時ぐらい。早く行ったげて下さい」

男「す、すまん!」

俺は急いで会社を跳び出し、
タクシー乗り場へ。
乗り場から少し場所を外れて、
タクシーが入ってくる道に近づき、
何とか捕まえることができた。
そして乗り込み、待ち合わせのカフェへ。

男「よかったぁ…これで…」
しかしそのタクシーがなんと…
運転手「うわあ!!」
信号を無視して
突っ込んで来たトラックと正面衝突。

男「な…なんでこんな事に…あ…あと1度…あと1度だけ…」

すると、俺はタクシー乗り場に。

男「あれ?またこんな所に…。あ、タクシー…」
俺はすぐさま手を挙げ、タクシーに乗り込む。

男「今度は、今度は絶対、事故らないでくれ…」

実は彼女も今夜、仕事をして居た。
彼女のほうも残業を
押し付けられそうになったらしいけど、
それをとりあえずきっぱり断ったそうで、
それからカフェに向かって居たらしい。

運転手「着きましたよー」
男「あ、ありがとう!これ!」
運転手「どうも〜」

金を払い、すぐカフェに飛び込んだ。
でも…

男「…え?…なんだこれ…」
外観はちゃんと開いていたのに、
中に入ると人っ子1人居ない。
男「………」
客も居なければ、店員も居ない。

今日やってるはずだろ…?
この時間…時計を見ると壊れてた。
20時半。
そこで秒針は止まってる。

よくわからないまま、
しばらくぼうっとした。

店内は薄明かりがついているだけ。
俺は少しフロアを歩き、奥の席へ。
するとそこにトイレから
出て来たような人が居た。
その彼を見て、心底驚く。

男「あ、あんた……お、お前は…」

俺。

俺「…自分の為だったんだろ?自分がそうしたいから何が何でもここへ来ようとして居た。だから俺が出て来た。90年代張りのヒーロー気取っちゃってさ♪素直になれよ、自分に」

俺「…他の女の所で、道草食わなきゃよかったのに…」

(同じカフェで)

女「な、なんで…」

私「自分の為だったんでしょ?ヒロイン気取って、何が何でもあの人の為に会いたいなんて同僚に残業まで押し付けて。そのくせあなた、さっきまで別の場所に居たわよね。だから私が出て来たの。時計を見なさい」

私はさっき見た、
壊れた自分の腕時計をもう1度見る。

私「あなたの人生はそこで終わって居たの。そのあとは、あなたの正直を見せる為だけに、この時間を続けてあげた」

私「あなたに、自分が本当はどう言う人間かを知らせる為に。変な男に引っ掛かっちゃったわよねぇ、逆上までされちゃって」

女「……な、何言って…彼は!?私の彼はどこ!?」

私「まだ言ってるの?正直になりなさい。自分の心が今、あなたの目の前に居るでしょう?それにね、彼のほうも多分今頃、同じ結末を迎えて居ると思うわ」

(現実)

道端で、人だかりが出来て居る。
その真ん中に俺が居た。

マンションの下の道端に私が居た。
違う男の人と会ってから、
彼に会いに行こうとして居た私。
その私の周りにも、
どうやら人だかりが出来て居た。

動画はこちら(^^♪
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